episode26『void(ヴォイド)』
episode26
『void』
[part1]
ウミ「『void(ヴォイド)』……?」
null「えーと……超空洞って知ってる?」
ソラ「いや、わからないです」
ソラとウミはnullを見つめる。
null「現世の宇宙の話なんだけど、宇宙は銀河系で満ちてると思うでしょ?」
ウミ「ああ」
null「実際には宇宙にはほとんど観測されてない空間が存在してて、銀河系は宇宙の一部でしかない」
null「で、その何もない空間を超空洞……英語だとvoid(ヴォイド)って呼ばれてるんだよ」
そこでウミは質問をする。
ウミ「つまり、このDDSも何もない……未観測地帯に侵入したってことか?」
null「察しがいいね」
nullは説明を続ける。
null「DDSでいうとDDが密集している空間、世界は全体の1割にも満たなくて……」
ソラ「え?」
null「残りの9割は宇宙と同じ何もない空間……それがvoid」
ウミ「マジかよ……じゃあ探索しても意味ねーじゃん」
nullは無表情だが、ウミの発言を否定する。
null「……正確には『解析できるようなDD』が存在しない……つまり完全に破損したデータが漂ってる所なんだよ」
nullは間髪いれずに更に続ける。
null「voidに入れる確率はかなり低い……それでも喫茶店からここに落ちるなんて……よっぽどラッキーだったんだね」
ウミ「んなわけあるか……」
彼はため息をする。ソラも凄惨な光景に固まってるようだ。
null「……ここなら、破損データでも極秘の貴重なDDが手に入るかもしれない」
ソラ、ウミ「…………」
null「でも……」
nullは俯く。少し気まずそうに。
null「僕の転移能力が使えない空間……つまり自力で出口を探さないといけない」
ウミ「おいおい……!」
ソラ「それって……マズイですよね?」
null「うん……マズイ」
null「……だから、出口が最優先……」
nullは途中で言葉に詰まる。ある思考が生まれてしまった。
null「(僕の存在も記憶も……ここなら……分かるんじゃ……)」
null「(なんなら、recefiaの意図も……『しあわせさま』の正体も……)」
null「(僕は……解放される……?)」
しかし、彼には自分で創るコーヒーより、recefiaのコーヒーのほうが美味しいことを知っていた。そして『Point nemo』という居場所の重要性も。
null「さすがにロジカルじゃないか……」
ウミ「なんだよ……」
null「ま、脱出しよう」
[part2]
静寂かつ無音が広がる空間。道幅は狭く、公共施設の廊下ぐらいだろうか。しかし、赤い泡のような物体に囲まれたその空間は3人の精神を蝕んでいく。
ソラはカメラを構えてファインダーを覗く。
ソラ「穴?泡?……の中は暗闇ですが……何か大きい物体が見えます」
ウミ「どれ?」
ウミも壁を凝視して深淵を覗く。
微かに見えるぐらいの暗さだが、全身が赤黒く巨大な涅槃像が闇に潜んでいた。
ウミは覗いた瞬間に鳥肌が止まらなくなった。
ソラ「なんで……ここに……」
null「……わからない……それが正解だと思う」
一同は突き当たりまで進むと、色彩がついた砂嵐のようなドアを見つける。
null「開けるよ」
ドアノブを回すが音も無く、ドアは開閉した。
部屋は壁が見えなくなるぐらい広大になった。
床は相変わらずの赤い泡のような模様。nullのライトが闇に吸われる。
ウミ「集合体恐怖症じゃなくてよかった」
ソラ「グロテスクな画像は慣れてるほうなので……」
ウミ「おい……」
軽口を叩く。
nullはライトを奥に照らす。
null「黒いノイズ……DDある」
DD
『完全破損データ』
有害型、テキストファイル
・bbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbb
ソラ「……」
ウミ「うわ……」
null「ダメだこりゃ」
諦めて探索へ戻る一行。
進んでも進んでも壁やドアは見つからない。
null「またDD」
DD
『完全破損データ』
有害型、テキストファイル
・138
null「うーん」
ソラ「ちょっと……無理ですね」
どこか諦めムードのソラ。
ビーーーーーー!!!
とその時、謎のバグった電子音と共に周囲にノイズが広がる!!
