episode30『逃走劇』

episode25から27までの物語の要点


episode25
『異変』
・喫茶店の異変とrecefiaの消失
喫茶店「Point nemo」で突如停電が発生し、店主のrecefiaが姿を消す。nullが彼女の番号に電話をかけるも『現在使われていない』というガイダンスが流れ、店全体が外部から遮断されたような状態になる


・異常現象の発生
窓やドアが一切開かなくなり、シャワー室からは赤い液体が降り注ぐなど、安息地であったはずの喫茶店が異常に浸食される 。また、地下室からは『アポカリプティックサウンド』のような地鳴りが響き、nullのスマホには100件以上の非通知着信が入る。


・存在しない3階への階段
喫茶店にはないはずの3階へ続く階段が現れ、一行がその先のドアを開けると、そこには赤い泡と暗闇が支配する悪夢のような光景が広がっていた。nullはここを『深度2・void』であると断定。


episode26
『void』
・void(超空洞)の性質
voidはDDSの9割を占める未観測地帯であり、解析可能なデータが存在しない『完全に破損したデータ』が漂う空間 。この空間ではnullの転移能力が使えないため、自力で出口を探す必要に迫られる。


・「しあわせさま」への手がかり
探索中に『完全破損データ』として『祝福の天使』というキーワードを発見する。nullは『しあわせさま』と『祝福の天使」が同一の存在である可能性を考えるが、確証を得るには至らない。また、どこからともなく「いや、違うから」という謎の男性の声が聞こえる怪異も発生する。


・ウミの過失と悲劇
探索を続ける中、ウミは自分を付け狙う謎の『影の女』に襲われる。恐怖に耐えかねたウミは、目の前に現れた影を剣で貫くが、実際に彼が貫いたのは仲間であるソラたった。


episode27
『赤と黒』
・ソラの致命傷、ウミの剣によってソラは胴体を深く貫かれ、大量の吐血を伴う瀕死の重傷を負う。グリッチ因子適合者であるウミの攻撃は威力が高すぎたため、不死身に近い再生能力を持つはずのソラの傷口は再生せず、逆に悪化


・異常な変異
混乱するウミの目の前で、ソラの傷口から無数のカメラレンズが生えてくるという異常な現象が起きる。nullは、ソラの愛用する一眼レフと同じグリッチ因子が傷口から漏れ出していると分析する。


・アベンドの襲来と逃走
ソラの血の匂いに誘われ、空や地上から大量のアベンドが集まる。 nullは戦意喪失したウミを無理やり引っ張り、重傷のソラを拘束して搬送しながら、怪物たちの群れからの逃走を開始する。




episode30
『逃亡劇』


[part1]

赤黒い住宅地は赤い泡に覆われて建物を侵食させる。更に周りには無数の小さな観覧車が愉快に音楽を流しながら輪廻をしている。

nullはコートの下から生み出した黒い手を変形、重症のソラにシールドをような膜を張る。ウミは完全に虚ろ状態なので直接nullが手を引っ張る形になる。
そして暗闇から四方八方、アベンドに囲まれる。nullは片手で拳銃を生成、威嚇射撃しながら安全地帯をさがす。正直ソラを守りながら、ウミを牽引しつつ敵を追い払うのは流石に骨が折れるようだ。

敵はnullが胸ポケットに入れているライトで視認するかぎり、恐竜のような黒い鳥、猿、犬のような黒い物体が町中に蔓延ってる。

null「動物園かい?ここは……」

nullは呆れた口調で文句を呟く。彼の転移能力が使えないこのエリアではとにかく安息地を探すしか他なかった。

しばらく住宅地はまっすぐに進むと地面が無くなり奈落の底しか見えなくなる。

null「こっちはダメか」

引き返しながら次々と追跡するアベンドを拳銃で返り討ちにする。ウミは……言葉を発しない。

赤黒い住宅地を彷徨っていると大型のスーパーマーケットに遭遇する。

null「開いてるかな」

一旦、彼は無数の手を生やしてアベンド達を一掃する。増援が来る前にスーパーの中へ侵入した。



[part2]

