ルーン24
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廊下を少し進んで誰もいない空間まで来ると小さく溜息を吐く。
生粋の不運に巻き込まれやすい体質なのか、一難去ってまた一難、いつも心配事が尽きない。
でも笑顔を一目でも見たらそれらの苦労が全て許せてしまう不思議な魔法を使う“生徒”。
教官という立場であるが故、“彼女”を気にかけるのは当然の事だ。そう思っていた。
赤を取らない選択肢を選ぶなんて過去の自分が聞いたら卒倒するだろう。少し距離を置いたり、数回女性を誘ってみたりしたが、それらの言動全てが単に自分自身に言い聞かせているだけなのだと痛感した。
いつ何時でも打算的に悠然と居られるよう鉄壁の壁を築いていたはずなのに、壁が崩れ落ち始めたのはいつだろうか。
あの日貰った薔薇の花びらをモチーフにした可愛らしいチョコレート。
バレンタインの日、帰宅して山の様な贈り物の数々に目を通していると薔薇の香りが仄かに香るピンク色の紙袋に目が止まった。その中には手作りのチョコレートと沢山の恋文の山に紛れ込んだ感謝のみを綴った一通の手紙が入っていた。名前が記載されてなくてもすぐに贈り主が分かった。
チョコレートに記憶魔法を唱えると想像した通りローズクォーツの髪を持つ少女の姿が現れ、魔法を一切使わず真剣な面持ちでキッチンに立つ姿に愛おしさが込み上げた。
結局チョコレートは何だかもったいなく感じて花びら一枚口に入れて残りは保存魔法を唱えた。
どんな時も頭に思い浮かぶのは“彼女”の事ばかり。
いつ何時でも命を捧げる覚悟があるほど、この世の全てを放り捨ててでも君の笑顔を一番に守りたいと思ってしまうのは、オレの頭が相当イカれてるからか、或いは───。
教官という立場を放り出して君にこの気持ちを伝えたら、どのような返答が返ってくるのだろう。そう考える時点で自分は教官失格だ。
これは果たして本当に“約束”のためなのだろうか。
もしも別の世界線で出逢えていたら…。
「…お手上げだよ、仔猫ちゃん……」
オレを毒牙にかけて翻弄する、たった一人の魔女。