episode9『個』
episode9
『個』
[part1]
店内に全員が集合した。
recefia「話しても記憶を取り戻せないみたいね……」
喫茶店『Point nemo』の店主recefiaはグラスを拭きながら呟いた。
リミ「そうですね……あなた達との交流では現状は変わりませんでした」
フセ「そうだ……ならアベンド共を蹴散らしたほうが……ましだ」
フセは赤いナイフをくるくると回す。
null「エモーショナルだね。戦えば戦う程君達もアベンド に向かうんだから……もっと自分を大切にしたら?」
フセ「うるさい……」
ソラ「私はなるべくリミさんとフセさんをこの場所に留めたいのですが……」
ウミ「recefia。こいつらの監視をできないのか?」
recefiaは目を閉じる。
recefia「忠告はするけど、無理矢理はできないわ」
ウミ「なんでだよ?」
nullがウミに近づく。
null「recefiaはこの店の空間を維持するリソースで精一杯だから。店を失っても困るでしょ?主に僕が」
ウミは頭を掻く。
ウミ「なんかいい方法ねーの?」
recefia「ウミ……1つ助言をするなら、『グリッチ因子耐性のない迷い人はこの店に滞在しても侵食は止まらないわ』」
ソラ「え?」
recefia「グリッチ因子を使用、もしくはDDSに滞在すればどう足掻いても侵食する。なら記憶を取り戻して速やかに現世に帰還させるしか方法はない」
ソラ「そんな……」
nullが言葉を付け加える。
null「むしろ、この店でアベンドになるなら即出禁にするけど?」
ウミ「なら、お前は出禁だな……」
null「僕は良いんだよ。僕、最強だから」
ウミ「はいはい」
リミは席から立ち上がる。
リミ「行きましょう。このままでは状況は悪くなる一方です」
フセ「リミの言う通りだ……」
recefiaはnullに指示する。
recefia「引き続きDDを回収して、『しあわせさま』関連、ソラ達や双子の情報収集を特にね」
null「あのー僕の出生については後回しなの?」
recefia「後回しよ」
null「ロジカルだねぇ。嫌いじゃないよ」
そう言いつつ、nullはどこか不機嫌そうだ。
[part2]
『深度1・夜のショッピングモールエリア』
比較的大きな商業施設だ。所々吹き抜けがあり、開放感を感じる。テナントはチェーン店が多く、飲食、衣服、本、雑貨、スーパー、その他医療機関など大方揃っている。
null、ソラ、ウミ、リミ、フセの5人でこの世界を探索する。
ウミ「明かりはついてるな」
ソラ「でもやっぱり人はいませんね」
null「万引きしないでね?」
ウミ「不良じゃねーんだよ!」
リミとフセは特に感想はなく黙々と先へ進んでいく。
ソラ「(パシャ)撮らないと……」
ウミ「思い出残しか?……まあ、いいけどよ」
ウミはサヤの件を思い出す。
null「ショッピング……開始」
5人が向かった場所は本屋だ。
ウミ「DDあるかもしれねぇ場所はここだろ」
リミとフセは何の躊躇もなく、本を漁り始める。
リミ「フセ、それ絵本です」
フセ「は?……だから?」
リミ「別に……」
リミは少し笑みを浮かべる。
ウミ「お前らーこの本屋から出るなよ?」
リミは頷く。
null「奥の通路に黒いノイズがあるね。DDかな?」
nullは近づいてノイズを吸収する。
DD
『うしろをむいて』
伝承型、音声ファイル
・現世で広がった都市伝説の1つ。何か違和感を感じた時に後ろを向くと幸福がやってくるという伝え
null「(解析して)……だって。ウミ?うしろをむいたら?」
ウミ「ヤダよ」
ソラは振り向こうとするがウミが慌てて止める。
ウミ「おいおい!電車で懲りただろ!!?」
ソラ「すみません……つい……」
null「後ろばっか向いてたらふつーに前の人とぶつかるからね。やめてね」
ウミはDDに内容について考える。
ウミ「なんだろうな……単に人が創った偶像か?」
null「だろうね。DDなんてハズレばっかだよ?……いや、訂正。こういった何気ないモノも存在しているんだ」
ウミ「お?珍しく配慮したな?」
null「流石に僕も学習するよ」
絵本に夢中になるフセとそれを微笑むリミを観察するソラ。
ソラ「あーいいですねぇ」
その発言にウミが介入する。
ウミ「双子 も、グリッチ因子が無ければただの人だったんだろうな」
ソラ「そう思うと……なにかくるものがあります」