ウミ「なんだこれ!!?」
すぐに臨戦態勢に入るウミとソラ。しかし。
null「動かないで!!」
nullが大きな声を上げた。一応、指示通りに従う2人。
ウミ「アベンド……だろ?」
null「そう……でも……汚染が酷い……」
ソラ「グリッチ因子で事象を打ち消せば……」
ソラはカメラを使おうとするが……。
null「ダメ!!足手まとい!!」
ソラ「え……?」
nullの言葉に唖然とするソラ。
nullはナイフを取り出し、空間を刺した。ノイズと電子音は静かになった。
null「スリープ状態になりたくないから……ちょっと力を使った。どこかエリアが破損したかも……」
ウミ「はぁ!?それってどういう……」
null「聞いたら後悔するよ……?知らなくていい」
ソラ「……そうです……か」
ソラは俯いている。
探索を続けるとDDが。
DD
『完全破損データ』
有害型、テキストファイル
・『祝福の天使』
ウミ「『祝福の天使』……?」
null「『祝福』?……確かrecefiaが各アベンドのDDの残滓に刻まれたキーワード……」
ソラ「これ……もしかして……『しあわせさま』……なんでしょうか?」
nullは長考する。
null「…………神じゃなくて……天使……なの?……いいやクソ神でいいよ」
ウミ「あのなぁ……」
「いや、違うから」
null「…………?」
nullはソラとウミに確認する。
null「今、誰か喋った?」
ソラ「私じゃないです……ウミ君?」
ウミ「俺も言ってない…………でも聞こえた」
ウミ「『いや、違うから』って」
一同は沈黙する。確かに男性の低い声で放った言葉。
…………しかし、特に物体の反応や現象は起きてない。
ソラ「気のせい……?」
ウミ「……そんな気はしねーな」
null「僕もウミに賛同する」
ウミ「そりゃどーも」
探索続行。
一行が歩いていると赤い泡の地面すらなくなり、完全に深淵が広がる。
null「床なし……いや、歩けそう」
無の空間を歩いていく。
歩き続けると奥に光が。
ウミ「なんだ?」
ソラがカメラの望遠レンズで凝視する。
ソラ「ぎ……銀河系……?」
null「おっと……あまり覗かないほうがいいよ?」
ソラはカメラを下ろした。nullは続ける。
null「ソラ……」
ソラ「……?」
null「さっきの僕は……ロジカルじゃなかったね……」
nullは目を細める。そして少し視線を逸らした。ウミが介入。
ウミ「ソラにはあれぐらいが丁度良いから。あまり気にするな」
ソラ「(ウミを睨んで)ウミ君、ディスってますよね……?」
ウミ「さぁな」
暴走癖をなんとかしな……というウミからの目線をソラは感じとった。
[part3]
深淵を歩き続ける。目指す方向は銀河系のオブジェ。
null「右手に薄っすらと涅槃像がいるね」
ウミ「見ないほうがいいんだろ?」
null「うん」
nullの転移能力が使えないとなるとソラ、ウミのアベンド化のリスクが跳ね上がる。nullが慎重に行動するのは当然であった。
進んでも一行に銀河系の場所に近づかない……。
null「この機会だから、世間話するけど」
ウミ「なに?」
null「もしこのvoidで有益な情報が見つかって……それが君達の不都合なことなら……受け入れる?」
ソラ「……例えば具体的になんですか?」
null「例えば……『しあわせさま』が……僕だった……とか……ね」
ソラ、ウミ「………………」
2人は深淵である地面を見つめながら歩く。
null「そしたら……どうする?」
ウミ「どうするって……」
2人は押し黙ってしまった。するとnullが。
null「はい、僕の勝ち」
ウミ「は?」
null「その一時の感情の間に『ナイフで刺し殺されてるよ?』」
ソラとウミは再び沈黙。
null「生きたいなら……成し遂げたいなら……『捨てないと』……色んなモノをね」
ウミ「……どうやって勝つか考えてただけだよ」
ウミは声を大きく上げて言った。
null「って言ってるそばから目の前にDD」
DD
『完全破損データ』
有害型、テキストファイル
・ひし ゃげ たか ご
・い ぞん としっ と
・く うそう ぐせ
・あや つりに ん ぎょ
・はぁ と
・そら に いた
・に じいろ のげ んそう
・さいごのきせき
・すいへいせん
null「これわかる?」
ウミ「お前がわかんなきゃ俺達無理だろ……」
null「そうだよね」
nullは追加で言う。
