episode28『クモリ』

episode28
『クモリ』



[part1]

黒いドレスに黒い三角帽子を被った金髪ロングの少女は牢獄のような場所に囚われていた。その少女の名前は……ツカサ。

ツカサは牢獄に設置されている椅子に座っている。鉄格子越しの奥に白い三角帽子を被った黒髪ショートの女の子、見た目はツカサと同じ15歳程。ダボついた黒いロングパーカーにロングスカート。まるで三角帽子が似合わない。

パーカー少女は彼岸花をモチーフにしたステッキ(魔法少女風)を気まぐれに振り回す。少女はニヤニヤと笑っている。悪意は感じない。

少女「まーた、会ったね」

ツカサはパーカー少女を睨みつけた後、視線を逸らす。そして言う。

ツカサ「また……ではない……ですわ……もう何度も……何度も……!」

ツカサ「『クモリ』!!」


クモリと呼ばれた少女はへへへと下品な笑い声を飛ばす。


クモリ「『今回』で2回目なんだけどねぇー」

ツカサ「嘘をつきなさい!!」

クモリは両手を後ろに繋げて無邪気に言う。

クモリ「まー嘘だけどね」

ツカサ「…………」

クモリはステッキを鉄格子の間に入れてツカサの帽子をつつく。

クモリ「鍵もない……力づくでも無理……道もない……ああ!オマケにトイレもない!!」


あははは!と1人で爆笑するクモリ。


ツカサ「……うるさい!」

クモリ「でも何もしないよ?……だってツカサ……先輩は食事もトイレも必要ない魂の物体xだから〜」

彼女は鉄格子を掴み、ふざけるように叫ぶ。

クモリ「ママ!パパ!たすけてー!たすけてー!たすけてー!」

ツカサ「…………」



クモリ「だーれもたすけてくれません……!あはははは!!!」



一通り笑った後、クモリの表情が無になる。



クモリ「ホントにねー……先輩は病弱で無能だから……」

クモリ「……覚えてる?過去の事?自分の部屋が病室のような場所だったコト……」

それを聞いてツカサは立ち上がる。

ツカサ「わたくしの部屋……!!?なんであなたが……!!?」

クモリ「毎日のお見舞いのバームクーヘン……それに……」


クモリ「『15歳の誕生日プレゼント』」



ツカサ「……クモリ……あなた……あなたは!?」



ツカサ「………………何者?」



[part2]


『時は遡る』


『深度1・空中に浮かぶ部屋』

ツカサが自身の記憶探しにたどり着いた場所はここ。空中庭園といったところか。ただファンタジー世界のような古代文明都市ではなく、むしろ現実の子供部屋の構造に近い。床はフローリングでカラフルな風船が転がっており、部屋の隅にあるブラウン管のテレビは砂嵐のみが写っている。

ツカサは部屋の構造を見渡すとすぐに違和感を感じ取った。別の部屋へ繋がる廊下などなく、景色は青空。

ツカサ「はぁ」

しかし、青空の奥にまた建物が浮いている。その中もオモチャに囲まれたような空間……。

ツカサ「空を飛んで移動するしか……ないじゃない……」

誰もいない中、愚痴を吐く。そして探索。

落ちていたスケッチブックを手にする。中を開くと……。

『病室のような部屋』のイラスト。

ツカサはページをめくる。すると……ページは大きな木のイラスト……。

ツカサ「…………」

桜の木であり、春は花が咲き誇り、夏は緑、秋は赤く染まり、冬は枝に雪が乗っている。

……そんなイラストを延々と描き続けてあった。

ツカサ「…………」

スケッチブックの端にはカウント数が刻まれている。

『あと5回』

ページをめくると、

『あと4回』、『3回』、『2回』、『1回』……。

ツカサはページをめくりつづけて最後のページをじっくり見つめた。

しかし、イラストはなく文字だけが……。


『死にたくない』


ツカサ「!!?」

ツカサはすぐにスケッチブックを投げ捨てる。



その部屋内の探索を終えるとツカサは箒を生み出し、青空を泳ぐ。この飛行中が彼女にとって心地良い刺激だった。青空も綺麗な虹がかかっており非常に幻想的。

宙に浮いている次の部屋にたどり着く。今度は幼児達が一次的に保護させる為の部屋、いわばプレイルームといったところにツカサは舞い降りた。

着地と同時に辺り一面の風船がふわっと浮かび上がる。風船を払いながら先へ進む。

すると無人のカラフルな滑り台が部屋に置かれていた。ツカサはため息をしながら滑り台に登り……頂上から部屋を見つめる。

高所からの景色……小さなおもちゃ箱のような部屋の空間。ツカサはしばらく景観を眺めていた。

彼女は天井を見る。天井は大きな穴が空いており、その奥は漆黒の闇。

ツカサ「上を見ても……上を見ても……更に上があるのね……」

どこか哲学めいた言葉だった。そしてツカサは滑り台を滑る。

ササーー!!

なんともいえない高揚感。一瞬、童心に帰った気がした。滑るとすぐに床に着地した。

特に収穫がないのでまた空を駆け巡る。この時は夢の中を泳いでいる気分になる。そして新たな部屋に到着。


今度はかなり広い部屋。しかし外観は非常にファンシーだった。キラキラした星のオブジェクトやキャラクターモノのぬいぐるみ、おもちゃの銃、ままごとセットなどが散らばっている。

ツカサ「なにこの部屋……」

彼女の過去の生活とはまるで無縁な光景だった。しかし、どこか彼女の潜在的に宿る願望が具現化したものかもしれない。


ピカーン!


突如、部屋の中央に魔法陣が描かれてる。絵は彼岸花がモチーフだ。


「迷える善人を救いにやってきた魔法少女!その名は 晴れ ときどき 『クモリ』!!」


凄く恥ずかしくなりそうな元気な少女の声が屋内に響き渡る。

ツカサ「!!?」

ツカサは魔法陣を凝視していると中から15歳程の黒髪ショートの女の子が出現した。容姿は黒いロングパーカーにロングスカート、そして……大きな白い三角帽子を被ってる。

彼岸花をモチーフにしたステッキを持つ少女、クモリはツカサを見つめる。

クモリ「へへ!どう?可愛いー?」

ツカサ「凄く、ダサいですわ」

ツカサは呆れた表情になる。そして問う。

ツカサ「あなた……人間じゃ……ない?アベンド?」

するとクモリはステッキをくるくると回しながら踊る。

クモリ「世界を救いにきた魔法少女!んでツカサ先輩は……ぶったいエックスー!ぎゃはははは!!」

ツカサは手をかざす。

ツカサ「先輩呼ばわりやめてもらえないかしら?初対面で……」

手に念を込める。

ツカサ「跪きなさい」

グリッチ因子による重力攻撃を放つツカサ。クモリは地面に張り付いた。

クモリ「ぐえぇーー……荒いね……最近の魔女さんは……」

ツカサは少し焦りの表情を迎える。あきらかに対象を叩き潰す威力を放ったはずなのに……彼女、クモリは涼しい顔をしていた。

クモリ「従者に対して厳しすぎじゃなーい?」

ツカサは更に追い打ちをかけようとするが……。

クモリ「あーダメダメダメダメダメ!」

その攻撃は彼女のステッキで弾かれる。


クモリ「よーし!決めた!ゲームをしよう!ルールは……ごめんなさいと言った人が負け!えーとタイトル名は」



クモリ「『ハッピー オア ダーイ!!!』」



クモリは不敵に笑うとツカサが立っている床が抜ける!!彼女は闇に飲み込まれた!!



episode28
END
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