03. 組分け帽子
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「あなたの進路に関して話し合い、明日からどの科目を受講するかを決定するためにお呼びしました」
「お掛けなさい」と言われ、未だ息遣いの荒いユリカは既に用意されていた椅子に腰掛けた。
「組分け帽子は随分と悩んでおいでのようでしたね」
『はい。グリフィンドールとレイブンクローとハッフルパフの三つの寮でとても悩んでいるようでした』
テーブルに散らばっているたくさんの案内書類を整理しながら、マクゴナガルは終始頷いていた。
『先生は…組分け帽子が私をグリフィンドールに組分けしたのは正しい選択だと思いますか?………私、勇気も大胆さも持ち合わせていないように感じます』
不安な気持ちをそのまま声に出してマクゴナガルに打ち明けた。
フレッドとジョージと仲良くなれたのは嬉しかったが、あの寮のテーブルの席に着いた時、グリフィンドール生らしい自分を自身の中に見い出せず、周りの子達がとても眩しく見えて疎外感を覚えた。
組分け帽子の“大胆不敵ではない”という発言にもずっと引っかかっていた。だからグリフィンドールに組分けはされないと思っていたのだが。
「組分け困難者は五十年に一人の逸材と言われています」
『マクゴナガル先生もそうだったとお聞きしました』
「ええ、私の時もグリフィンドールとレイブンクローとで五分以上帽子は熟考していました。どちらの素質も兼ね備えていたが、グリフィンドールの重んじる点と自身の尊重する点や志しが一致していたと組分け帽子は判断したのだと私は考えています」
マクゴナガルはユリカと向き合って話し続けた。
「あなたの気が紛れるか分かりませんが、他者の方が自身を理解している事も意外とあるものですよ。それに、私は寮監としてあなたがこの二年間でどのように変化するのか、成長を見守るのが楽しみではあります」
マクゴナガルの言葉に不思議と先程までの重たい気持ちが少し吹き飛んだようにユリカは感じた。
マクゴナガルは整頓し終わった案内書類の端をトントンと揃えてから「さて」と息を吐きながら言った。
「転入したてで何なのですが、あなたはホグワーツ卒業後の進路について考えがありますか?」
『えーっと……一応、闇祓いになるのが夢…ではあります』
大嘘だがメイン科目を受けるためには、この嘘が好ましい。
「それには最優秀の成績が必要です。NEWTは少なくとも五科目パスすることが要求され、しかも“E・期待以上”より下の成績は受け入れられません。狭き門ですよ、スズモリ」
マクゴナガルは机の上の書類から小さな黒い小冊子を取り出し、闇祓いになるためには、と淡々と条件を述べていく。
「取るべき科目ですが────まず“変身術”。私の場合OWLレベルで“E・期待以上”を取った者にしか授業を受けさせないのですが、夏休みの努力に免じて今回は特別に良しとしましょう」
『ありがとうございます!』
「それから、“呪文学”は常に役に立ちます。フリットウィック先生が「杖を振ったことがないとは到底思えない」と大層誉めていらっしゃいました。さらに肝心な“闇の魔術に対する防衛術”も私の見た所、問題ないでしょう。────それと“魔法薬学”。スズモリはOWLを受けていないので何とも言えませんが、スネイプ先生はOWLで“O・優”を取った生徒以外は絶対に教えません」
『もし可能であれば、“魔法薬学”も取りたいです!』
この壁にぶつかると思っていた。
今後の知識を得るためにも、スネイプに会うためにも、魔法薬学の授業は受けたい。
どうしたら授業を受けられるか考えていると、冊子を見つめていたマクゴナガルが口を開いた。
「OWLを受けずに進級することは経験上初めてのことです。ご家庭の事情もあることですし、とりあえずダンブルドア校長に頼んでみましょう」
『…!ありがとうございます!』
マクゴナガルが神様に見えた。
暫く闇祓いについての話を主に聞いた後、面談が終わった。ユリカは礼を言い、部屋を出てグリフィンドール塔に向かった。
限られた経路の往復しかしていなかったため、少々迷いながらグリフィンドール塔にたどり着くと、ピンクの絹のドレスを着た“太った婦人”の大きな肖像画に近づく。肖像画の問いかけに「ボールダーダッシュ」と答えると肖像画がパッと開き、背後の壁の穴が現れた。
よじ登って穴を潜るとそこは映画で見たままのものだった。円形の赤を基調とした談話室は、ふかふかした肘掛椅子やテーブルが置かれ、パチパチと楽しげに弾けて燃える暖炉の火で暖かい。
女子寮へと続く螺旋階段を上り、言われた寝室の扉を開ける。深紅のカーテンが掛かった四本柱のベッドが壁際に並び、足元にはそれぞれのベッドの主のトランクが置かれていた。
必要の部屋も気に入っていたがこちらも負けず劣らず素晴らしい。
加えてルームメイトがアンジェリーナとアリシアとは、と胸が躍る。
二人とはすぐに打ち解けて仲良くなった。
ユリカはこれからのホグワーツでの生活に期待を寄せて眠りについた。
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