episode14『幸せ』

episode14
『幸せ』


[part1]

『深度1・夜景が見える高台エリア』

エレベーターのドアが開く。外はかなり高度が高く、オレンジ色の宝石のような夜景が一望できた。

null「エモーショナルだね」

マサト「すっげー!ちょーいいじゃん!デートスポットにしようぜ!?」

ウミ「彼女作ったらな」

ウミは軽く流す。ソラも思わず夜景を撮影する。

ソラ「夜景よく撮ってました……あれ景色がブレて大変なんですよ〜?三脚必須です」

ウミ「ん?ソラって三脚使うの?」

ソラ「使いません(きっぱり)。重いので」

nullは夜景を見下ろすように見る。

null「えーと……現世だと、夜景は残業の象徴だったらしいよ」

ウミ「そりゃそーだ。日本って残業大国だからな!あー働きたくねー」

マサト「…………そうっスね」

マサトは少し遅く反応する。

マサト「まー金無いと世の中なんもできないっスよ〜?」

ウミ「そりゃそーだけどよ……」

ソラ「なんか……罪悪感が……」

マサト「ソラちゃんってさー実家太いの〜?」

ソラ「え?あ……はい……」

マサト「マジかー。えー?就職しなくてもいいぐらい?」

ソラ「…………うーん、かもしれないです」

ウミ「え?マジで?すげーな……」

ソラは少し慌てた素振りをする。

ソラ「でも!働き……ます……よ?たぶん……」

マサト「えーいいじゃん。遊んで暮らせばいいっスよ〜?」

ソラ「でも……迷惑に……」

マサト「人生やり直しきかないんだから〜好きにすればいいっスよ〜」

とここでnullの発言が。

null「遊んで暮らすのはこの世界を脱出してからね」

マサト「うぃーす」

デートスポットのような高台を歩く一行。不思議と異変も起きてない。

マサト「えーマジいーじゃん!ここ!なんか店とかないスかねぇ」

ウミ「呑気すぎだろ……」

マサト「楽しまないとスよ〜?そこの無口のロング君も〜」

null「僕のこと?」

マサト「そうそうー。えー趣味とかあんのー?」

null「趣味?僕には意味がない行為だね」

マサト「マジィ?なんか好きなコトは〜?」

null「コーヒー」

マサト「コーヒーいいっスね〜!あ!タイプの彼女は!?」

null「いらない」

マサト「彼女作ったほうがいいっスよ〜!」

ウミ「はぁ……テンション高いな……」



話はウミの学校の話に。

マサト「ウミ学校行けよー?将来苦労すっぞー?」

ウミ「うっ……急にガチになるなよ」

マサト「俺ェ大学行くって決めてるからー」

ウミ「大学ねぇ……メリットとかは?」

マサト「遊ぶんスよ〜」

ウミ「遊んでばっかだな……」

するとマサトは夜景を覗きながら語る。

マサト「真面目に生きてたら損するっスよ?」

null「ウミは不真面目だよ?」

ウミ「うるせぇよ……もう」

マサトはポケットに手をつっこむ。

マサト「俺、思うスよ……良い大学入って良い会社行って、結婚して家持ってさ……そんなコト……俺らの世代じゃもうできねーのかなぁってふと考えるんスよ……」

ソラ「…………」

マサトは続ける。

マサト「だから楽しんだモノ勝ちじゃね?この世の中ってわけ……」

nullは淡々と言葉を放つ。

null「随分短絡的な思考だね。あまりロジカルとは言わない」

ウミは夜空を見上げる。

ウミ「どうだろうな……」



一行はベンチに腰をかける。マサトはソラに質問をする。

マサト「ソラちゃんってさーなんで女の子好きなの?男嫌いなの?」

ソラは悩みながら答える。

ソラ「恋愛という発想より推しなんです……自分が女性や男性と恋愛するのは解釈違いだと思っていますので……」

マサト「アレっスか?自己肯定感低いっスってコト?」

ソラ「そ、そうです」

マサト「そんな気にしなくていいっスよ?みんな自分で精一杯なんスから〜」

ソラ「うーん」

マサト「今、15っしょ?社会人になる前に恋愛したほうがいいっスよ〜?」

ソラ「う、うーん」

ウミ「まあ、人それぞれだろ……」

するとnullが辺りを見渡す。

null「そろそろ、休憩は終わりだね……奴らが寄ってきた」

ウミは目つきが鋭くなる。

ウミ「やっぱり来たか……」

人型の黒い影がぞろぞろと迫ってくる。顔は笑っている。

マサト「(バットを持ちながら)なんか、大人しいっスよ?」

null「君のグリッチ因子のおかげだね」

マサト「あのー何とかやり過ごせたりできないっスか?」

ウミ「俺も前はそう考えてたけど、しょうがねーよ……生きるためにはな」

ウミも剣を構える。ソラも同様、カメラを持つ。


ロマンチックな夜景を背後に4人は怪物達に応戦する。


先手はマサトのフルスイング。黒い影のアベンドに強打、吹っ飛ばす!やはりグリッチ因子の効果は絶大だ。しかし、四方八方アベンドに囲まれる。

