ルーン2
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「かえして!」
ショコラのタックルでアキラの手からハートは宙を舞う。
コンッコン…
「琥珀の玉か──夜明けの星か…………美しいね。これきみの?」
『……ショコラ?』
二人を追いかけては来たものの、会話にもう一人加わっていて状態が掴めない。
それに、階段にいる少年はどこかで見たことがあるような気がする。
そうだ、バニラの所に遊びに行った帰り、魔界の王城の“肖像の回路”で一際青白く輝く美しい絵…。
伝説の魔法使い“氷雪の貴公子”。
あの貴公子にそっくりだ。
「これ…きみのだよね」
「おまえ、顔赤いぞ」
「そう!あたしの──返して!」
「拾ってやったのに“返せ”?僕が取ったわけじゃない……きみは礼も言えないのか───あきれるよ」
帰り際、少年と様子を見ていたローズの目が合う。
だが、少年はなにも言わずに行ってしまった。
*
学校初日が終わり、帰り道三人は一日の感想を話しながら歩いていた。
『ショコラたちのせいで私まで先生に怒られて掃除当番一週間!』
「ごめんごめん!でも、ほんとハート1個でさんざんな目にあったよ」
「そう…大変だったね。あたし、チャイムなってすぐ教室入っちゃったから」
「あっ、まって乗りまーす!」
『で、バニラはどうだったの?』
エレベーターまで走りながらローズが聞いた。
「何階へいくの?」
「あっ、ありがとうございます。五十四階です───あたしは全然ダメ……ハートどころかみんなとしゃべるのが精一杯…しかもすぐ謝ったり、今みたいにお礼言ったり…」
『それがバニラの良いところじゃない』
「そうかな…ショコラちゃんみたいに強くなりたい……」
バニラは俯いて呟いた。
「自分が悪くても絶対謝んないし、めったなことでお礼言ったりしないもんね」
「ま、まあね!それがあたしのチャームポイントだもん!」
『寧ろ悪い所じゃ……でも、“自分らしさ”は大事だと思うな』
家に着くとローズは真っ先にリビングのソファーに横になった。
初登校の疲れからか、横になると大きなあくびが漏れた。
シュガシュガルーン
チョコよふれーっ
いっぱいふれー
ショコラが呪文を唱えると色々な味のチョコが降ってきた。
「うわーん。ありがとー、ショコラちゃん!“チョコパーティー”の魔法してくれるなんてー」
「ほら!また泣いてー、ダメだよお礼言っちゃ」
「うわーん。ありがとー、ショコラちゃん!もっと出してー!」
「「キャーッ」」
突然現れたロビンに二人は悲鳴をあげる。
その上ロビンはサンタクロースのような袋を手に持っていた。
「なんでロビンがここにいるの!?」
「コンサートは終わらせた。マドモアゼルたちが心配でね。トンボ返りさ───見よ!このハートの山を」
ロビンが袋を逆さにすると中からは何百何千ものハートが出てきた。
しかも、ピンクに紫、赤まで。
「真紅のハートは情熱の愛、ピンクのハートは甘い恋のときめき。そして、ヴァイオレットは罪深き欲望!エロエロセクシーな結晶だよ」
「フンだ!あたしだって取ったもん。1個だけど」
ショコラは負けじと自分の取ったハートのことを主張する。
「ロビンはあたしが取れないって決めつけてたけど、うすーい黄色っていうか、はちみつみたいな色のハート!あの後すぐ取れたんだから」
「ね!──その後、落っことして取られ…ムグ」
今日の出来事を話そうとしたバニラはショコラにカップケーキを顔面に押しやられ黙った。
「はちみつ色とはよく言ったもんだが、薄い黄色…は“ピス”って言ってなー」
「ピス!?」
「おしっこのこと!」
「お、おしっこ!?」
「そ!ラブじゃないの。ビックリすると出るらしいよ」
「あー、まあこれから!明日はもっとすごいの取るもん」
窓辺で腕を組むロビンにショコラは背を向けて冷や汗を隠す。
「ローズに“ピス”のこと聞かなかったのか?」
「え?」
ショコラが記憶をたどるとそれらしいことに心当たりがあった。
「ローズならエクルのことも知ってるだろう?」
ロビンが相づちを求めソファーを見ると、ローズは気持ちよさそうに吐息をたてて眠っていた。