ルーン5
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魔界帰りのロビンはドアを大胆に開ける。
「夜の貴公子ロッキンロビンただいま帰還!」
ショコラに呼ばれローズとバニラもリビングに集まる。
三人になにか話があるらしい。
「ちぇーっ、あたしも魔界に帰りたかったのにー」
「ロビン先生なんの話かなー」
『きっと女王候補についてでしょうね』
「今から三人のハートをカウントする。さあまずはショコラとバニラ、この秤にペンダントを置いて──数だけじゃなく質が問題だ。ピスが10個よりピンク1個の方が高いということをふまえて───成績発表!」
ロビンは自身のギターを魔法で取り出し、なくても良いパフォーマンスをする。
「現時点ではショコラ310エクル、バニラ900エクル。トリプルスコアでバニラの圧勝!とはいえ、歴代女王候補の中では中の上といった成績だ。きみのママ、女王キャンディははじめの十日間で1200エクル取っている──そしてショコラ!おまえは歴代最下位だ」
ショコラは天井から頭に岩でも降ってきたかのような顔をしている。
「このままじゃ女王どころか魔女一級すらあやしいぞ」
「すっごいショック…人間界嫌い!空気悪いし、モテないし──」
「じゃあ魔界に帰れ。遊びに来たんじゃないんだからな」
「分かってるよ!」
ショコラは鬼の形相でロビンを睨みつける。
「じゃあ、次はバニラとローズだ」
ローズは恐る恐る秤にペンダントを置いた。
コト…
「ローズ1300エクル。これはローズの勝ちだな」
秤はラベンダー色の星型のペンダントの方に傾いていた。
『信じられない……』
「うそー!」
「すごいよ、ローズちゃん!」
モテない仲間だと思っていたショコラはうな垂れ、バニラは固まっているローズを賞賛する。
「よく頑張ったな」
ロビンは優しく微笑んだ。
「そうだバニラ、女王陛下からの差し入れだ」
ロビンはリボンの結ばれた包みをバニラに渡す。
バニラが包みを開けると、ホネホネキャンディーと手作りのローズジャム、手紙が入っていた。
「あたしにはないの!?おじいからの手紙とか」
「ショコラんちのじいさんは土星ツアーで留守だった。元気でなによりだな」
「ショコラちゃん、ローズちゃん、ママが半分ずつ二人にって」
『ほんと?ありがとう…』
二人の話を聞いて羨ましさと共に感じた切ない感情を表情に出さないように微笑んだ。
だが、その寂しげな瞳を見逃さなかった人物が一人いた。
*
自分の部屋に戻ったローズはベッドに仰向けに倒れる。
『いいな、二人は家族がいて』
家族がいたらどんな感じなのだろう。いろいろ相談したり、励ましてもらったり…。
そういうことに憧れてしまう。
それに、以前までとは真反対の生活を送っていただろうに。
コンコンコン
『開いてるわ』
扉をノックする音にローズは上半身を起こす。
その返事をした後部屋に入ってきたのはロビンだった。てっきりショコラかバニラだと思っていたローズは少し驚く。
「大丈夫か?」
ロビンはベッドの隅に腰掛ける。
『なにがですか』
ローズはかすれる声で呟いた。
「…いや」
ロビンは開きかけた口を閉じ、短く言った。
「これを」
ロビンが指を鳴らすと煙と共にキラキラとしたものが現れた。
煙が消え渡された手元を見るとラインストーンがちりばめられたアコースティックギターがあった。
『これ…』
「オレからおまえにだ。ギター、魔界に置いてきたんだろ?」
『受け取れません!悪いですよ!』
ラインストーンがライトに反射して綺麗に輝く。きっと高価なものに違いない。
「レディーは素直に受け取った方が可愛いんだぞ」
ロビンは悪戯っぽく笑った。
わざわざ私のために…。
もしかして察してくれたの。
真剣な面持ちはいつものロビンではないみたいだ。
『気を使わせてしまって…すみません。……あ、ありがとうございます』
「オレが好きでした事だ、謝るな」
『でも……』
今までになかった事でどのような言葉を返せば良いのか、どんな表情をすれば良いのか分からない。
それに私だけが貰ってしまって良いのだろうか。
俯いて礼を言うローズにロビンは微笑む。
「そうだなぁ、試しに弾いてみろよ。それでチャラになるだろ」
ローズは戸惑いながらコクリと頷いてロビンの隣に座り、慣れた手つきでギターを奏でる。
そのギターが奏でる音と優美な歌声が心地よいハーモニーを奏でる。
美しく麗らかな歌声にロビンは瞳を閉じて聞き入った。
そのハーモニーに誘われやってきたショコラとバニラは扉の隙間から寄り添う二人を見て顔を見合わせた。