ルーン25
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「僕は後ろから着いて行くから心配しないで」
『シルーズ、大丈夫だから!そんなに飛ばさないで』
シルーズはシフォン山に着陸するや否やぐったりとうつ伏せに倒れ込んだ。高速で飛んで来たお陰で早く着いたが、その本人はクタクタだ。
『ほら飛ばすから…』
「僕が居るせいだよ。そいつのせいじゃない……でも、どうしてローズは平気なんだ?」
『そういえば、確かに……ちょっ!?』
ゆったりと起き上がったかと思ったらシルーズはプルーと力なく鳴きながらローズのスカートの中に頭を突っ込んできた。
『ちょっと!シルーズ!!?な、何してるの!?スカート引っ張るのやめてー!』
スカートの外に出そうとするもビクともしない。それどころか、スカートの中に避難するように頭だけではなく全身入ってこようとしている。
「……そうか、ローズ!その服脱いで」
『え…』
ピエールの言葉にローズは固まる。
「い、いや、そう言う意味じゃなくて!その服がもしかすると、黒の力を通さないんじゃないかと思って」
『……分かったけど…絶対あっち向いてて』
「その目やめてくれないか…」
ローズはピエールに冷たい眼差しを向けると岩場の影で服を脱ぎ、岩に掛ける形でピエールに渡した。
『黒の気配が消えた…?』
「これ…着る者によってサイズも変わる。ローズはとりあえず僕の着て…」
アンブルの服は魔法の洋服だったようだ。
ピエールを探しに行くだろうと見込んでこの衣装をくれたのだろうか。
『元気になったわね』
「……シルーズ」
ピエールがアンブルから貰った衣装を着るとシルーズは駆け回るほど元気になり、ピエールにも甘え始めた。
『“お兄ちゃん”を見つけてくれてありがとね、シルーズ』
「……!」
ピエールに頭を撫でられているシルーズにそう言って背中を軽く撫でる。
“お兄ちゃん”って言葉、まだ実感が湧かない。それに何だか気恥しい。だが、悪い気はしない。
咳払いをして外方を向くピエールも同じ気持ちだと嬉しいな、とローズは思った。
『ふふっ、一番最初の友達だもんね。また遊ぼう』
頬を舐めるシルーズに別れのハグをしてそう言うと、シルーズはプルーッ!と元気に鳴いてまた空へ飛び立って行った。
『“お姉ちゃん”でも良かったかも…』
スカート姿も似合うな、と一緒にシルーズを見送っていた斜め前に立つピエールを見ながら、ふと呟いた。
その呟きにピエールはカァーっと顔を赤くして、ローズを横目で見る。
『髪型変えて良い?』
「はぁ、勝手にすれば…」
照れたり怒ったり、表情豊かなピエールが新鮮でついつい悪戯心が疼いてしまう。
今まで散々虐められた訳だしその仕返しだ、とローズは魔法を使った。
『妬けるくらい美人だわ…』
「…ったく、これもみんなローズを守るためなんだからな」
髪を耳にかけながらピエールは言った。
自分達三人の女王候補の中にいたら間違いなくピエールが女王に選ばれる、それくらい美人だ。
「行くぞ」
『…っ!』
ピエールはそう言うと、ローズの手を握って街へと足を進めた。
ウェーブしたロングヘアをなびかせながら、妹の手を引いて前を歩く姉。
周囲の目にも私達は“きょうだい”だと映るのかな。
ローズは自然と口角が緩んだ。