ケース11『おでんは秋が旬』

当事者の名前は数字に置き換える。以下レポート内容。


ケース11
『おでんは秋が旬』


20:41。
老舗の居酒屋入店。15歳の寡黙な少女、11はのれんをくぐった。

カラン。

居酒屋のドアに付いた鈴が小さく鳴る。

店内は秋仕様だった。赤、橙、黄色。壁にも天井にも、作り物のもみじが飾られている。コレだけでLv58。11は少しだけ見上げた。

店員「いらっしゃいませー」

客はいない。

カウンター席も、テーブル席も空っぽだった。

11は一番奥のテーブル席へ座る。店員が無料水を置く。

メニューを攻略本のようにじっと見つめて5分後、注文開始。

11「……おでん」

店員「はい」

11「大根」

店員「はい」

11「玉子」

店員「はい」

11「こんにゃく」

店員「はい」

11は少し考える。

11「おでん完食後に……唐揚げ」

店員「はい」

再び沈黙。店員が待っている。

11「……ノンアルビール」

店員「かしこまりましたー」

注文終了。11はテーブルの木目を眺めていた。

数分後。

まずノンアルビールが到着する。ジョッキには泡で見た目だけなら完全にビールだった。11はジョッキを持ち上げる。

11「……」

乾杯する相手はいない。そのまま一口。

HPが20回復した気がした(最大HP100/現在HP46)。つまり微妙……苦い。少しだけ喉が痛い。

11「……苦い」

それだけ言った。しかし、この若干のストレスが大人が魅了する味なのかもしれない。

続いておでん。

大根。玉子。こんにゃく。出汁の匂いが湯気と一緒に立ち上る。11は大根を箸で持ち上げる。

ブシュ……。

大根は涙腺崩壊した。

11「……………」

構わす残骸をちょっとずつ、口に入れる。やや熱い。

11「……うまい」

残りの整った大根をからしを塗りたくり、食す。出汁があっさり目だがコクが強い。 

次に玉子。半分に分断させてからしを少々。黄身は少しだけ乾いている。

11「……熱い!」

玉子も沸騰化の時代なんだろう……と11は思考しながら三口程で食した。

ここでノンアルビールで口を浄化。

次、こんにゃく。おでん通はこんにゃくの味で店のLvが決まるといっても過言ではない(11主観)。何故なら出汁の味をダイレクトに与えてくるからだ。

グニュッグニュ。

噛むたびに戻ってくる。しつこい。でも嫌いじゃない。うまい。からしを使い切るようにこんにゃくをアートに変える。そして食。出汁が口内に充満してうまい。

ちょうどその頃。唐揚げが到着した。

でかい。想像の2倍はあった。いや4倍はある。  

店員「熱いのでお気をつけください」

11「……」

唐揚げを持ち上げる。重い。

一口。二口。三口。四口。熱い。ジューシー。

でも止まらない。

11「Lv99のクソデカ唐揚げ……」

ノンアルビールで流し込む。苦いが何故かうまい。

唐揚げ→苦い→唐揚げ→苦い→唐揚げ

クソデカ唐揚げとファイティングしながら……気付けば皿は空になっていた。11は少しだけ満足した顔をする。

店員が近付く。

店員「追加は?」

11はメニューを見る。数秒、そして決断。

11「ノンアルレモンサワー」

店員「ありがとうございます!」

二杯目。

今度は少し甘かった。レモンの香りもする。

11はストローを使わずに飲む。冷たい……。

11「クソデカ唐揚げ……の時、飲めば……よかった」

レモンサワーとクソデカ唐揚げ……絶対に合う。後悔してももう遅い系。

店内のスピーカーから静かな音楽が流れている。

客は最後まで来なかった。

もみじの飾りだけが揺れている。11は最後の一口を飲み干す。空のグラス。空の皿。空のおでん皿。

店員「ありがとうございました」

11「……ごちそうさま」

席を立ち、レジ会計。トートバッグを肩に掛ける。少し重い。

バッグの口が少しだけ開いていた。

中には財布。

スマホ。

筆箱。

そして。

黒い拳銃(Lv43)

11は気にする様子もなくバッグの口を閉じた。


ケース11
END
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