店内は暗闇。ライトを照らすと赤錆塗れの食品売場が視認できた。

null「まあ、外よりマシってぐらい……」

nullは奥へ進み、2階の事務所らしき部屋に入る。

事務所のデスクには無数のブラウン管のテレビが設置されて映像に白黒の砂嵐が流れている。それ以外は漆黒の闇の部屋だ。

nullはソラを椅子に座らせる。ウミは足元が崩れ落ちてしゃがみこんでいる。

ウミ「もう……ダメだ……」

null「一旦、休憩。休憩中は勤務時間が発生しないからね」

ウミ「…………」

nullはしゃがみこみ、ウミに声をかける。

null「ソラの容態が良くなってきた。すこし回復したみたい」

ウミ「!?ソラ!?」

ウミはすぐにソラを確認。確かに傷口が狭くなってきてる。

ウミ「ぁあ!!……うぅ……!!」

少しの安堵と重くのしかかる罪悪感。ウミは再びしゃがみこむ。

null「……ちょっと話をしよう」

nullは非常に落ち着いた表情でウミに言う。そして視線を逸らす。



null「まあ……7割、僕の責任。残りの3割はウミ」

ウミ「え?」

null「ウミはずっと見えない何かについて指摘していたけど……僕達からすればソレは観測してなかった。観測がされないなら無いものと同じ……」

ウミ「…………」

null「でもそれは僕の判断ミス。君の意見に寄り添う必要があった」

ウミ「いや、これは俺の……問題だよ。俺が悪い……」

null「ミクロ(小さな)の視点で考えればね。でも現にソラは復帰しかけている。周りの状況もそこまで……悪くない」

nullは更に言う。

null「深度2・voidのエリアを抜けようとしている……voidから離れれば転移能力で喫茶店に帰れる」

ウミは立ち上がった。

ウミ「本当……本当なのか!?」

null「根拠を述べると赤黒い泡の空間から住宅地やスーパーなどといった物体が出現しているんだよ。これは深度が浅くなっている証拠」

ウミ「……帰れ……る?」

null「帰れる」

nullは即答する。


null「ってことで残りの3割の責任についてはソラとよく話し合って。もちろんこの場所から離れた後の話だけど」

ウミ「…………」

null「それと……そのウミの『悩み』は……僕達では対処できない。君自身が乗り越えるしかないと思う」

ウミ「……そう……か」


nullは無表情だがライトをウミに渡す。


ウミ「え?」

null「落ち着いた?」

ウミ「…………ちょっとは……」

null「なら……仕事、頼むよ」

ウミ「?なんだよ?」

null「僕は戦略的スリープ状態……つまり仮眠を取る。ソラだけにリソースを割くからあとは君がvoidから抜け出して?」

ウミは目を見開く。

ウミ「え!?おいおい!!?どういう意味だよ!!?」

null「転移能力を使える体力を確実に残したいから……ソラだけにシールド展開と自動追従をさせる……用は君1人でがんばって……ってこと」

ウミ「無茶な!!」

ウミは声を上げて反論する。しかしnullは無慈悲に言葉を追加する。

null「目と鼻の先に脱出の糸口があるんだから……がんばって。それじゃおやすみ」

そう言うとnullはノイズ塗れになりながら姿を消す。ソラにノイズの膜、シールドを展開させて。


ウミ「……マジかよ」

その言葉を返す人は今この空間には居なかった。



[part3]

nullに託されたライトを手に持ち、スーパー内の探索に入るウミ。ソラは膜が張られた状態でウミに追従する。意識はまだなさそうだ。

現状、赤錆と食品しか見当たらないが……何か突起物を踏んだ。

ウミ「なんだ?」

床には四角形の金属板が……ライトを照らすと取っ手が見えた。

ウミ「ハッチ?こんな所に……」

取っ手を持ち開閉。中には金属のハシゴと底なしの闇が見える。

ウミ「……」

ウミはため息をしながらハシゴを降りる。幸いソラは膜の中で浮遊している為、彼女の手助けは必要ない。ハシゴはどこまでも下へと続く。

何mかわからなくなるほど地下へと潜っていく。そしてようやく赤黒い泡の地面が見えてきた。

ウミ「結局、真っ赤か……」

着地後、ゆっくりと奥へと進む。空気が冷たくヒンヤリしている。しばらく進むと窮屈な空間から広大な広場に出る。


ウミは直感が鋭い為、直ぐに異変を感知した。

……明らかに地上なのだ。冷たい風が吹き、赤い雨が降っている。

ウミ「来るなら……こいよ……」

ライトを胸ポケットに入れて、剣を装備。敵に備える。


♪〜♪〜♪〜。


三拍子のポップなメロディの音楽が聞こえる。
ウミは首を傾げて……その音源に近づく。


♪〜♪〜♪〜。


どこか古臭くて懐かしい雰囲気の曲調……例えると遊園地のアトラクションの音楽だ。

更に音源に進むと……ようやく正体を掴んだ。



ウミ「これ……」



ウミ「お化け屋敷の入口?」




目の前に巨大な建造物が建っており、大きな入口とファンシーなピエロの模型が壁に張り付いている。そして……ピエロの模型の隣にスピーカーが付いており、そこから先程のファンシーな音楽が垂れ流されている。看板にはこう書かれていた。



『Happy & hell land!』



episode30
END
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