ルーン26
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人間界へと続くであろう通路に放り出されたローズは固く閉ざした扉を開けようと藻掻く。
『いや!開けて!』
元からオグルじゃないにしても、本当のハートは取り除き済で、今は黒だけしかないのかもしれない。それに黒だけと言っても奴は信用ならないし、何をされるか…。
ピエールが死んでしまったらどうしよう。
『自分だって無茶な真似してるじゃん…』
ローズは扉の前で経たり込んだ。
『嫌だよ…またいなくなっちゃうなんて……』
一緒に帰りたい一心であの時、「守ってくれるんでしょ」なんて言ったから。自分の命を犠牲にしてまで私を守るようなことを…。
楽しい思い出も全然作れていない。
涙は頬を伝いレンガの剥がれかけた地面にシミを作る。
ポフッポフッ
『……箒…メテオール…?』
傍でふわふわと浮いていたメテオールは穂先でローズの肩を叩く。
『…え…な、何?』
メテオールはローズが自身に気付いて顔を上げるとサッと穂を地につけて何かを描き始めた。
『(横に一本線、斜めに一本線…これは星?)』
いや、違う。
メテオールが教えてくれた、これは…。
『……分かった、やってみる』
私は“お姫様”でもなければ“人魚”でもない。
今度は私が守る番。
幸せを掴むために立ち向かうんだ。
ゴ…ゴゴゴゴ
「何の音だ?メテオール!」
黒を使う者が恐れる光で。
「メテ…」
ありったけの力を込めて、輝け。
私の心の星達よ。
「こんな子供騙しで…くそ!この俺から逃れられると思うのか」
全てを呑み込みそうなほどに大きく強く輝く光にアルシミーは目を覆う。
ローズはその隙にピエールの腕を掴み、人間界へと続く通路へ飛び降りた。
空には人間界に初めて来た時と同じレモン色の三日月。あの時と同じ雲の色。
違うのは季節外れの流星群。
二つの星が秋の夜空に流れる。
絶対に夜空に瞬く物語になんかしない。
一緒に生きて幸せになるんだ。
夜空のキャンバスを流れ落ちながら兄の手をギュッと握り返し、瞼を赤く晴らした顔でローズはふにゃっと微笑んだ。
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