episode29-2『ハッピーオアダイ』

episode29-2
『ハッピーオアダイ』


[part3]

初老の女性「小鳥遊(たかなし) 司(つかさ)!!」

その発言にツカサは固まった。

ツカサ「小鳥遊 司……!?」

ツカサは初老の女性に方角を向く。しかし、もうソレは居なかった。過去の忌々しい記憶が蠢き始める。

ツカサ「……!!?」

ツカサ「……(小鳥遊家……辺鄙な場所……そう!島!島1つ全てが小鳥遊家の資産……その中にそびえ立つ洋館……そんなことより!)」

ツカサは記憶の整理を一旦やめて、青いドアを開ける。

そこは部屋一面が鏡に覆われている鏡部屋だ。そして目の前に映るのは……白いワンピースの金髪の少女……血色がかなり悪く、目も虚ろだ。

『15歳は迎えられないかもしれません』

『我々は最善を尽くしました。ですが真に……』

この言葉がよぎる。更に新たな言葉も。

以下小鳥遊家、分家の声。

『本当に残念ね。まさか跡継ぎの一人娘が病気だなんて……』

『10歳の頃から持病が悪化してねぇ……小鳥遊家の本家(直系)はどうなるのかしら……』

『(ひそひそ)実は……もう候補は決まってるのと……葬式の手配はできてるのよ』

『(ひそひそ)代々の終焉なら島……いや本家まるごと……』

『ほーら!早くお見舞いのバームクーヘン……渡さないと!』

ツカサは目の前に写る鏡を叩き割る。

ツカサ「医師も親戚なんて嘘つきしかいないじゃない……!」

ツカサ「どいつもこいつも支配しか考えてない!なにが葬式の手配よ!?ざけんじゃねーよ!!?」

すると割れた鏡に写る金髪の少女(過去のツカサ)が大量の吐血をする。しかし、彼女は笑っている。赤く染まった口から言葉を放つ。

鏡のツカサ「結局、この世は支配するかされるか……ただそれだけよ!あなたは『支配の魔女』として一族の権力を奪い、当主になったの!!これのどこが悪いのかしら!!?それとも病弱なまま惨めに一生を終えるほうが幸せ?ありえない!」

バリン!

鏡が完全に粉々になる。鏡の奥から紳士の男性

が無表情で鏡を大鉈で叩き割る!

紳士「(ぼそぼそ声で)過去は過去なんだよねぇ。大事なのは……今だよ?」

大鉈を引きずりながらゆっくりツカサへと近づく。

ツカサ「またそうやってわたくしを嘲笑うのね……クモリ」

紳士は動じない。表情もずっと凍てついている。

ツカサは念を込めて紳士を重力で叩き潰す!しかし、紳士はまったく怯みもしない。

紳士「(ぼそぼそ声で)怯まないねぇ……」

ツカサ「クソッ!!」

すぐに振り返り、青いドアから飛び出す。

エントランスホールの1階の玄関に向かい開けようとするが……ドアの隙間から無数の彼岸花が次々と生え、ドアを封鎖する。

ツカサ「ダメ!!」

彼女が嘆いた矢先に2階から紳士が鉈を手にして階段を降りていく。

紳士「……こっちに来なさい?君の望みを叶えてあげるよ?」

ツカサ「来るな!変態ッ!!」

罵声を飛ばす彼女。すぐに近くの部屋へと逃げ込む。

ガチャン!

その部屋は辺り一面彼岸花に支配されていた。床も壁も天井も真っ赤な花に染められて……。

ツカサ「ここも!?!?」

床から咲き誇る彼岸花を踏みにじりながら奥へ奥と進む。

紳士「おーい!そっちは行き止まりだよ?……こっちから入りなさい」

後ろから声を掛けて精神を揺さぶってくる。ツカサは彼の声を無視して側面のドアを開ける。

その部屋はバスルームだった。すぐにドアの鍵を閉める。しかし彼岸花の侵食が酷い。浴槽には首から彼岸花が生えた人型がもたれかかっている。

ツカサ「邪魔よ!!」

グシャリ!

物体をぺしゃんこにさせてカーテンを閉めて浴槽に隠れる。

外から声が。

紳士「どっちかな?どっちに向かったと思う?」

ぼそぼそと独り言を呟く紳士。

コンコン。

バスルームのドアをノックする。

紳士「居るのかい?居ないのかい?……気になるねぇ……」

ツカサ「(どっか行け!!)」

ドンドンドン!!

激しくドアを叩く音。

紳士「『ごめんなさい』と言えば……許してあげる……お嬢ちゃん……早く答えなさい」

ツカサは神に縋るように祈る。しかし。

ツカサ「(祈って解決したことある?
泣き叫んで撫でて貰ったことある?
優しくして助けてくれたことある?
ある?)」

ツカサ「(全部……全部……そうよ!……わたしが……弱いから……奪われるの!)」

ツカサ「(だから!わたしが奪うしかないの!)」

ツカサは今まで以上に殺意を込めてバスルームのドアに重力を放す!!

紳士「あ」

洋館全体に轟音が響く。重力の範囲が洋館を上回ったからだ。ガラガラと音を立てて洋館は崩壊していく。

そしてその衝撃波をもろに受けた紳士は潰れながらも頭だけは残った。紳士の頭がツカサを見つめ、ニヤッと笑う。

紳士「不思議だねぇ……こんな目に遭うなんて」

瓦礫をどかしてツカサは紳士の前に立つ。彼女も全身血塗れだ。

ツカサ「わたくしの……勝ちね」

紳士「…………」

ツカサ「『ごめんなさい』は?」

紳士「…………」

ツカサ「そう……なら跪き……跪く身体もありませんわね……」

ツカサは罵倒を続ける。

ツカサ「無様ってのはこういうことを言うのかしら?まあ、わたくし『支配の魔女』ならこれは当然の結果ね」

紳士は喋らない。ツカサは追い打ちをかける。

ツカサ「『ごめんなさい』……は?クモリ?それとも駄々こねてルール無効?泣き叫べば情をかけてくれるとでも?」

ツカサを手に力を念じて……トドメを刺す準備をする。

その時、脳内に言葉が。

『司!15歳の誕生日おめでとう!ホント、ホントにおめでとう……!』

『よかった!ケーキやバームクーヘンなんかじゃ物足りないな!』

『……ずっと……元気に……!生きてね!』

『誕生日プレゼントよ!』

ツカサの手が止まる。紳士はその瞬間を見逃さなかった。

紳士「ゲーム……オーバー……」



『回想終わり』


鉄格子の奥の椅子に監獄されるツカサ。

クモリ「ママ!パパ!たすけてー!たすけてー!たすけてー!」

ツカサ「…………」

クモリ「だーれもたすけてくれません……!あはははは!!!」

一通り笑った後、クモリの表情が無になる。

クモリ「ホントにねー……先輩は病弱で無能だから……」

クモリ「……覚えてる?過去の事?自分の部屋が病室のような場所だったコト……」

それを聞いてツカサは立ち上がる。

ツカサ「わたくしの部屋……!!?なんであなたが……!!?」

クモリ「毎日のお見舞いのバームクーヘン……それに……」

クモリ「『15歳の誕生日プレゼント』」

ツカサ「……クモリ……あなた……あなたは!?」

ツカサ「………………何者?」



episode29
END
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