null「完全破損DDは持ち帰ることもできないし……」
更に歩き続ける。すると暗闇の中に50m級の絵画が現れる。
ソラ「宗教画ですかね」
それはまさしくソラの言う通りだった。人々が地に伏せ、跪き、空の太陽と下に巨大な天使の絵が描かれている。
ウミ「これじゃね?『祝福の天使』」
nullは絵画を凝視する。
null「『しあわせさま』……」
彼はしばらく長考する。
null「でもおかしい点がある」
ソラ「え?なんですか?」
null「人々は『祝福の天使』を崇拝していたというデータはアベンドのDDの残滓、『祝福』という文字から推測できるけど……」
null「『しあわせさまが降臨、人類を笑顔した』というDD以外で『しあわせさま』に関する情報がないんだよ」
ウミ「確かに……」
ウミは相槌をする。
ソラ「『小規模汚染』のDDや『ばいばい病』への対策の『飴(キャンディスペース)』などは確かに情報でありましたけど……『しあわせさま』は見たことないです……ね」
nullは頷きながら言う。
null「だから『しあわせさま』=『祝福の天使』という説はまだ早い気がする」
ソラ、ウミ「…………」
全員が思考状態に入る……がウミが周りをキョロキョロし始める。
ウミ「とりあえず、生存優先だ……出口……」
ウミはふと後ろを振り向いた。
深淵の中、遠くに黒い影の女性が佇んでいる。
ウミ「……クソ!null!またいる!!」
nullは目視するが……。
null「いないよ」
ウミ「なんでだよ!!?いるだろ!?」
ソラ「暗闇だけですけど……」
ソラも認識していない。
ウミ「…………」
もうウミは例の女を無視するつもりでいた。
……しかし。
もう一度確認した際、明らかに近い距離で影の女は立っていた。
ウミはめまいと吐き気に襲われる。そして一瞬、目を離した瞬間。
女は彼の目と鼻の先まで近づいていた。
ウミ「あ゙あ゙あ゙あ゙っっー!!!」
ザクッ!!
彼は本能的に剣を振るい女を貫く……が。
そこにいたのはフリルとリボンが装飾された白いワンピース服、ロリィタ服の少女……の衣装が真っ赤に染まった光景だった。
ウミ「……ソラ……?」
剣を握り、相手を本気で殺す気で放った行為が……ソラに……彼女に……。
彼女を貫いてしまった。
episode26
END
『void』
[part1]
ウミ「『void(ヴォイド)』……?」
null「えーと……超空洞って知ってる?」
ソラ「いや、わからないです」
ソラとウミはnullを見つめる。
null「現世の宇宙の話なんだけど、宇宙は銀河系で満ちてると思うでしょ?」
ウミ「ああ」
null「実際には宇宙にはほとんど観測されてない空間が存在してて、銀河系は宇宙の一部でしかない」
null「で、その何もない空間を超空洞……英語だとvoid(ヴォイド)って呼ばれてるんだよ」
そこでウミは質問をする。
ウミ「つまり、このDDSも何もない……未観測地帯に侵入したってことか?」
null「察しがいいね」
nullは説明を続ける。
null「DDSでいうとDDが密集している空間、世界は全体の1割にも満たなくて……」
ソラ「え?」
null「残りの9割は宇宙と同じ何もない空間……それがvoid」
ウミ「マジかよ……じゃあ探索しても意味ねーじゃん」
nullは無表情だが、ウミの発言を否定する。
null「……正確には『解析できるようなDD』が存在しない……つまり完全に破損したデータが漂ってる所なんだよ」
nullは間髪いれずに更に続ける。
null「voidに入れる確率はかなり低い……それでも喫茶店からここに落ちるなんて……よっぽどラッキーだったんだね」
ウミ「んなわけあるか……」
彼はため息をする。ソラも凄惨な光景に固まってるようだ。
null「……ここなら、破損データでも極秘の貴重なDDが手に入るかもしれない」
ソラ、ウミ「…………」
null「でも……」
nullは俯く。少し気まずそうに。
null「僕の転移能力が使えない空間……つまり自力で出口を探さないといけない」
ウミ「おいおい……!」
ソラ「それって……マズイですよね?」
null「うん……マズイ」
null「……だから、出口が最優先……」
nullは途中で言葉に詰まる。ある思考が生まれてしまった。
null「(僕の存在も記憶も……ここなら……分かるんじゃ……)」
null「(なんなら、recefiaの意図も……『しあわせさま』の正体も……)」
