7つのお題
プツン、プツン、と音がする。
ゾロが爪を切る音は、パチン、パチンではなく。
プツン、プツン、だ。
少しでも伸びたら切ってしまうから、ああいう音になる。
ルフィは冷たい扉に背中の熱をわけ与えられるほど、それに凭れ込みながら、黙ってその音を聞いていた。
あれは反則だよな。ずりぃよ絶対ずりぃ。
ゾロはずるい。
顔はまだ熱いままだ。ゾロが反則するからだ。
…プツン……。コト。
あ、終わったらしい。
……さて、と。どんな顔して戻ろうか。
とりあえず、ゾロの笑った顔が見てェんだけど。
***
ゾロが爪きりを始めた。最近になって、ルフィはゾロのそういう場面をよく見るようになった。
ゾロの横顔を、頬杖をついてルフィは眺めてみる。
どの角度から見てもゾロの顔は格好いい。
うっかりするとみとれてしまう、どうしようもない。救いようがない。
うん、まあ、好きだからな。
ルフィに向けない時のゾロの顔は殆ど笑っていない。
そんな顔もイイんだけど、ゾロの笑った顔が見たい。
ゾロは爪きりの最中だけれど、ルフィは彼に話し掛けてみることにした。
「ゾロって最近マメに爪切るよな」
「まあな」
「なんで?」
けれどもゾロは、こちらをチラとも見ることはなく、
「傷付けちまうからな」
と言った。
「ふうん……」
プツン、プツン。
「で、なにを?」
「………」
あ、その顔は「なんでそんなこともわかんねェんだ」って顔だろ。
せっかくこっち見たのに、ちっとも笑ってねェじゃんか。
それから。
ぼそっとゾロは続けた。
「…そんなもん」
ルフィが理解するのに10秒は要するような難解を、さも優しい問題であるだろう、とでも言うように。
「お前ん中に決まってんじゃねェか」
「………」
プツン、プツン……。ゾロの視線はまた爪先へ。
10秒後。
ルフィはカーッと赤くなった顔が恥ずかしくて恥ずかしくて、更に真っ赤になってしまいそうで。
部屋からバタバタ飛び出したのだ。
***
「終わったぜ、ルフィ」
扉の向こうから声。
そうっとルフィは扉を開け、そうっとゾロの顔を見る。
笑顔が見えた。
ルフィに向けている時のゾロの顔は殆ど、笑っている。
「ゾロ」
「おう」
「…大好きかも」
「愛してるって言え」
やっぱり部屋には入らず、扉を閉めた。
***
反則だ……あんなのは反則だ。やっぱりゾロはずるい。
ルフィは自分の爪を見た。
それは伸びている部類に入るのではないだろうか。
ゾロの肩甲骨の引っ掻き傷を思い、ただちに戻って爪を切ろうと決心した。
愛してるって、言ってから。
(END)
ただのバカップル;