null「僕は現世の事は情報でしか知らないからふつーのコトってよくわからないんだよね」
ウミ「まあ、nullはアベンドだからな……正直お前が思うより現世は面白くねー所だよ……いや、DDS も別に楽しくねーか……」
DD以外の本はこれと言って役に立ちそうにない。
ソラ「リミさん、フセさん……次、行きますよ?」
双子は無言で従う……と思えばまた勝手に行動してしまう。行き場所は服屋だ。ウミはため息をする。
ウミ「こいつら話聞かねーな……」
喫茶店メンバー達(null、ソラ、ウミ)は双子の後を追う。
すると……。
ソラ「ここ!IWじゃないですか!?」
ウミ「IW?」
ソラ「ロリィタ服ブランドで有名な所ですよ!?私もこのブランドで一式買ってもらいました」
ウミ「ほー。じゃあ今着ているのも?」
ソラ「そうですよ!IW。私は白のクラシカルロリィタファッション、限定品ですね」
ウミ「いくらぐらいした?」
ソラ「え?……あ……色々含めて……20万」
ウミ「はぁぁぁ!!?」
ウミは頭を抱えた……その最中にも双子は服を吟味し始めた。
フセ「これ、フセ(一人称)と同じ服の……ブランドだ……リミも」
ソラ「えぇっっ!!?」
ソラの目がますます輝く。
ソラ「お揃いです!お揃い!リミさん、フセさんは多分アリス服モデルですよね!?」
フセ「知らない……」
リミ「服は買ってもらったモノなのでよくわかりません……」
nullは奥を見つめる。
null「話脱線しまくってるけど奥にDDあるよ?」
ウミ「そうだぞ?ちょっとは緊張しろ」
nullは再びDDを回収する。
DD
『服屋』
忘却型、動画ファイル
・母親と少女がロリィタファッションの店に入って服を選んでいるシーン
・シーンが切り替わり、母親と父親がカフェでコーヒーを啜る
母親「代々厳しかったからねぇ……『やっとよ』……」
ソラ「これ……」
ソラは沈黙。
ウミ「これお前じゃないよな?」
ソラ「写っている人……違います」
ウミ「いやさ、わかってるけど……」
ソラ「…………」
null「ソラのDDじゃないことは間違いないね……だからソラは気にする必要ないんじゃない?」
ウミ「……ソラ、憶測で語るのはデマ流すネットの奴らと変わらんぞ?」
ソラ「そうです……よね」
その他、飲食店やフードコート等を調べ終えるが収穫はなさそうだ。
フセ「…………」
フセは常に赤いナイフを手にして強く握っている。誰かを傷つけたくてしょうがないようだ。
リミ「不満……ですか?」
フセ「ああ……」
ウミ「(小声で)あいつの血の気はどっから来たんだよ……」
null「さあね。案外、何かのメタファーとか?」
ウミ「なんの?」
null「さぁ?」
ウミ「ふーむ。そう言えばお前もアベンドだから破壊願望とかあるの?」
null「ないよ。ただバグやエラーを修正しているだけ。でも僕自体が存在しているだけで有害だからいろいろ困る」
ウミ「ん?存在してるだけ?」
null「あ……いつもの虚言癖だったね……忘れて」
ウミ「?」
nullは遠い目をする。
『回想』
喫茶店『Point nemo』のカウンターでコーヒーをすすり、recefiaと対面しているnull。
null『ソラ、ウミ を保護してからスリープ状態に陥った。これは僕が力を使うことやただ存在するだけで世界が異常状態 になる事象を力で抑え込んでいるからだと思う』
recefia『彼らの見えない所で努力しているじゃない』
null『……居なかったら僕はもっとのびのび生きれるよ……』
nullはスティックシュガーをドバドバかけてコーヒーをすする。
null『僕自身を抑制してまで彼らを守り、帰還させる価値がある?』
recefia『ロジカルじゃない……って言いたいわけ?』
null『…………』
recefia『まず一番危惧しているのは彼らのアベンド化』
null『アベンド化?グリッチ因子耐性なら問題ないよね?』
recefia『でも可能性はゼロじゃないわ。アベンドになるには侵食だけじゃない。精神が正常に保てず、心を失うことも条件なの』
nullは黙って聞いている。
recefia『彼らのような異常な存在は化け物になれば極めて脅威になる。逆に言えば適切な処置を行えば有力な人材でもあるの』
null『……僕が彼らのメンタルケアをする理由もその適切な処置ってやつ?』
recefiaは表情を変えない。
