05. 炎のゴブレット
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フレッドとジョージよりも一足早く元の十六歳の少女の姿に戻ったユリカは、医務室からの帰り道、廊下の向こうから義足を引きずりながらやって来る人物を発見した。
『ムーディ先生!こんにちは』
「ああ、スズモリか。朝の騒動は感心せんな」
そう言ってムーディはニヤッとした。
「何か用か?」
『はい、いくつか疑問に思った点がありまして…』
「よかろう、宴会までは時間がある。茶でも飲みながらどうだ?」
『ぜひ!』
ユリカは研究室までムーディの後に付いて行った。
部屋に入るとなんとも奇妙な機械が至る所に置いてあった。
どれもこれも初めて見るものばかりだ。机の上を見ると、ひびの入った大きなガラスのコマのようなものが目に入った。形からして、あれは“かくれん防止器”に違いない。
「気に入ったものでもあったか?」
辺りをきょろきょろと見回しているユリカを観察していたムーディが聞いた。
『これが“敵鏡”なんですね。そしてあれが“秘密発見器”』
ユリカは、向かい側の壁に掛かる部屋を映していない鏡のような物と隅の小さいテーブルに置かれた金色のくねくねしたテレビアンテナのような物を順番に指差して言った。
「さよう」
“敵鏡”は影のようなぼんやりとぼやけた姿が中で蠢き、“秘密発見機”は部屋に入ってからずっと小さくブーンと唸りを上げていた。
干渉波の多いホグワーツでは役目を果たせていないようだ。秘密の多いユリカは、機械が不調でなけれは即アウトだっただろう。
「で、質問というのは?」
『あ、はい!先生は以前、授業で“死の呪い”を見せてくれましたよね?それから考えていたのですが、“磔の呪文”同様に、“死の呪い”にも“苦しめたい”“殺したい”という気持ちが関わってくるのでしょうか?────それとも呪文を放つ人の“魔力”が重要なのでしょうか?』
「どちらも関連してくるだろうな。生半可な気持ちでは、完全には成功しない。かと言って、未熟な魔法使いがそれらの呪文を唱えたところで相手のバランスを崩すことすら出来ないだろう」
『なるほど。完全には…ということは、“死の呪い”を受けたとしても中途半端で生き残る可能性もあるんですか?』
「なくはないだろうな」
『その可能性というのはパーセントで表すとどのくらいでしょう?』
「なぜそのようなことに疑問を持った?」
つい、希望の光となる結論を欲するが故に、熱中して質問してしまった。ムーディの問いかけで我に返り、焦り出す。
そんな口を閉ざしたままの様子を見兼ねてムーディが先に口を開いた。
「マクゴナガル先生からスズモリは“闇祓い”を志望していると聞いたぞ」
ムーディは「向いているかもしれんな」と付け足した。
彼が本当の元“闇祓い”であるアラスター・ムーディだったとしたら、どんなに心強い言葉だろうか。なかなかボロを出さない目の前の“ムーディ先生”は、本物のムーディであると信じたくなってしまう。
『(まあ、その彼らに追われる側を志望してるんだけど…)』
突然、低い唸り声が窓の方から聞こえた。
窓際を見ると、七つの鍵穴が一列に並んだ大きなトランクが窓下にあり、そこから聞こえてくるものだと気づいた。
「ああ、この中身か。言っても信じんだろう」
『信じますよ』
さっきまでぐるぐると四方八方を向いていた“魔法の目”と普通の目とでムーディはユリカをじっと見据える。
『信じます。だからいつか教えて下さいね』