episode23『1つに』

episode23
『1つに』

[part1]

炎の竜巻と氷の吹雪が舞う地獄絵図のような街を歩き続けるソラとウミ。逃げ惑う人々、既に手遅れになった人や様々だ。

ウミ「ソラ!アイツを追う手がかりとかあるか!?」

ソラ「(カメラで街の光景を撮影)……黒いノイズがこっちの方角のほうが濃いです!!」

ウミ「……つまり?」

ソラ「……います。彼女達が……」

ウミはため息をした。

ウミ「nullは……いないのか!?」

ソラ「恐らく、ナギ君の所に……」

ウミ「行くっかないか……」

2人は覚悟を決めてノイズ方面に進む。



しばらくノイズを追うとビル街の道路中央に空間の歪みを発見する。

ソラ「これ、もしかして『固有空間』……ですか?」

ウミ「だろうな」

2人は躊躇なく、歪みの中に入っていった。


[part2]

漆黒の空間。ソラとウミはお互いの居場所を確認する。問題なさそうだ。

ソラ「奥に写真が見えます……」

2人は暗闇の先に写真が地面に落ちていた。ウミは写真を拾う。

ウミ「家族の写真……双子だ!」

水色に近い白髪ロングの幼い双子と笑顔の両親が写っている写真だ。

直後、2人は幻聴が聞こえ始める。


DD
『リミとフセ』
有害型、音声ファイル
・リミとフセの悲鳴。母親の声。電流の音。

母親「我慢しなさい。耐えなさい。これは必要不可欠」

リミは泣きながら許しを乞う。フセも絶叫。

母親「お互いが共感すれは……あなた達は救済者になれる」


・別のシーンの音声。

リミが嗚咽をしている。フセの絶叫が聞こえる。

フセ「フセ(一人称)のことは……!!……いい!!リミ……!!……あああ!!姉さん!!……逃げろ!!」

父親「『て』」

ザクッ!!

フセの悲鳴。そしてリミへの痛みの共鳴。双子の父親がお経を唱えながら呟く。

父親「リミ……『初めて』を行いなさい。順番通りに……その子を救いなさい」

リミ「嫌……!!舞ちゃんを……!!嫌ァ!!」

少女「…………リミちゃん」

舞ちゃんと言われた子はリミの友達であろうか。

父親「……『あ』」

ザクッ!!

フセへの拷問の痛みがリミにも共有される。

フセ「姉さん……!!……フセ(一人称)を置いて……逃げろ!!」

父親「『か』」

ザクッ!!

再びフセの絶叫。

リミ「やめて……ください!!やめて!!」

父親「『は』」

リミ「やめてぇぇ!!!」

リミは泣き叫びながら舞ちゃんに刃物(鉈)を下ろした。

『て』、『あ』、『か』、『は』、『む』、『し』。
儀式の順番通りに振り下ろす。

父親「おめでとう。これで君達(リミ、フセ)は救済者になる」


・次の音声

フセ「何人目……だ?」

リミ「2人で20人……です」

フセ「そうか……」

リミ「フセ……?」

フセ「?」

リミ「この能力がありますから……1つになりましょう」

フセはためらいもなく返事した。

フセ「ああ」





リミ「やっと『1つ』になれた」

フセ「これからも一緒……だ」


・最後は音声ではなく家族写真だ。リミとフセの瞳が『赤と青のオッドアイ』になっている。両親の顔は×印がついていた






ウミ「ゲホッ!ゲホッ!ゲホッ!!」

ウミは思わず吐き気をもよおす。

ソラはあまりの凄惨な光景を知り、言葉を失ってしまった。

ソラ「オッドアイ……って」

ソラは震えながら続ける。

ソラ「そういう……こと……?」

ソラ達が立ち尽くしていると、暗闇が晴れて夕日が照らされる白い花畑の光景が広がる。



ウミ「ここか……」

ウミがそう呟いている最中にソラは駆け出した。

ウミ「ソラ!」

ウミもソラのあとを追う。

ソラは一通り走ると立ち止まった。

美しい白い花畑の地平線の先に……彼女らはいた。

ソラ「……」



青いアリス服をモチーフにしたドレスのリミ、それと同じく赤いドレスのフセ。髪は水色に近い白髪。目は青と赤のオッドアイ。双方は青色と赤色のナイフを右手に所持している。