recefia『そう』
nullはrecefiaをじっと見つめる。
null『彼らを無事に帰すんだよね?それが役割だよね?でも君は彼らを何かに利用しようとしている。俗っぽく言えば彼らをヒーローにしようとしている。そうしないと何か君に不都合なことでもあるの?』
recefia『null、何がいいたいの?』
null『…………』
recefiaは後ろを向く。
recefia『あなたはただ意味が欲しい、意義が欲しい……価値が欲しい……自分が自分でありたいだけ……そうじゃないと……保てないからでしょ?』
null『……そう……って言ったらどうする?』
recefia『なら、私の指示に従うことが……ロジカルな行動じゃないかしら?』
null『そうだね……』
回想終わり
ショッピングモールのゲームセンターコーナーに入る。クレーンゲームや子供向けゲームが主のようだ。機械は稼働している。
ウミ「フセ……ゲームとかはやったことあるか?」
フセ「いや……ない」
ウミ「おいマジか……」
リミ「親が……厳しい家庭でして……」
ウミはクレーンゲームを見ながら話す。
ウミ「何か遊んだことはあるだろ?」
リミは淡々と話す。
リミ「ピアノはやってました」
ウミ「そりゃ稽古だ。もっと趣味的なヤツよ」
フセ「そんなことより……リミと一緒にいれば……いい」
リミ「私も……そう思います」
双子は手を繋ぐ。
ソラは双子の尊さに見惚れながらとあるクレーンゲームに留まる。
ソラ「包装された飴……ですね」
ウミ「飴か……好きなのか?」
ソラ「いえ……でも何か見たことがあるような……」
nullがクレーンゲームの窓を覗く。
null「カラフルかつポップでファンシーなキャンディ……1クレジット、100円。このご時世では良心的な価格だね」
リミとフセの反応は薄い。
フセ「何……ジロジロ……飴見てる……?」
ソラ「何かこの飴……引っかかるんですよ」
ウミ「俺もそうだな」
nullは山積みになった飴を見つめる。覗いているとこのまま吸い込まれてしまいそうだ。
null「ソラ、ウミ……この辺りは空間が歪んでるね……そろそろ離れたほうが……」
nullが最後まで言う前にソラとウミは飴玉の海に吸われるように取り込まれる!!
null「!?」
nullは手を差し伸べるが時遅し、彼もまた取り込まれた!!
episode9
END
『個』
[part1]
店内に全員が集合した。
recefia「話しても記憶を取り戻せないみたいね……」
喫茶店『Point nemo』の店主recefiaはグラスを拭きながら呟いた。
リミ「そうですね……あなた達との交流では現状は変わりませんでした」
フセ「そうだ……ならアベンド共を蹴散らしたほうが……ましだ」
フセは赤いナイフをくるくると回す。
null「エモーショナルだね。戦えば戦う程君達も
フセ「うるさい……」
ソラ「私はなるべくリミさんとフセさんをこの場所に留めたいのですが……」
ウミ「recefia。こいつらの監視をできないのか?」
recefiaは目を閉じる。
recefia「忠告はするけど、無理矢理はできないわ」
ウミ「なんでだよ?」
nullがウミに近づく。
null「recefiaはこの店の空間を維持するリソースで精一杯だから。店を失っても困るでしょ?主に僕が」
ウミは頭を掻く。
ウミ「なんかいい方法ねーの?」
recefia「ウミ……1つ助言をするなら、『グリッチ因子耐性のない迷い人はこの店に滞在しても侵食は止まらないわ』」
ソラ「え?」
recefia「グリッチ因子を使用、もしくはDDSに滞在すればどう足掻いても侵食する。なら記憶を取り戻して速やかに現世に帰還させるしか方法はない」
ソラ「そんな……」
nullが言葉を付け加える。
null「むしろ、この店でアベンドになるなら即出禁にするけど?」
ウミ「なら、お前は出禁だな……」
null「僕は良いんだよ。僕、最強だから」
ウミ「はいはい」
リミは席から立ち上がる。
リミ「行きましょう。このままでは状況は悪くなる一方です」
フセ「リミの言う通りだ……」
recefiaはnullに指示する。
recefia「引き続きDDを回収して、『しあわせさま』関連、ソラ達や双子の情報収集を特にね」
null「あのー僕の出生については後回しなの?」
recefia「後回しよ」