null「動きがのろいね……今の内にどんどん排除していこう」

nullは拳銃を持ち出し次々と発砲。バタバタと倒れる影。次にウミが飛びかかり、薙ぎ払うような斬撃を繰り広げ、怯んだ隙にソラが撮影してトドメを刺す。

ソラ「ベストショット……!」

ウミは跳躍、アベンドの頭上を蹴って影達の背後に回る。アベンドはウミに気を取られる。

ウミ「今だ!」

マサト「おりゃぁ!!」

数体まとめてフルスイング!アベンドは夜景の彼方へ飛んでいく。

null「アベンド、増援……」

nullの言う通り、人型の影のアベンドが数体出現!全員銃を所持してる!

パンパンパン!!

一斉射撃!nullはナイフで弾き、ウミは跳躍、ソラは寸前で半身になり、回避!マサトは……。

マサト「あ!いっで!」

脇腹を負傷……。

null「再生するから我慢してね」

マサト「鬼畜っス……」

ソラ「マサトさん!後は任してください!」

ソラは念じてカメラのレンズを望遠レンズに切り替え、アベンドの顔をピンポイントで捉えて撮影!マサトも負けじと攻防する。

マサト「こっちの世界のほうが痛くないっスね……まだいけるスよ!」

ウミ「協力助かる!やる気ない奴いるからな!」

null「それ僕のこと?」

nullはため息をする。そして敵の銃を弾いて瞬間移動でナイフで刺しこむ。マサトからすればnullの行動は高速どころではない。例えると0秒解体だ。

全員が一致団結し、アベンド達を蹴散らす。

マサト「(なんつーか……)」

マサト「(こっちの方が俺ェ、充実してるかも……)」

マサトは不思議と顔が緩んだ。

夜景を死守し、勝利へと導いたのは……喫茶店メンバー含む、マサトの方だった。


マサト「俺ェ……幸せっすかね……」



その発言は戦いに夢中で誰も聞いていなかった。



最後のアベンドが消滅。nullは全員に問う。

null「どうする?一旦帰る?それとも探索続行?」

マサト「ラーメン食いてぇ」

ウミ「マイペース……」

ソラ「そろそろ帰りましょうか?」

null「んじゃあ帰るよ」

nullはグリッチ因子で転移能力を使う。


[part2]

喫茶店『Point nemo』に戻る一行。

辺りは既に真っ暗で店の照明だけ煌びやかに光っていた。マサトはすぐに店で注文、フードメニューを食べまくる。

ウミ「そういえば現世って物価高ヤバかったな……」

マサト「そうなんスよ!バイト代なんかソッコー消えるんでぇ〜」

ソラ「……お、お金の話題は気まずいです」

ウミ「気にすんな……昔の話だ」

するとrecefiaがnullを呼び出す。

recefia「null、ちょっと」

null「ん?」

nullはrecefiaに招かれる。

null「みんな、適当にご飯でも食べてて」

ウミ「どした?」

null「多分、説教」

ウミ「お、おう……ドンマイ」



recefiaと共に厨房へ。そして通路にあるハッチを開けて地下へ進む。

null「そわそわ……するね」

recefia「いいから……」



地下室に入る。薄暗くやや不気味だ。

null「ケーキでもくれるの?」

recefiaはため息をする。

recefia「DD、破損データを復元した『しあわせさま』の情報……それを更に解析して……ここまで辿り着いた……けど」

null「けど?」

recefia「そのDDから更にDDが発掘できたわ」

null「よかったね」

recefia「……これを見て」


DD
『ライブカメラ』
思念型、動画ファイル
・リアルタイムの映像
・時代は20xx年
・日本の繁栄した都市が映る
・かなり引きのカメラ
・黒い物体が点々と、大量に映っている。物体は動いていない




null「これ、まさに今の現世だよね?『しあわせさま』が降臨後、全てが笑顔になったらしいけど……新興宗教でも始めたのかな?」


recefiaはDDを解析……更にライブカメラをズームする。



recefia「物体……動いてないわ」



null「…………」

nullは目を細める。

recefia「『しあわせさま』が全ての元凶と予測したけど……当たりどころの話じゃないわ」

null「……この物体……別のライブカメラは?」

recefiaはDDを弄り、別の定点カメラにする。

null「物体……物体……物体……どのカメラにも」

recefiaは厳しい表情になる。



recefia「結論を述べるわ……」



recefia「『しあわせさま』降臨で……人類は滅亡した」
 



episode14
END
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