01. 白昼夢
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ドサッ
大きな鈍い音が暗闇の静寂を破った。
身体のあちこちが痛む。最高段から落ちたのだから無理もないだろう。
また、恐らく落ちてる最中に首元の付け根を打ったらしく、そこだけ他とは比べものにならないほどズキズキと痛んだ。
こんな全身を強打して意識があるのが奇跡だ。いやこれは意識だけある幽体離脱的な状態なのか。肉体から離れた魂のみの状態なのだろうか、混乱してきた。
真夏だというのに肌寒さまで感じ、全身に痛みはあるもののやはり自分は死んだのではないかという思考が過ぎる。
恐る恐る硬く閉ざしていた目を開けるとそこには先程までいたはずの自宅の面影はなく、夜の闇に飲み込まれんとばかりに天を照らす満月があった。
まさか自宅の階段からの転落という滑稽な死因で本当に死んだのではないかと、今度は身体に力を入れてみる。手足に上下指二十本、頭も問題なく動くことに安堵しつつ、痛む身体に鞭打って上半身を起こした。
ここは一体全体どこなのだろうか。
何かある。月の光があるとは言えど周囲は薄暗く、よく見えないが何か巨大な建物のような物が数メートル先にあるようだ。
何の建物だろうと目を凝らしていると突然、白い光が視線の先に現れた。しかもフワフワとこちらへ近づいて来ている。
ついに迎えが来たか。何せ死後の世界への行き方など生前学校で教わるはずもなくぶっつけ本番なため、これが正規ルートなのかすら危うい。三途の川を渡らなければ現世に戻れるだろうか、などと考えながらユリカは静かに瞳を閉じた。
瞼越しに感じる光は目の前まで来ると止まった。光に包まれ旅立ちか、と思っていると誰かが小さく息を呑む音が聞こえた。
「目を開けなさい」
厳格な声が言った。
その声にユリカは、再び恐る恐る目を開けた。
「どうやって…!ここで一体何をしているのですか。お見受けしたところ、ここの生徒ではないようですが」
眩しさに目がだんだん慣れてきたところで視界に入ってきたのは、鼻に着きそうなくらいまで杖をユリカに向けている例の“ルーモス”の張本人、ミネルバ・マクゴナガルだった。
ミネルバが何故ここにいるのだ。ここはもしやホグワーツなのだろうか。
マクゴナガルは応答を待ってるようだが、歓喜と困惑とで言葉が出てこない。明らかに疑われている状況だというのに完全に脳が思考停止してしまっている。
「……どのような進入経路を利用したかは分かりませんが、いいでしょう。ついて来なさい」
“インカーセラス”で手首を拘束されたユリカはこくりと頷きマクゴナガルにほぼ引きずられる形で校庭を後にした。