ルーン4
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「今年のクリスマス会どうする?」
「去年はナナコちゃんちで一昨年はウチで」
「今年…は男子も呼びたいよね」
朝からクラスの女子達は教室の一点に集まりクリスマス会の話で盛り上がる。
『ショコラ急いで!』
「ちょ、待って!」
『おはよ…ぎりぎりセーフ』
「あー疲れたー」
『だいたいショコラが寝坊したせいでこんな目に──』
「「「ローズ、ショコラ!」」」
「『ん?』」
息を荒げて入ってきた二人に女子達の期待の視線が集まる。
「ねえねえ、もうすぐクリスマスでしょ?」
「クリスマス会、ローズとショコラんちでやらない?ダメ!?」
ローズとショコラは顔を見合わせる。
「いや…だめじゃないけど」
「わー!じゃあ決定ー!」
たった一言で家での実施が決まり、女子たちは歓声を上げた。
*
「ダメじゃないんだけど…ものすごーくちらかってるんだよね…」
『聞かれたときに私もそう思ったわ…』
「ショコラちゃーん」
家のドアを空けるとエプロンにバンダナ姿のバニラが待ち構えていた。
「また掃除当番サボったでしょ?あたしの三倍以上の速さで散らかすくせに」
「分かってるって!今片付けるから。ホント!今日やろうと思ってたんだ」
「そういって絶対に片付けないくせにー。大うそつきなんだからー」
『あの調子じゃあやらないわね。それにこれはひどい……』
ローズは部屋を見回してため息をついた。
「あーあ…魔界にいたときはよかったなー。それぞれモノが勝手に自分の場所に戻って片付いちゃう」
『そんなこと言ってる暇があったら体を動かしなさいよ』
「そういうローズちゃんもお茶なんか飲んで」
ショコラのことを批判するローズはキッチンで呑気にローズティーを飲んでいる。
『バニラもおいでよ。クッキーもあるわよ。ひと休み、ひと休み』
「あたしが掃除しなかったらこの家どうなるのかしら……」
バニラは最悪の事態を想像して身震いした。
「それに引き換え、人間界のモノはしつけがなってない」
「そりゃそうさ。魔法がかかってないんだから」
「ロビン!?」
「ロビン先生!?いつのまに…」
知らぬ間に入ってきたロビンにショコラとバニラは驚く。
「レディーの家に失礼な!」
「なにがレディーだ。魔界ではモノひとつひとつに魔法をかけてあるんだよ、“元に戻る魔法”を」
「あっ!ロビン、プレゼント持ってる」
ショコラの関心は説明の内容ではなくロビンが脇に抱えている包み紙に移った。
「なにそれ、見せて」
「ダメ。これは美しく可憐なかわい子ちゃんのローズとお部屋を片付けた良い子のバニラにあげちゃうんだもんねー」
『そんなお上手なお世辞とプレゼントに引っかかるほど私は甘くないですよ』
「うっ…まだ怒ってる……」
「ロビン……」
ロビンはスリープシャツ事件以来、素っ気無いローズの態度に壁に頭を着けてうな垂れる。
服装は気温の関係もあるのだろうが露出を控え、家に来るたびにローズに上手い言葉をかけているが効果がないようだ。
それにどこか古くさい言葉は日に日にひどくなっている。
「ロビン先生……これ最新版の…」
バニラがプレゼントの包みを開けるとハート型の本のようなものが現れた。
バニラの反応にロビンは体勢を元に戻し“イエス”と返事をする。
「見せて、見せて」
『なにそれ?』
「うそ!ローズちゃん知らないの?魔界通販ブック!これ人間界にしかないんだよ!はじめて見た!」
頭上にはてなマークのついているローズに興奮気味のバニラは目を大きくする。
「付属のカードに注文を書いて、六回ちぎって紙ふぶきにする。それから呪文を唱えて空に飛ばすと商品が届く」
「すっごーい!空飛ぶほうき15000エクルだって」
「恋人鏡もあるー!いろんなラブに効く香水!超かわいい声になるキャンディー……あれ!?ここまでしか開かない」
「なんで!?まだ五ページ目じゃん。どーなってんの!?」
二人は次のページを開こうと必死にページをめくろうとする。
「そこから先は、コレで魔法をかけないと」
「「杖?」」
ロビンの手にある杖を見て二人は顔を見合わせる。
「500エクル分のハートをためて、まずは一ページ目の“杖”を手に──」
『あ、私買えるわ。このピンクのハートで』
ローズはロビンの言葉を遮り呟いた。
「「「え!?」」」
「いつのまにピンクのハートを…」
「やったね、ローズちゃん!」
「話続いてたのに……」
ロビンは再び頭を落とし落ち込むも、気を取り直して口を開いた。
「これを自分の力で手に入れるのが修行の第一段階。大人への第一歩だ」