episode15-1『バグフィックス』

episode15-1
『バグフィックス』


[part1]

null「人類が……滅亡……」

recefia「…………」

null「降臨による弊害は?」

recefia「全てを笑顔……つまり、激しい精神汚染による魂の崩壊よ」

null「降臨してからどれぐらいの月日で?」

recefia「……数秒」

nullは黙り込む。

null「DDSのアベンドが飽和状態の原因はこれ?」

recefiaは頷く。nullは更にレセフィアに問う。

null「『しあわせさま』の現在は?」

recefia「不明」

null「…………」

null「今まで助けた迷い人達(サヤ、双子以外)の行方は?」

recefiaは首を横に振る。

null「…………」

さすがのnullも言葉を失う。まるで解決策が浮かばないのだ。




recefia「null」

nullはrecefiaに顔を向ける。

recefia「2つ……選択肢があるわ……1つはソラ、ウミを搾取、酷使させて光を作る方法……もう1つは……」



recefia「彼らが希望を抱いたまま彼らを処分する方法……」



nullは答えない。recefiaの話を聞いている。



recefia「前者を選択するなら……その詳細を教える……最悪の被害を抑えたいなら後者……どちらか選んで?」



nullはずっと黙ったままだ。



recefia「あなたならロジカルの方法を選ぶはず……」



null「…………」


null「……はぁ」


深い、ため息。そして。



null「……………………僕にそんな善意があると思う?」



recefiaは眉をひそめる。

recefia「つまり……?」

null「前者」

recefiaはため息をする。

recefia「この世界の存続には向かないけど……それでも地獄を選ぶのね……」

null「訂正はしないよ」



recefia「……わかったわ」



recefiaは諦めがついたように返事をした。




recefia「DDSに存在する大量のDDを集めて……なるべく大量に。ソラやウミが崩壊しない状態を維持して」

null「理由は?」

recefia「『収集したDDを現世に返還…………現世を再建させる』」

null「……再建?」

recefia「DDの記憶同士を繋ぎ合わせて……人類を復元させるのよ」

null「……あー『テセウスの船』ってやつね」

recefia「この計画は彼らのアベンド化のリスクが跳ね上がるわ。だからこれは最善で最悪の計画ということを忘れないで」

null「了解」


[part2]

