ルーン13
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昨日のママとショコラちゃんの会話、さっき聞いた女の子たちの陰口……。
あたしは女王になるために頑張ってただけなのに。
その場から走り去り、風がこぼれた涙を運ぶ。
そんなバニラにニヒルな笑みを向ける男が目の前に現れた。
「ピエール……なぜここに?」
バニラは警戒心から後ずさりする。
「待って。行かない方が、君のためだ。今の君の居場所はここしかない」
「なんで……そう思うの…?」
「とても寂しそうだ」
「寂しい…なんて……」
「でも君がそう感じるのも仕方がない。王国の連中はショコラにばかり期待をかけて、君のことなんて忘れている。女王試験なんてなんで行われているのだろう」
ふとピエールは近くの樹に寄って行き、枝に触れながら口を開いた。
「この樹…“ニセアカシア”って言うんだよ。本当は“針槐”って名前があるのに、アカシアに似ているからって“ニセ”なんて迷惑な話だよね」
「…………」
「僕たちもそうだ。かってに王国から追放されてオグルと呼ばれている」
「……でも、だから女王は統一を…」
そうか…やっぱり。
やっぱりピエールはオグルだったんだ。
「そのうえ、あいつらは君が女王になったら困るから“女王候補選抜”なんて言い出した。女王がまだ存在するのにおかしいと思わないかい?」
「それは!本当に実力のある人がなるべきだから…」
「違うよ」
すかさず反論するがピエールにその言葉はかき消されてしまった。
「候補になれる“実力”を持つ者なら君のほかにもたくさんいただろ?王国の狙いは君を確実に女王の座につかせないことだ───こんな話がある」
荒地に住むオグルの母親たちは真夜中に王国へ忍び込み
自分の子と似た赤ん坊とすり替えて
すり替えた方の子はカルヴァドス河に捨ててしまう
「そういう噂があるのは知ってるわ。でも…そんなの嘘。だってママは……」
するとピエールはバニラの背後に周りそっと優しく囁きかけた。
「なんで女王は君に冷たいのか考えてごらん。周りの大人たち、学校のクラスメイト、どうしてみんなよそよそしいのか」
「取り替えられた哀れな王女様は──」
突如、複数の足音が聞こえたかと思うとメンバーズが背後から現れた。
「オグルの王女様」
「うそよ!」
「本当はみんな知ってるのよ」
メンバーズ……?
どうして!?
「君がいるべき場所は王国ではなく暗黒の闇、オグルの国さ」
「うそよ!!」
うそ…うそ、うそ、嘘!全部嘘!!!