幼馴染二人の20題
ゾロの部屋。
パジャマ姿のルフィは、ゾロと共に布団に潜り込みながら、同じくパジャマ姿の幼馴染みに抱きついていった。
「おいルフィ、お前の布団あっちだろ。せっかく敷いてやったのに」
「堅いこと言うな。久しぶりに泊まりにきたんだし、一緒に寝ようぜ!」
「隣の布団でも一緒に寝ることには変わりねェだろうがよ!」
「えー」
「えーじゃねェ」
「うむむ……。ゾロ、抱き心地悪くなったなァ」
「当たり前だ。おれのボディは鋼の筋肉で覆われている」
澄まして言うゾロに、ルフィはくははっと笑った。ぜんぜん嘘ではないのだけれど、そんなことを言いながら、ゾロが無理やりルフィを追い出したりすることはない。
金曜の夜。
試験勉強と称してルフィは久々にゾロの家へお泊りにやって来た。
ゾロの部屋は二部屋分になっていたので、今までの部屋を寝室にして、元姉の部屋を勉強したりテレビを見たりする部屋にしていた。ちなみに和室なので畳敷き。それをさし引いてもゾロは畳が好きらしく、ベッドも置いたことがない。
だからだろうか、ゾロがルフィの部屋に泊まりに来たとき必ずベッドから落っこちる。ルフィの家でも二人は一緒に寝ることが多かった。
原因は、言わずもがなルフィだ。ルフィが「ゾロと一緒に寝たい」とだだを捏ねるから。それにゾロが慣れただけの話し。
しかし、高校生にもなって同じ布団ってのはどうよ、とゾロは思ったらしく、抵抗を試みた経緯が先のやり取りである。
「お前はあんまし変わんねェなァ」
「? なにが?」
「抱き心地。つーか、前よりフィットしたような……」
ゾロがルフィの細い肩をすっぽり両腕に抱いて、ぎゅうっと力を篭めてくる。ゾロの堅い胸板がルフィの顔を圧迫する。
「うぎゅ~。ゾロあんまギューギューすんな」
「あ、悪ィ……。苦しかったか?」
「んーにゃ。ゾロにくっつかれるとおれすぐ眠たくなっちまうんだもんよー」
「これから寝るんだからいいだろ」
「ダメだ! もーちっと話しするんだ!」
「四六時中一緒にいんのに夜もなんか話しすんのか?」
ゾロがちょっと呆れた。
さっそくゾロの瞼はふわふわ重たくなってきているようだ。
ゾロはの○太くんなのだ。自分は瞬間の○太だけれども。
「あ! そーいや思い出さねェ?」
「はー?」
「確かおれが初めてゾロんち泊まりにきたときだよなァ」
「……!!!」
「小3? こうやってくっついて寝てたら、朝、」
「て、てめェ、それ以上言うなよ」
「おれのパジャマまでびっちょりで、」
「その昔話しはするなって言ってんだろ!!」
「そりゃもう巨大な地図がっ」
「ルーフィ~~~っ!!!」
「キャー」
首を絞められているのにルフィは万歳しながら笑った。ゾロが本気でルフィに暴力を奮ったのはもう随分前、一度きりだ。あの決着もつけたいなーと関係ないことを考えながら、ルフィは久々のゾロの言い訳をニマニマ笑顔で聞いてやる。
「だいたい、あれはお前のせいだろうが。寝る前にジュース早飲み競争だ!なんつってガバガバ飲ませやがって! てめーの胃袋に対抗したおれがバカだったぜ……。おかげでおれは、おれは……っ」
青くなるゾロなんてここ数年見てなかった気がする。たいへん気分がよろしい。
ゾロは「〝アレ〟は1年ぶりだったしそれ以降は一回もなかったんだぞ」という弁明をこんこんとルフィに聞かせてきたが、もう何度も聞いていたルフィは「わかってるって」と頷いてやった。
「クソ、早く寝ろバカルフィ。そして忘れろバカルフィ」
「2回もバカって言ったからヤダ」
「ギューギューすんぞ!」
「イ・ヤ・ダ!!」
言ってもぎゅうぎゅう抱きしめてきたゾロの腕の中、ルフィはぬくぬく懐にもぐりこみながら、「おやすみなさい」と大きな目を閉じた。
(おわり)