ルーン8
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宮殿の裏庭を二つの人影が動く。
『素敵な場所ですね』
噴水近くのベンチに腰掛けた二人の周りには薔薇の花園が広がっていた。
月明かりに照らされる薔薇はいつもと違う雰囲気を醸し出している。
「その瞳……母親にそっくりだな」
グラシエは昔を懐かしむようにローズを見つめる。そんなグラシエにローズはふと女王キャンディの言葉が頭によぎった。
『じゃあ、グラシエはお母さんと知り合いなんですか』
「昔なじみ…といったところか。ミントとおまえの教官とで良く羽目を外したものだ」
『え…ロビンと?』
「ああ、やつから話を少しばかり聞いていた」
グラシエに加えてまさかロビンも母の事を良く知っている人物だったとはと驚く。
それじゃあ……あの悲しげな瞳は私のせいなの…。
「……ローズは聞いていないのか?」
『はい…話をごまかされちゃって……』
「まだあいつ受け入れきれていないのか…………ロビンは現実から目を背けているんだ」
声が少し掠れていた。
私を気にかけてはいるがグラシエ自身も今は平然を装っているが友達を失い辛いに違いない。
「だが、問題ない。ロビンのやつ、ローズが人間界に行ってからどこか変わった気がする……まあ、見るからにあいつはアホだしな。心配するな───そうだ、これを渡そうと思ったんだ」
そう言い取り出したのはアンティークな小箱だった。
「ミントから預かっていたものだ。“時期が来るまで”と言われたが……ミントがいない現在、その時期は今のような気がする」
ローズは小箱を受け取り、箱を開けようと留め金に触れる。
するとピンク色の光が放射し箱が開いた。
「ロビンと私でも開かなかった箱が意図も簡単に…」
箱の中にはチョーカーと一通の封筒が入っていた。チョーカーには白い宝石が飾られている。
「ミントがいつも身に付けていたものだ」
横を見るとグラシエは手紙に視線を向けていた。
お母さんの手紙…。
ローズはゆっくりと封を開けた。
すると手紙上に一人の女性が現れ内容を読み始めた。
愛する娘へ
この手紙を読んでいるとき、私はこの世にいないことでしょう。
この世に未練がないといえば嘘になる。
一番の未練はローズ、あなたと一緒の時間をあまり共に出来なかったこと。
成長して行く姿を見たかった。
それと同時にあなたには多くの苦労をさせていることでしょう。
だけど常に自分らしさを忘れず、優しい心と勇気を持った強い女性になって欲しい。
あなたなら大丈夫。
いつも見守っているわ。
愛をこめて
ミント=フローラ
手紙を読み終えるとミントのホログラムは任務を終えて消えた。
「ミントのやつ全て先を見越して……」
ローズは目頭が熱くなるのを感じたが、それを必死に押さえた。
「ローズはずっと孤独の身で多くのことを堪えてきたんだろう。辛かったな……そして孤独である分、自分はもっと強くあらねばならないと思っている、そうだろ?」
俯くローズに降ってきた言葉は全てにおいて図星だった。
「……だが、こういうときくらい、いやこれからは自分の感情に素直になってもいいんじゃないか」
「そのための仲間が今はいるだろ?」とグラシエはローズに笑みを向ける。
その声は先程の牢獄の際とは別人の様にとても優しいものだった。
今まで何も知らなかったいや、知れなかった。
それまでの不安と苦悩そして現在の安堵感……。
手紙に水滴がぽたぽたと落ち、今までずっと堪えてきたものがどっと溢れてきた。
そんなローズを突然横から温かいものが包み込む。
ローズは一瞬うろたえたが優しさを感じ胸の中で静かに泣いた。