ルーン20
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チュンチュン
ピチチチッ
いつにも増して賑やかな鳥の囀りで目を覚ました。
『いい天気ぃ…』
顔を洗って声のする庭側の窓を開けて伸びをする。そこにはいつの間にか実をつけたバニラの可愛がっていた木苺があった。
『あなた達はこれが目当てだったのね』
頬杖をついて人差し指に止まった小鳥に話し掛けていると、視界の横に既に居たであろう先約、ショコラとデュークが写った。
「こんなに荒れ果てた庭でも健気に実をつけて偉いケロね……ムブ、デリシャス」
「うーん、言われてみればどことなくボロッちくなってきてる…かも」
木苺の葉に乗り果実を頬張りながら言うデュークの言葉にショコラは周りを見渡す。
「水をあげたり掃除をしてたバニラが居なくなったからケロ」
そういえば最近は色々あって私も水やりを出来ていなかった。それでも、こんなに元気に育ってくれたのは、バニラが今まで大切に育ててきた愛情の賜物だろうか。
「よし!あたしもやってみよ!お水をあげて雑草を抜くくらいなら───」
「あー!やたらと葉っぱをちぎっちゃ駄目だってば」
「似合わない事すんなよ、ショコラ」
ぼーっとショコラを目で追っていると、肩に肘を置かれ、その主を確認するよりも早く隣からウーとソールの声がした。
「だって…バニラが大切にしてた植木だから」
「昔おじいの盆栽に片っ端から魔法をかけて全滅させてた癖に“バニラが”ってだけでそんな大切にしちゃって」
「なんか人間っぽくなってねぇ?」
「それは恋をしてるから…」
「ロビン!」
『……!』
何処からとも無くロビンが現れ、会話に加わる。
庭での三人の話を変わらず窓辺で頬杖をついて聞いていたローズは慌てて壁に隠れた。
「好きな男が出来ると女の子は優しくなる。小さな花の様に可憐で、そして弱くもなる」
「恋なんてしてないってば!」
片手に持った林檎を眺めながら言うロビンに、ショコラは眉間に皺を寄せ反抗する。
「なんなの朝から!この変態!何しに来たの!?」
「噂のチョコクロワッサンを食べに来た!ウー焼いてくれ」
「今日は準備してないので無理です」
どこで噂を聞いたのか、ロビンはウーの肩に手を乗せて妙に近い距離で要望する。対してウーは作る気は無い様で素っ気無く対処する。
「林檎あげるから」
「食べかけはいりません」
「でも焼いて」
「無理です」
「ウーって可愛い唇してるね…」
「あーっ!なんかすごく焼きたくなってきた!」
唇を尖らせてキスしようとするロビンに、ゾゾゾッという効果音が付きそうな程にウーは顔を青ざめ、急いでキッチンへ向かって行った。
『恋をすると優しくなるし弱くもなる、か』
いや違う、これは恋でも何でもない。
ただ、今まで出会った事ない程“変な人”だからほんの少し興味が湧いているだけ。仮に“奴”にも変な情が湧いているではないか。
しっかりしろ、ローズ。
ハートを集めて強くなって、バニラを助けて、やる事は沢山あるんだから。こんな事考えてる暇は無い。
ローズは早急に支度をして自室の窓を乗り越えて外へ出た。