null「(僕は……解放される……?)」
しかし、彼には自分で創るコーヒーより、recefiaのコーヒーのほうが美味しいことを知っていた。そして『Point nemo』という居場所の重要性も。
null「さすがにロジカルじゃないか……」
ウミ「なんだよ……」
null「ま、脱出しよう」
[part2]
静寂かつ無音が広がる空間。道幅は狭く、公共施設の廊下ぐらいだろうか。しかし、赤い泡のような物体に囲まれたその空間は3人の精神を蝕んでいく。
ソラはカメラを構えてファインダーを覗く。
ソラ「穴?泡?……の中は暗闇ですが……何か大きい物体が見えます」
ウミ「どれ?」
ウミも壁を凝視して深淵を覗く。
微かに見えるぐらいの暗さだが、全身が赤黒く巨大な涅槃像が闇に潜んでいた。
ウミは覗いた瞬間に鳥肌が止まらなくなった。
ソラ「なんで……ここに……」
null「……わからない……それが正解だと思う」
一同は突き当たりまで進むと、色彩がついた砂嵐のようなドアを見つける。
null「開けるよ」
ドアノブを回すが音も無く、ドアは開閉した。
部屋は壁が見えなくなるぐらい広大になった。
床は相変わらずの赤い泡のような模様。nullのライトが闇に吸われる。
ウミ「集合体恐怖症じゃなくてよかった」
ソラ「グロテスクな画像は慣れてるほうなので……」
ウミ「おい……」
軽口を叩く。
nullはライトを奥に照らす。
null「黒いノイズ……DDある」
DD
『完全破損データ』
有害型、テキストファイル
・bbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbb
ソラ「……」
ウミ「うわ……」
null「ダメだこりゃ」
諦めて探索へ戻る一行。
進んでも進んでも壁やドアは見つからない。
null「またDD」
DD
『完全破損データ』
有害型、テキストファイル
・138
null「うーん」
ソラ「ちょっと……無理ですね」
どこか諦めムードのソラ。
ビーーーーーー!!!
とその時、謎のバグった電子音と共に周囲にノイズが広がる!!
ウミ「なんだこれ!!?」
すぐに臨戦態勢に入るウミとソラ。しかし。
null「動かないで!!」
nullが大きな声を上げた。一応、指示通りに従う2人。
ウミ「アベンド……だろ?」
null「そう……でも……汚染が酷い……」
ソラ「グリッチ因子で事象を打ち消せば……」
ソラはカメラを使おうとするが……。
null「ダメ!!足手まとい!!」
ソラ「え……?」
nullの言葉に唖然とするソラ。
nullはナイフを取り出し、空間を刺した。ノイズと電子音は静かになった。
null「スリープ状態になりたくないから……ちょっと力を使った。どこかエリアが破損したかも……」
ウミ「はぁ!?それってどういう……」
null「聞いたら後悔するよ……?知らなくていい」
ソラ「……そうです……か」
ソラは俯いている。
探索を続けるとDDが。
DD
『完全破損データ』
有害型、テキストファイル
・『祝福の天使』
ウミ「『祝福の天使』……?」
null「『祝福』?……確かrecefiaが各アベンドのDDの残滓に刻まれたキーワード……」
ソラ「これ……もしかして……『しあわせさま』……なんでしょうか?」
nullは長考する。
null「…………神じゃなくて……天使……なの?……いいやクソ神でいいよ」
ウミ「あのなぁ……」
「いや、違うから」
null「…………?」
nullはソラとウミに確認する。
null「今、誰か喋った?」
ソラ「私じゃないです……ウミ君?」
ウミ「俺も言ってない…………でも聞こえた」
ウミ「『いや、違うから』って」
一同は沈黙する。確かに男性の低い声で放った言葉。
…………しかし、特に物体の反応や現象は起きてない。
ソラ「気のせい……?」
ウミ「……そんな気はしねーな」
null「僕もウミに賛同する」
ウミ「そりゃどーも」
探索続行。
一行が歩いていると赤い泡の地面すらなくなり、完全に深淵が広がる。
null「床なし……いや、歩けそう」
無の空間を歩いていく。
歩き続けると奥に光が。
ウミ「なんだ?」
ソラがカメラの望遠レンズで凝視する。
ソラ「ぎ……銀河系……?」
null「おっと……あまり覗かないほうがいいよ?」
ソラはカメラを下ろした。nullは続ける。
null「ソラ……」
ソラ「……?」