双子。リミとフセ……。お互いが心中をしてロスト後、アベンドに成れ果てた……バグ。



風がソラや双子のドレスをなびかせる。お互いは口を開かない。ただ、夕日と花畑が不自然に美しい。



ウミ「よぉ」


双子は答えない。変わりにソラから口を開く。


ソラ「先程はありがとうございました……」


双子「…………」


ソラ「もう……戦いは終わったんです……あなた達の苦しみは……」


双子はナイフを構える。


ソラも……ウミと……武器を構えた。


ソラ「安らかに……眠って……ください」


ソラ「バグフィックス……開始」




[part3]

双子の1人、リミが青いナイフを振りかざすと地面から氷の塊が次々と生成!!フィールドに氷の壁を造られる!!ソラとウミの機動力を大きく削ぐ。

ウミ「クソ!邪魔な氷だ!!」

ウミはリミをめがけて鋭い突きを行う!!しかしリミは半身になり攻撃を躱す!!ウミの突進は氷の壁まで突き刺したが壁にキズが入らない!!

ウミ「ウソだろ!?」

刹那!炎をまとった赤いナイフを持つフセがウミの背面から斬りかかる!!

ガキン!!

瞬時に剣とナイフの鍔迫り合いになる!

ウミ「ソラ!リミを狙え!!俺がタゲを取る!!」

ソラは頷き、リミへカメラを構える!!しかし、リミは氷の塊を生成しながら次々と自らが氷に跳躍してソラに接近!!空中にいるリミをソラがカメラで捉える!!

ソラ「今なら!!」

ウミ「ソラ!囲まれてる!?」

ソラはウミの発言で周囲を気づく。2m程の氷の無数の剣がソラの周辺に生成され、ソラに襲いかかる!!

ソラはカメラを片手に持ちながら氷の剣に対して撮影!!剣の事象を打ち消す!!その刹那、空中のリミはナイフを地面に突き刺す!!ソラはリミから距離を取る!!

花が咲くように無数な氷の棘が地面から円状に広がっていく!!ソラは服がかする程度に被弾!

なんとか、怪我を抑えたが突如大爆発を起こした。

ウミと鍔迫り合いをしていたフセが赤いナイフに念を込めてウミを振り切ったのだ。ナイフに10m程の炎がまとい、地面に叩きつけていた!!

ウミは先予測で感知して空中へ跳躍し回避。ソラは爆発範囲が広すぎる為、カメラで攻撃を打ち消しながらフセに特攻!

直撃は免れたが爆発の破片が肩と脇腹を掠めて赤く染まる!!ソラは痛みに堪える仕草すらせずにフセに接近!撮影する!!

カシャ!!

ファインダーに覗かずに撮影!!がしかし、被写体にフセは写っていない!!

ソラ「がはぁ!!」

撮影寸前にリミが無数の氷の槍をソラに振り注ぎ、全身に槍が突き刺さったからだ。激しい吐血をするソラ。

ウミ「クソッ!!」

ウミが叫び、すぐに駆け寄る!!双子の勢いは更に加速する!

リミが怯んでいるソラに獲物を刈り取るかの如く、ソラの胸部を貫こうとする!!と同時にフセは瞬時にウミに赤いナイフを首に投擲!

ウミは特異能力の未来予測でナイフを躱しながら剣を振りかざし、リミに衝撃波を繰り広げる!!

ザシュ!!

リミに直撃!!胴体から大量の血が溢れる……が全く怯みもせずソラにナイフを突き刺す!!

ウミ「!!?」

ソラはリミの青いナイフを素手で掴む。手のひらが血に染まっていく!!

ソラ「ウミ君!!フセさんを!!」

ウミはフセをロックオン!!フセは……真上だ!!既に新たなナイフを生成して炎の竜巻を白い花畑に放つ!!

ドゴォォォォォン!!!

竜巻は地形全てを焼き払うかの如く、暴れ狂う!!

ウミ「おい!巻き添えかよ!!?」

ウミはソラに近づけずに、吹き飛ばされた!

炎を切り裂きながら受け身を取るウミ!

ウミ「ソラッ!!!」




爆心地の中にソラとリミは立ち尽くしている。お互い硬直状態だが、やけどはない。ウミは目を細めて確認するとリミが氷のシールドを展開したようだ。

ウミ「へ……命はまだ欲しいか……」


ソラはリミから離れてウミと合流。

ウミ「おい!怪我は!?」

ソラ「はぁ……はぁ……少しずつ再生してます!服も戻るのは助かりますね……」

ウミ「そんなこと言ってる場合か!!」

リミとフセ……双子も同様、お互いが合流。ウミは状況を確認する。


ウミ「痛点もねーのかよ……コイツら……しかも連携が完璧だ」

ソラ「null君がいれば……」

ウミは剣を握りしめる。

ウミ「いねーんだからしょうがない!」

ソラもカメラを両手で強く持ち続ける。

……動いたのはリミだ。

青いナイフに力を込めると全ての花畑が凍り始めて、凍てついた吹雪を降らせる。フセは固有空間全てに無数の炎の竜巻を展開!!