null「ロジカルだねぇ。嫌いじゃないよ」
そう言いつつ、nullはどこか不機嫌そうだ。
[part2]
『深度1・夜のショッピングモールエリア』
比較的大きな商業施設だ。所々吹き抜けがあり、開放感を感じる。テナントはチェーン店が多く、飲食、衣服、本、雑貨、スーパー、その他医療機関など大方揃っている。
null、ソラ、ウミ、リミ、フセの5人でこの世界を探索する。
ウミ「明かりはついてるな」
ソラ「でもやっぱり人はいませんね」
null「万引きしないでね?」
ウミ「不良じゃねーんだよ!」
リミとフセは特に感想はなく黙々と先へ進んでいく。
ソラ「(パシャ)撮らないと……」
ウミ「思い出残しか?……まあ、いいけどよ」
ウミはサヤの件を思い出す。
null「ショッピング……開始」
5人が向かった場所は本屋だ。
ウミ「DDあるかもしれねぇ場所はここだろ」
リミとフセは何の躊躇もなく、本を漁り始める。
リミ「フセ、それ絵本です」
フセ「は?……だから?」
リミ「別に……」
リミは少し笑みを浮かべる。
ウミ「お前らーこの本屋から出るなよ?」
リミは頷く。
null「奥の通路に黒いノイズがあるね。DDかな?」
nullは近づいてノイズを吸収する。
DD
『うしろをむいて』
伝承型、音声ファイル
・現世で広がった都市伝説の1つ。何か違和感を感じた時に後ろを向くと幸福がやってくるという伝え
null「(解析して)……だって。ウミ?うしろをむいたら?」
ウミ「ヤダよ」
ソラは振り向こうとするがウミが慌てて止める。
ウミ「おいおい!電車で懲りただろ!!?」
ソラ「すみません……つい……」
null「後ろばっか向いてたらふつーに前の人とぶつかるからね。やめてね」
ウミはDDに内容について考える。
ウミ「なんだろうな……単に人が創った偶像か?」
null「だろうね。DDなんてハズレばっかだよ?……いや、訂正。こういった何気ないモノも存在しているんだ」
ウミ「お?珍しく配慮したな?」
null「流石に僕も学習するよ」
絵本に夢中になるフセとそれを微笑むリミを観察するソラ。
ソラ「あーいいですねぇ」
その発言にウミが介入する。
ウミ「
ソラ「そう思うと……なにかくるものがあります」
null「僕は現世の事は情報でしか知らないからふつーのコトってよくわからないんだよね」
ウミ「まあ、nullはアベンドだからな……正直お前が思うより現世は面白くねー所だよ……いや、
DD以外の本はこれと言って役に立ちそうにない。
ソラ「リミさん、フセさん……次、行きますよ?」
双子は無言で従う……と思えばまた勝手に行動してしまう。行き場所は服屋だ。ウミはため息をする。
ウミ「こいつら話聞かねーな……」
喫茶店メンバー達(null、ソラ、ウミ)は双子の後を追う。
すると……。
ソラ「ここ!IWじゃないですか!?」
ウミ「IW?」
ソラ「ロリィタ服ブランドで有名な所ですよ!?私もこのブランドで一式買ってもらいました」
ウミ「ほー。じゃあ今着ているのも?」
ソラ「そうですよ!IW。私は白のクラシカルロリィタファッション、限定品ですね」
ウミ「いくらぐらいした?」
ソラ「え?……あ……色々含めて……20万」
ウミ「はぁぁぁ!!?」
ウミは頭を抱えた……その最中にも双子は服を吟味し始めた。
フセ「これ、フセ(一人称)と同じ服の……ブランドだ……リミも」
ソラ「えぇっっ!!?」
ソラの目がますます輝く。
ソラ「お揃いです!お揃い!リミさん、フセさんは多分アリス服モデルですよね!?」
フセ「知らない……」
リミ「服は買ってもらったモノなのでよくわかりません……」
nullは奥を見つめる。
null「話脱線しまくってるけど奥にDDあるよ?」
ウミ「そうだぞ?ちょっとは緊張しろ」
nullは再びDDを回収する。
DD
『服屋』
忘却型、動画ファイル
・母親と少女がロリィタファッションの店に入って服を選んでいるシーン
・シーンが切り替わり、母親と父親がカフェでコーヒーを啜る
母親「代々厳しかったからねぇ……『やっとよ』……」
ソラ「これ……」
ソラは沈黙。
ウミ「これお前じゃないよな?」
ソラ「写っている人……違います」
ウミ「いやさ、わかってるけど……」
ソラ「…………」
null「ソラのDDじゃないことは間違いないね……だからソラは気にする必要ないんじゃない?」