null「さっきの僕は……ロジカルじゃなかったね……」
nullは目を細める。そして少し視線を逸らした。ウミが介入。
ウミ「ソラにはあれぐらいが丁度良いから。あまり気にするな」
ソラ「(ウミを睨んで)ウミ君、ディスってますよね……?」
ウミ「さぁな」
暴走癖をなんとかしな……というウミからの目線をソラは感じとった。
[part3]
深淵を歩き続ける。目指す方向は銀河系のオブジェ。
null「右手に薄っすらと涅槃像がいるね」
ウミ「見ないほうがいいんだろ?」
null「うん」
nullの転移能力が使えないとなるとソラ、ウミのアベンド化のリスクが跳ね上がる。nullが慎重に行動するのは当然であった。
進んでも一行に銀河系の場所に近づかない……。
null「この機会だから、世間話するけど」
ウミ「なに?」
null「もしこのvoidで有益な情報が見つかって……それが君達の不都合なことなら……受け入れる?」
ソラ「……例えば具体的になんですか?」
null「例えば……『しあわせさま』が……僕だった……とか……ね」
ソラ、ウミ「………………」
2人は深淵である地面を見つめながら歩く。
null「そしたら……どうする?」
ウミ「どうするって……」
2人は押し黙ってしまった。するとnullが。
null「はい、僕の勝ち」
ウミ「は?」
null「その一時の感情の間に『ナイフで刺し殺されてるよ?』」
ソラとウミは再び沈黙。
null「生きたいなら……成し遂げたいなら……『捨てないと』……色んなモノをね」
ウミ「……どうやって勝つか考えてただけだよ」
ウミは声を大きく上げて言った。
null「って言ってるそばから目の前にDD」
DD
『完全破損データ』
有害型、テキストファイル
・ひし ゃげ たか ご
・い ぞん としっ と
・く うそう ぐせ
・あや つりに ん ぎょ
・はぁ と
・そら に いた
・に じいろ のげ んそう
・さいごのきせき
・すいへいせん
null「これわかる?」
ウミ「お前がわかんなきゃ俺達無理だろ……」
null「そうだよね」
nullは追加で言う。
null「完全破損DDは持ち帰ることもできないし……」
更に歩き続ける。すると暗闇の中に50m級の絵画が現れる。
ソラ「宗教画ですかね」
それはまさしくソラの言う通りだった。人々が地に伏せ、跪き、空の太陽と下に巨大な天使の絵が描かれている。
ウミ「これじゃね?『祝福の天使』」
nullは絵画を凝視する。
null「『しあわせさま』……」
彼はしばらく長考する。
null「でもおかしい点がある」
ソラ「え?なんですか?」
null「人々は『祝福の天使』を崇拝していたというデータはアベンドのDDの残滓、『祝福』という文字から推測できるけど……」
null「『しあわせさまが降臨、人類を笑顔した』というDD以外で『しあわせさま』に関する情報がないんだよ」
ウミ「確かに……」
ウミは相槌をする。
ソラ「『小規模汚染』のDDや『ばいばい病』への対策の『飴(キャンディスペース)』などは確かに情報でありましたけど……『しあわせさま』は見たことないです……ね」
nullは頷きながら言う。
null「だから『しあわせさま』=『祝福の天使』という説はまだ早い気がする」
ソラ、ウミ「…………」
全員が思考状態に入る……がウミが周りをキョロキョロし始める。
ウミ「とりあえず、生存優先だ……出口……」
ウミはふと後ろを振り向いた。
深淵の中、遠くに黒い影の女性が佇んでいる。
ウミ「……クソ!null!またいる!!」
nullは目視するが……。
null「いないよ」
ウミ「なんでだよ!!?いるだろ!?」
ソラ「暗闇だけですけど……」
ソラも認識していない。
ウミ「…………」
もうウミは例の女を無視するつもりでいた。
……しかし。
もう一度確認した際、明らかに近い距離で影の女は立っていた。
ウミはめまいと吐き気に襲われる。そして一瞬、目を離した瞬間。
女は彼の目と鼻の先まで近づいていた。
ウミ「あ゙あ゙あ゙あ゙っっー!!!」
ザクッ!!
彼は本能的に剣を振るい女を貫く……が。
そこにいたのはフリルとリボンが装飾された白いワンピース服、ロリィタ服の少女……の衣装が真っ赤に染まった光景だった。
ウミ「……ソラ……?」
剣を握り、相手を本気で殺す気で放った行為が……ソラに……彼女に……。
彼女を貫いてしまった。
episode26
END