ウミ「氷河期と熱波か……!地球も終わりだな!」

あまり時間は無い。この双方の地形攻撃により、ソラ達は自身の体力が消耗することは目に見えていた。

リミは大量の氷の塊、フセは10mの炎をまとったナイフをソラ達に襲いかかる!

ウミ「(剣で事象を消しながら)クソが!!キリがねェ!!」

ソラも撮影で身を守るが中々近づけない……が。



『初めてを行いなさい。順番通りに……その子を救いなさい』



ソラ「!?」

ソラに聞こえたのは男の声。双子、彼女達を悲劇へと突き進めた元凶。

ソラ「トラウマ……双子の……」


ソラは葛藤をしつつも苦肉の策を思いついた。


ソラ「可哀想ですけど……アレしかないです……」

ウミ「なんだ!!?」

ソラ「……無理矢理、身を削りながら一点集中を狙います!!」

ウミ「なんで片方だ!?」

ソラとウミは双子に接近しながら話す。

ソラ「彼女達は感覚共有を持ってます。つまり痛点が少ないだけで……恐らく痛みは共有していると思うんです!!」

ソラは苦い表情を浮かべる。

ソラ「……フセさんを狙いましょう。部位は……」

ソラは敢えて口に表さず、自分の体で指した。

ウミ「……ああ、わかった!!」



ソラとウミは双子の猛攻をかい潜る!まずソラの撮影!!

シャッターを切ると同時にフセは跳躍で回避を行うが回避先にウミが斬撃を与える!!

フセが襲われる中、リミの行動は……攻撃だ。

ソラやウミの周囲をピンポイントで凍らせる!!ウミは跳躍中なので氷を回避できたがソラは身動きを失った。

ソラ「ウミ君!!」

ソラはウミに攻撃を託す。ウミはフセの体を剣で突き刺す!

ザクッ!!!

フセ「あぁぁぁぁ!!!」

フセの叫び声と共にリミの動きが止まる!

ソラ「お願いします!!!」

ウミは歯を食いしばりながらソラの指示に従う!!

リミ「あぁぁぁぁ!!」

リミは感覚共有の弊害か、泣き叫んでいた。

フセの赤いドレス服が濃い赤色にみるみる染まり、大量の吐血をする!

ソラはその光景に目を背けたながら呟く。

ソラ「……『し』です」

ウミ「…………」



ウミは無慈悲の一撃をフセに与えた。



そもそもアベンドだからこの程度の傷は本来ならば致命にはならないはずだった。

しかし、大量の鮮血を流してフセは仰向けに倒れる。

ウミ「はぁ……はぁ」

ソラ「…………フセさん……」


リミはよたよたと歩きながら……フセに駆け寄る。

リミ「…………」

フセ「…………」


リミは泣きながらフセを抱きしめる。

ソラとウミは双子をじっと見つめていた。

そしてリミはフセを抱えて……歩き始めた。



ウミ「どこに行くんだ……?」



双子が向かったのは花畑の果てにある深淵の闇。ソラ達もソレを確認できた。

ソラ「……!!」



ソラは双子を追いかけようとする。しかし、ウミが引き止めた。

ウミが首を横に振る。

ソラ「…………」

ソラは無言だったが、ウミの意志を尊重した。



双子の足は止まらず……ゆっくりと……深淵に飲み込まれていった。



ソラとウミはしばらく沈黙する。世界に吹雪と炎は無くなり、夕日と白い花畑に戻っていた。

ウミが口を開いた。

ウミ「フセへの攻撃の順番……そういうこと……だよな?」

ソラは俯いて返事をした。

ソラ「すみません……」

ウミは静かにソラを慰める。

ウミ「誰も……悪くねーよ」

ソラは俯いたままだ。

固有空間は徐々に霞んでいき、やがて暗闇になる。そして聞こえてきたのは……セミの鳴き声。

ウミ「やっと……帰ってきた」

ソラ「そうですね」

ソラ達の視界に入ったのは民宿の子供部屋とnull、ナギであった。




episode23
END
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