05. 炎のゴブレット
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ダームストラングとボーバトンが到着し、すっかり筋肉痛が跡形もなく消え去ったユリカは各寮を表す巨大な絹の垂れ幕が壁にかけられている大広間に入った。教職員テーブルの背後の一際大きなホグワーツの紋章が描かれた垂れ幕を横目に、ユリカはグリフィンドールのテーブルに腰掛けた。
皆が二校を出迎える中、図書室で探し物をしていたユリカは最後に大広間に来た生徒だったようだ。その後すぐに教職員が一列になって上座のテーブルに着席した。
立ったままのダンブルドアに賑やかだった大広間が水を打ったようになった。
「こんばんは。紳士淑女、そしてゴーストの皆さん。そしてまた────今夜は特に────客人のみなさん」
ダンブルドアが外国から来た学生全員に微笑んだ。
ダンブルドアの挨拶が終わると目の前の皿がいつものように満たされる。ただ、今日は普段の料理の他にも外国料理がいくつか並んでいた。
ブイヤベースを口に運びながら教職員テーブルに目をやると、飲み物を取ろうとするカルカロフに対して並んで座っているスネイプは苦虫を噛み潰したような表情をしていた。
そんな表情さえも格好良い。
同じ空間にいて、同じ空気を吸っているなんて未だに夢のように感じる。
『(ありがとう!あの時足を踏み外した私…!)』
眉間の皺の数でも数えてやろうかと思って目を凝らして見つめていると、視線に気づいたスネイプと目が合った。ユリカはすかさず視線を逸らすも、目が合ったことと顰めっ面を見られたこととで、顔が火照るのを感じた。
金の皿がデザートまでピカピカになると、ダンブルドアが再度立ち上がり、大広間に緊張感が走った。
目の前のフレッドとジョージは一言も聞き逃すまいと身を乗り出してダンブルドアを見つめている。
「時は来た。三大魔法学校対抗試合はまさに始まろうとしておる。“箱”を持って来させる前に、二言、三言説明しておこうかの────」
ダンブルドアは国際魔法協力部部長のバーテミウス・クラウチと魔法ゲーム・スポーツ部部長のルード・バグマンを紹介をした。
紹介に合わせてそれぞれ拍手が起きたが、バグマンの方が断然大きな拍手があった。
「それではフィルチさん、箱をこれへ」
フィルチが宝石をちりばめた大きな木箱を捧げ、生徒達から一体なんだろうと興奮のざわめきが起こった。
隣に座っていたデニス・クリービーはよく見ようと椅子の上に立ち上がったが、それでもあまりの小柄さに皆の頭よりちょっぴり上に出ただけだった。
「課題は三つあり、今学年を通して間をおいて行われ、代表選手はあらゆる角度から試される────試合で競うのは参加三校から各一人ずつの代表選手じゃ。選手は課題の一つひとつをどのように巧みにこなすかで採点され、三つの課題の総合点が最も高い者が、優勝杯を獲得する。代表選手を選ぶのは、公正なる選者……“炎のゴブレット”じゃ」
ダンブルドアが杖で木箱の蓋を三度軽くたたくと、蓋は軋みながらゆっくりと開いた。木箱から出て露になったゴブレットは、青白い炎を放っている。
「代表選手に名乗りを上げたい者は、羊皮紙に名前と所属学校をはっきりと書き、これから二十四時間の内にゴブレットの中に入れるがよい。明日、ハロウィーンの夜にゴブレットは各校を代表するに最もふさわしいと判断された三人の名前を返して寄越すであろう。我と思わん者は自由に近づくがよい」
フレッドとジョージは目を輝かせて目配せをした。
「年齢に満たない生徒が誘惑に駆られることのないよう」
ダンブルドアの明るいブルーの目が、フレッドとジョージの反抗的な顔をちらりと見て、悪戯っぽく光る。
「“炎のゴブレット”が玄関ホールに置かれたなら、その周囲にわしが“年齢線”を引くことにする。十七歳に満たない者は、何人もその線を越えることはできぬ────最後に、この試合で競おうとする者にはっきりと言うておこう。軽々しく名乗りを挙げぬことじゃ。途中で気が変わるということは許されぬ。心底、競技する用意があるかどうか確信を持った上で、ゴブレットに名前を入れるのじゃぞ……さて、もう寝る時間じゃ」
ダンブルドアの言葉に生徒達は皆席を立ち、玄関ホールへと続く扉へと向かった。
「“年齢線”か!」
他の生徒達と同じく扉へと進みながら、フレッドが言った。
「うーん。それなら“老け薬”でごまかせるな?一旦名前をゴブレットに入れてしまえば、もうこっちのもんさ」
「十七歳かどうかなんて、ゴブレットには分かりゃしないさ!だろ?」
『それはどうだろう。でもやってみる価値はあるよね』
「「そうこなくっちゃ!!」」
『え…?ちょっ……』
そうなれば早速取りかからねばとユリカは双子に両腕を掴まれ、捕らえられた宇宙人のような姿で連行された。