ケース10『十五夜と低身長酒クズ女子大生』

当事者の名前は数字に置き換える。以下レポート内容。


ケース10
『十五夜と低身長酒クズ女子大生』


23:48。
秋の夜はやけに静かで、空気だけが少し冷たい。鈴虫がリンリン、コオロギがキッキッキッキッキ……と大合唱している。

大学生の10は、コンビニ袋をぶら下げながら公園のベンチに座っていた。

ワンピース姿。見た目だけは妙に清楚(しかも童顔)で、通りすがりの人間ならまず『ちゃんとしてそう』と思うタイプだ。

10「はぁ〜……マジ今日も恋人できなかったんだけど」

ため息と同時に、缶ビールを開ける。ビールは安価のPBのやつ。

プシュッ。

10「はい乾杯、月……月ぃぃぃ!!!」

視線の先には十五夜の月。
……のはずだったが、どう見てもおかしい。

赤い。

しかも、普段の1.5倍くらいデカい。

でも酔っているので、結論はすぐ出る。

10「でっか……まあいいや」

コンビニ袋の中身をベンチに広げる。

・チーズ(6P、ピザ型のやつ)
・サラミ(ぶっとい一本バータイプ)
・唐揚げ(でっかいやつ3個)
・カット野菜(草、栄養面を考慮)
・追加のレモンサワー缶チューハイ、ハイボール缶、保険用のコーン茶ハイ。

10「つまみ、優勝…………GO!」

チーズを1個(1個じゃなくて全部食う)。サラミを1本。唐揚げを一口。

全部、味が濃くてうまい。

10「うま……人生これでいい説ある」

赤い月が、妙に明るい。

街灯よりも存在感があるのに、誰も騒いでいない。

10「恋人さ〜〜〜〜〜」

誰もいない夜空に愚痴が吸われていく。

10「なんでできないの?性格?身長?運?」

チーズをもう一個食べる(と思ってる)。ビールをあおる。

口内が身体に悪い飲み物(10主観。※お酒は楽しむ程度にしましょう!)に満たされて浄化される。

グビッ!グビッ!ダン!(缶ビールをベンチに置く音)

10「たぶん運だわ」

プシュ!

次の相棒(レモンサワー缶チューハイ)を消費する。

10 「う〜〜〜〜ん〜〜〜!!!!」

そのとき。

警官「すみません、ちょっといいですか」

警官が立っていた。

10「え、なに?月に文句言ったから捕まるやつ?」

警官「いやそういうのじゃなくて……君さ?未成年でさ……深夜1人……学生証とか持ってる?それか年齢確認」

ダン!!

10は財布からMT運転免許証を取り出す。年齢は20歳だ。

10「はい……はい!これ!!コレぇぇ!!」

警官「はぁ……」

10「ナニ!?いくつに見えるの?私!!?17!?18!!?」

警官「あー………」

警官はどこか気まずそうだ。

警官「…………中学生……くらいに……」

10「はぁぁ!!?」

酔っ払った10の怒涛の反撃が始まる。

10「ガキぃぃ!?そんなにガキぃぃ!!?てかさー!!?おまわりさん!◯◯コンじゃねーの!!?その格好コスプレだよねぇ!!?おーー!?」

警官「……はぁ」

警官は返す言葉が見つからない。酔っ払いに絡まれたという現状に思わずため息をしてしまったからだ。

警官は月を見る。一瞬、言葉を失う。

警官「……月、でかくないですか?」

10「でかいー?」

警官「赤くないですか?」

10「赤いねー」

沈黙。

10「でもたぶん仕様」

警官「仕様……?」

10「十五夜のアップデートとかじゃないですかー?」

警官「……はぁ……」

10「そういうもん!!」

会話はそこで終了した。

警官は去る。

特に何も解決していない。

10はその背中を見送りながら、唐揚げをかじる。

10「うっま……。
世の中、だいたい雰囲気で回ってる。うん……そう……エモーショナル!マジで!!」

赤い月がゆっくりと揺れている。

酔いと同じくらい、現実も少し揺れていた。

10「……まぁいいや」

缶チューハイを飲む。もう空だった。

10「ハイ!次ぃ!!」

ハイボール缶を開けて口に放り込む。その後に余った唐揚げも同様に。

10「唐揚げとハイボールは合う!!最強!!な!お前もそう思うよな!!?」

月に向けて愚痴を放つ10。

月は何も答えない。

ただ大きく、赤く、そこにあるだけ。

チーズもサラミも唐揚げも食べ尽くし、サラダは何故か手をつけず、ラストの相棒、保険用のコーン茶ハイを消費した。

10「うえぇぇ……あんまうまくねぇ〜〜〜」

コーン茶ハイを地球に還そうかと思ったが公園なので水飲み場の排水溝にGO……した。

頭が回らず視界が揺れる。月も2重に見えてしまう。

10「あーー!!酒足りねぇ〜〜!!」

酒を買い足す体力はないので水飲み場の無料水を頂くことにする10。

10「みず……うっめぇぇぇぇーー!!」

おいしい水を堪能した後、再度、月を見上げる。

10「十五夜〜〜お月さま〜!!」

10「やっぱ、人生楽しいわ!!明日死んでもいい〜〜!!」

10「…………乾杯!!」

彼女は月を愛でる。

月は何も答えなかった。


ケース10
END
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