null、ソラ、ウミはソラの部屋に集結させる。

マサトは別室で待機させた。

null「これからの話は機密情報になる。大丈夫だと思うけど絶対にマサトなどの迷い人に共有しないで」

ウミ「なんだよ……急に」

ウミはベッドに腰掛けて足を組む。ソラは椅子に座っている。



null「まず結論。君達が確実に現世に帰還できる方法が見つかった」

ソラ「え!?」

ウミ「本当か!!?」

null「それと同時に君達にとって最大の障害かつ不都合な事実も明らかになった」

ソラ、ウミは首を傾げる。nullは落ち着いたトーンで話す。

null「最優先事項……限りなく大量にDDを集めること」

ウミ「は?なんで?『しあわせさま』の情報収集か?」

null「その大量のDDを現世に返還させる」

ソラ「返還?なんでですか?」

nullは続ける。

null「現世は極めて異常状態に満ちている。それをDDを使って修復させるんだ。そうじゃないと君達を安全に帰還させられない」

ウミ「おいおい……今、現世どうなってるんだよ?」

null「…………」



nullは深呼吸をしてから口を開いた。




null「現世は『しあわせさま』の降臨によって崩壊……滅亡した」





ソラとウミの表情が変わる。


ソラ「……え」


null「『しあわせさま』の精神汚染によって人類が滅亡……その弊害がDDSに情報がパージされ、アベンドが飽和してるんだ。これが証拠」


DD『ライブカメラ』を見せる。


ソラ「この黒い物体……人……ですよね?」

2人は食いつくように画面を確認する。

ウミ「……嘘……だよ……な?」

nullは目を瞑り、首を横に振る。

null「嘘じゃない……そんなことしない……」

ソラとウミは呼吸が荒くなる。nullはいつも以上に深刻に話す。

null「慌てなくていい。泣いても……叫んでも……いい。感情が落ち着くまで……休んでもいい……そのかわり、僕を信じて……必ず君達を帰還させる」

nullはソラとウミに頭を下げる。



nullは一筋縄ではいかないことはわかっていた。だが現実はあまりに非情で過酷な状況であった。




ウミは感情が追いつないまま、nullの胸元を掴む。

ウミ「何言ってんだよ……!ふざけんじゃねぇぞ!!?親も……友人も……現世で野垂れ死んじまっただと!?」

ウミは怒鳴りちらす。

ソラ「ウミ君……」



null「ごめん……伝えるか迷ったけど……嘘はつきたくなかった」

ウミ「だったら!だったら俺はどうすればいいんだよ!?このクソみたいな現実をどう受け止めろってんだよ!?」

ウミは怒りを抑えきれず、殴ろうとした。しかし、ウミは自身の手を見つめて考える。

ウミ「くっそ!騒いでも……じっとしても!オメーの言う事守っても……何一つ良くなってねぇじゃねぇーか!!」

nullは黙り続ける。返す言葉も思いつかない。

ウミ「迷い人達を帰した所で死ぬしかないだなんて……!」

ウミは今まで堪えていた感情が溢れかえしまった。既に顔がぐしゃぐしゃになって……限界を迎える。



ウミ「だったら、みんな……死ぬしか……ねぇよ……!」



今まで聞いたことのない声でその場で崩れ落ちて……嗚咽をする。

その空気に飲まれてもうこの世の終わりのような表情を迎え、放心するソラ。15歳の子供達に真実を知らせるには残酷という言葉ですら収まらない。



ソラ「もう……サヤさん達も……誰も……救えない……もう……何もかも……」



null「酷かもしれないけど……僕達ができることは……DDを集めて滅んだ人類を復元させる……それしか」

ウミ「てめぇの指示に従っても変わらねーじゃねぇか!!?またか!?また俺らを……利用するのか……!!?」

nullは目を閉じた。

null「……そうだね」

nullは続ける。

null「そしたら僕がなんとかする。君達は……もう働かなくていい……コーヒーを飲んでゆっくり……」



するとウミは泣き叫びながら話を遮る。

ウミ「もうやらなくていい!!?コーヒーでも飲んでろ!!?ふざけんなよ!?」


ウミは何度も床を叩きつける。



ウミ「……結局、俺らは……どうすることもなく苦しむだけなんだ!!」

ウミ「結局、お前の言う事に従うしか……ないんだ!!」


null「……そうだね」


ウミは床に這いつくばる。重すぎる現実を受け入れることができない。それはソラも同様だった。彼女はずっと俯いたままだ。




ジリリリリリ!!




室内の固定電話が鳴り響く。nullは手に取る。

null「recefia……?」

recefia「……草原エリアに高濃度のグリッチ因子を確認。喫茶店には近づいていないけど……ソラ、ウミを連れて確認して?」

null「彼らはすぐにでも休ましたほうがいいと思うけど……」

recefia「DDSの理を乱すほどのグリッチ因子を持つアベンドよ……?」

null「僕1人でも平気じゃないの?」

recefia「…………」

recefiaはどこか濁しているようだ。

nullはソラとウミに視界を向ける。時が止まったように彼らは静まっている。

null「なら様子だけ見てく。それなら単独でもいいでしょ?」

recefiaの沈黙は続くがやがて返答をした。

recefia「わかったわ」



[part3]

『深度1・虹と草原エリア(夜)』

nullは1人でライトを照らしながら問題のエリアへ向かった。その場所は空間が激しく歪み、ノイズが発生している。

null「この中に固有空間があるね」

nullは空間に溢れるノイズを解析する。非常に濃度の高いグリッチ因子を観測。

null「なんだろうね。今までのデータでも類を見ないぐらい……」

nullは地平線が続く草原と夜空を眺める。風が穏やかで少し冷たい空気。

null「ん?」

地平線に人影を見つける。こちらに近づいている。暗がりで視界が悪いがライトを照らすと……人が歩いていた。


null「……ソラ、ウミ?」



クラシカルロリィタ服の少女と着崩れした学生服の少年がnullを見つめて近づく。

null「君達……」

nullは思考がまだ定まっていない。

null「……なんで?来たの?」

ウミは暗い表情をしながら口を開く。

ウミ「マサトがよ……急かしてきてよ」

null「マサト?」

ウミ「『あのロングの子んとこ行かないスか?』って……」

null「…………」

ウミは続ける。

ウミ「『なんつーか、俺ェよくわかんねースけど……今、生きてるのはアイツのおかげっスよ?コーヒーもうめぇ飯もタダで食えるし』ってさ……」

null「…………」

ウミ「それでマサトがお前を追いかけようとしたから止めてよ……結局、ソラと俺が来た」

ソラもこくりと頷く。

ソラ「本当は……今すぐ……休みたいです……でも……『今回』は逃げちゃダメなんです……」 

ソラはスマホを取り出し、画面を見せる。メールの画面だ。



『君達を待ってる……
深淵を覗くリーダーより』



null「これは……」

ソラ「出所が不明のメールです……わかりません……でも、きっと……」

ウミは頭を掻く。

ウミ「もしよ……そうなら……終わらせないといけねぇ……」

nullは少しだけ目線を逸らす。

null「ま、来るからには手伝って」

ウミ「まったく、スカし野郎がよ……」

3人はノイズが溢れる歪んだ空間に入り込む。



episode15-2へ続く
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