ウミ「……ソラ、憶測で語るのはデマ流すネットの奴らと変わらんぞ?」
ソラ「そうです……よね」
その他、飲食店やフードコート等を調べ終えるが収穫はなさそうだ。
フセ「…………」
フセは常に赤いナイフを手にして強く握っている。誰かを傷つけたくてしょうがないようだ。
リミ「不満……ですか?」
フセ「ああ……」
ウミ「(小声で)あいつの血の気はどっから来たんだよ……」
null「さあね。案外、何かのメタファーとか?」
ウミ「なんの?」
null「さぁ?」
ウミ「ふーむ。そう言えばお前もアベンドだから破壊願望とかあるの?」
null「ないよ。ただバグやエラーを修正しているだけ。でも僕自体が存在しているだけで有害だからいろいろ困る」
ウミ「ん?存在してるだけ?」
null「あ……いつもの虚言癖だったね……忘れて」
ウミ「?」
nullは遠い目をする。
『回想』
喫茶店『Point nemo』のカウンターでコーヒーをすすり、recefiaと対面しているnull。
null『
recefia『彼らの見えない所で努力しているじゃない』
null『……居なかったら僕はもっとのびのび生きれるよ……』
nullはスティックシュガーをドバドバかけてコーヒーをすする。
null『僕自身を抑制してまで彼らを守り、帰還させる価値がある?』
recefia『ロジカルじゃない……って言いたいわけ?』
null『…………』
recefia『まず一番危惧しているのは彼らのアベンド化』
null『アベンド化?グリッチ因子耐性なら問題ないよね?』
recefia『でも可能性はゼロじゃないわ。アベンドになるには侵食だけじゃない。精神が正常に保てず、心を失うことも条件なの』
nullは黙って聞いている。
recefia『彼らのような異常な存在は化け物になれば極めて脅威になる。逆に言えば適切な処置を行えば有力な人材でもあるの』
null『……僕が彼らのメンタルケアをする理由もその適切な処置ってやつ?』
recefiaは表情を変えない。
recefia『そう』
nullはrecefiaをじっと見つめる。
null『彼らを無事に帰すんだよね?それが役割だよね?でも君は彼らを何かに利用しようとしている。俗っぽく言えば彼らをヒーローにしようとしている。そうしないと何か君に不都合なことでもあるの?』
recefia『null、何がいいたいの?』
null『…………』
recefiaは後ろを向く。
recefia『あなたはただ意味が欲しい、意義が欲しい……価値が欲しい……自分が自分でありたいだけ……そうじゃないと……保てないからでしょ?』
null『……そう……って言ったらどうする?』
recefia『なら、私の指示に従うことが……ロジカルな行動じゃないかしら?』
null『そうだね……』
回想終わり
ショッピングモールのゲームセンターコーナーに入る。クレーンゲームや子供向けゲームが主のようだ。機械は稼働している。
ウミ「フセ……ゲームとかはやったことあるか?」
フセ「いや……ない」
ウミ「おいマジか……」
リミ「親が……厳しい家庭でして……」
ウミはクレーンゲームを見ながら話す。
ウミ「何か遊んだことはあるだろ?」
リミは淡々と話す。
リミ「ピアノはやってました」
ウミ「そりゃ稽古だ。もっと趣味的なヤツよ」
フセ「そんなことより……リミと一緒にいれば……いい」
リミ「私も……そう思います」
双子は手を繋ぐ。
ソラは双子の尊さに見惚れながらとあるクレーンゲームに留まる。
ソラ「包装された飴……ですね」
ウミ「飴か……好きなのか?」
ソラ「いえ……でも何か見たことがあるような……」
nullがクレーンゲームの窓を覗く。
null「カラフルかつポップでファンシーなキャンディ……1クレジット、100円。このご時世では良心的な価格だね」
リミとフセの反応は薄い。
フセ「何……ジロジロ……飴見てる……?」
ソラ「何かこの飴……引っかかるんですよ」
ウミ「俺もそうだな」
nullは山積みになった飴を見つめる。覗いているとこのまま吸い込まれてしまいそうだ。
null「ソラ、ウミ……この辺りは空間が歪んでるね……そろそろ離れたほうが……」
nullが最後まで言う前にソラとウミは飴玉の海に吸われるように取り込まれる!!
null「!?」
nullは手を差し伸べるが時遅し、彼もまた取り込まれた!!
episode9
END
