彼方の想い
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
澄み渡る青空の下、ナマエは友達とクィディッチ競技場へと向かっていた。
クィディッチをするには持って来いのコンディションだ。
「ねえナマエ、今日の試合勝てると思う?」
「もちろんよ!何たって、うちには“秘密兵器”のシーカーと頼れるキャプテン兼キーパーがいるんだもの」
惚気話に呆れる友達は放っておいて見方ゴール付近にあるお決まりの観覧席に座る。
口ではそう言ったものの、内心ナマエはあまり自信がなかった。クィディッチは荒いスポーツだ。何が起こるか分からない。
それに今日の相手はスリザリン。毎年恒例の卑怯な手を使って来るに決まっている。
ああ、彼に何かあったら…。
コートに入場する選手達を眺めながら、ふと今朝の出来事が頭を過ぎった。
朝食を取りに大広間に来ると、早々に食べ終えたオリバーがちょうど競技場に向かうところだった。彼もこちらに気づいたらしく、笑顔を向けた。
「頑張ってね!グリフィンドールの勝利、期待してるから!」
「なぁ、もし勝ったら────」
「ん?」
「あー、なんでもない。任せとけ!この試合は間違いなくいただきだ」
試合開始のホイッスルが鳴った。
十五本の箒が一斉に空へ舞い上がる。
“GO、GO、グリフィンドール!”
我に返ったナマエも皆と一緒に味方の応援に加わる。
「さて、クアッフルはたちまちグリフィンドール────」
同じ寮のリー・ジョーダンが寮監であるマクゴナガルのお咎めを受けながら実況放送をしている。
「ジョンソン選手、ブラッジャーが物凄いスピードで襲うのを躱します」
「いけっ!アンジェリーナ!」
「今だっ、ゴール!────グリフィンドール、先取点!」
グリフィンドールの大歓声が寒空いっぱいに広がる。一方でスリザリン側からは野次とため息が上がった。
「スリザリンのマーカス・フリントがクアッフルを────グリフィンドールのキーパー、ウッドが素晴らしい動きで防ぎました」
グリフィンドールの応援席はさらに活気付く。
「オリバー、格好良い!」
ナマエの声が届いたのか、オリバーはこちらに気付きウインクをした。
それから数秒もしないうちの出来事だった。
フリントの打ったブラッジャーがターゲット目掛けて飛んで行き、オリバーの頭部にクリーンヒットした。
彼はみるみる降下して行く。その瞬間、まるでスローモーションになったかのようだった。
「オリバー!!!」
ナマエは友達の言葉にも耳を貸さずにオリバーの元へと急いだ。
救護室に運ばれた彼は目を覚まさなかった。
不安な気持ちをぐっと堪えて、ナマエはそれから毎日医務室に見舞いに行った。一日に数回来るので、はじめのうちは止めていたマダム・ポンフリーも遂には諦めて何も言わなくなるほどだ。
あれから一週間、未だに彼は目覚めない。不安な気持ちは最高潮にまで達していた。後から医務室に入ってきた生徒も次々と寮に帰って行く。
今まで我慢していた分が涙となり頬を伝う。
ナマエはオリバーに被さるようにして崩れた。
「ごめんなさい。全て私のせい……あんなこと頼んだから…。試合中に余所見をさせてしまったから。ごめんなさ────」
「なに、が…おまえのせい、だって?」
突然の声に驚き、顔を上げるとそこにはついさっきまで“何をしても”反応を示さなかった彼の笑顔があった。
「オリバー!良かった……。どれほど心配したか…」
「悪かったよ」
安堵のため息を吐きつつも、彼の笑顔に誘われて微笑む。
そこにマダム・ポンフリーがやって来た。
「あら、気が付いたのね。彼女は毎日面会に来ていたんですよ。今、食事と薬を持って来ますね───あと鏡も」
そう笑いながら小さく付け足したマダム・ポンフリー言葉は、試合の結果しか頭にないオリバーの耳には届かなかった。
「試合はどうなったんだ?」
「あなたの扱いたシーカーのおかげでグリフィンドールが勝利したわ」
「ハリーのやつ、やってくれたんだね。あいつは今年のMVPだな」
ハリーが羨ましいのか、同じチームで誇らしいのか、オリバーは夢見心地に呟いた。
「ほんっと、クィディッチ馬鹿。ま、私のMVP賞はいつもあなたに取られちゃうけどね」
「…え?聞こえなかったからもう一回言っ────」
「一回しか言いませーん」
彼の顔はみるみるうちに赤くなる。ナマエは一回しか言わないと言いつつも、それが面白く耳元でもう一回囁いた。
「病み上がりの身体に障るし、マダム・ポンフリーが来たからもう行くわね」
出口に向かおうと方向を変えた時に、あることを思い出したナマエはオリバーの元へと戻る。
「そうそう、私たちのチームが勝ったから」
そう言って彼の額にキスをする。彼の顔にますます赤みがさした。
「何でもお見通しなんだから。残りは元気になってからのおあずけ!」
そう言い残して去って行く彼女の背中をオリバーは見送った。
「まったく、かわいいんだから」
彼女には随分と心配させてしまったようだ。オリバーは毎日見舞いに来てくれたことに対して愛おしさを感じると同時に不安にさせてしまったことを反省した。
しかし、後にマダム・ポンフリーが来て鏡を渡された時には、オリバーの彼女に対するイメージは天使から小悪魔へと変わった。
「医務室から出たら見てろよ。仕返ししてやる…!」
オリバーは落書きされた自分の顔を見て笑いながらそう呟いた。
fin.
----------
賢者の石でのクィディッチシーン。
落下は映画から。
移行後に誤字脱字修正。
こんな話を書ける時代が私にもあったらしい…。
1/1ページ