ルーン18
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「かえっ、せっ!」
風呂場から出ると何やら揉めている声が聞こえてきた。
「オレのぉーだぁー」
「ネズミがこんなのダメ」
「それでも女王候補生の使い魔?」
「きっと重罪を犯してネズミにされたんだわ…!」
「ひどっ、傷ついた……それにオレはフェレットだキュー!」
何事だと声のする方に向かうとシエルと可愛らしい二人の妖精がそこにいた。
彼の好物とする“ココアシガレット”を妖精達に没収され、どう考えても届かないであろう高さをぴょんぴょん飛び跳ねているシエルを見て、ローズはため息をついた。
「ローズも“このわからず屋”に何とか言ってくれキュー!」
「「わからず屋ぁ!?」」
『うちのがごめんなさいね』
「ローズ!?」
お菓子だから安心してと付け加え、妖精達に突然家に来た要件と先程からチラチラと視界に入り気になっていた窓の外にある黒いリボンがかけられた桜の木について尋ねた。
「ワタシ達は“ヴァルプルギスの夜”実行委員会からの使者」
「4月30日は“ヴァルプルギスの夜”と言って、人間界にいる魔法使いが全世界からブロッケン山に集まります」
「今年からローズにも参加資格があるのよ」
その一夜、人間界にいる魔法使い達が全世界から集う。考えてみたら、私はショコラやバニラ、ロビン、ピエール以外で人間界に来ている魔法使いに直接会ったことが無い。他の魔法使い達に会える機会は滅多にないだろうし、情報交換の為に参加する魔法使いも多いのかな。ちょっと大人に近づいた気分。
「「騎士のエスコートで来てね〜!」」
シエルは愚図ったが、私のお小遣いで買った訳だし、妖精達にココアシガレットをそれぞれに1箱ずつ渡すと大事そうにそれを抱いて帰って行った。
*
「おはよー、ショコラ!ローズ!」
「あたし達また同じクラスだよ」
『またショコラと同じクラスか』
「一緒で悪かったなー!」
『冗談よ』
新学期、変わらぬ仲間に安堵しながらショコラに小突いて言った冗談に皆で笑う。
「まさかアキラもまた同じ!?」
「……まあな」
でも何かが違う。
何かが少しずつ変わっていく。
サイダーの泡が消えていく様に。
新しい教室に、いつもみたいにふざけないアキラ、学園には新しい一年生がいて…。人間界でも少しずつ大人に近づいていく。