幼馴染二人の20題

「付き合ってるんですか?」



「はい?」
ゾロとルフィがハモった。
今、二人は、三階旧校舎と新校舎の間の渡り廊下の真ん中で、女子生徒二人の前に立たされている。と言っても、説教されているわけではない。
同時に呼び出されたのだ。
てことは告白じゃねェよな、とゾロはすぐ気付いてルフィに言ったのだが、ルフィは心なし浮き足立っていた。
「だから、二人は付き合ってるんですか?」
「付き合ってるって、お前……。ハァ……」
「付き合ってるってどういう意味だ?」
あからさまにため息をつくゾロに対し、ルフィの言葉はおそらく真剣に解らないから出た問いだ。
「あの~、だから……。ロロノア君とルフィ君って、恋人同士なのかなって」
「へ!?」
いかな恋愛に疎いルフィでも、〝恋人〟という単語くらいは知っていたようでホッとする。いやそんな場合ではない。
この疑問をただ否定するのは簡単だが、どうしてそんな極論に達したのかを聞いて手を打たなければ、同じことの繰り返しになりかねないのだ。
隣で「んじゃ違うぞー」と軽~く流したルフィに内心ゾロは嘆息しつつ、
「お前ら、何組の奴か知らねェけど、全くの誤解だし、何でそんな疑いを持つことになったのか説明してくれねェか」
「あ、それはね、だって……ね?」
「ね?」
女の子二人が目を見合わせ、ちょっと頬を染める。
なんだ。何なんだその反応。
「ちっ、ハッキリ言えよ」
ゾロが切れ長の眼でぎろり一瞥すれば、二人は竦みあがった。
「こらゾロ、おどかすな。でもおれも知りてェなー! なんで!?」
ルフィの歯に衣着せぬ物言いと笑顔のためか、女の子達から緊張が解けた。
「だってルフィ君、しょっちゅうロロノア君にベタベタしてくじゃん!!」
「ロロノア君もぜんぜんイヤがんないじゃん!!」
「それと私の友達の友達がね……」
それはすでに赤の他人だろ、という言葉をゾロはのみ込み、
「友達がなんだって?」
「うん、ルフィ君が、ロロノア君にキスしてるとこ見たって~!!」
「ねっ、超有名だよねーっ!」

結構な衝撃を受けた。

「なんかわかんねェけど、誤解、解けたよな?」
「まぁ多分。『幼馴染みなんてそんなもんだ』って説明で納得してくれればだが」
「してくれっかなァ」
「じゃあどう説明しろと? 恋人関係以外、全部事実なのに……」
順に、ルフィ、ゾロの発言である。
「だーいじょぶだって! でもおれ、ゾロと疑われるんなら別にいいけども」
教室へ戻る途中、廊下でルフィがそんなことをさらっと言ってくださった。
「てめっ、また誰かに聞かれでもしたらどうすんだバカ!」
「ごごごめんなさい! やっぱゾロの言った通り告白じゃなかったもんなァ……」
「今どっちを謝ったんだ!?」
「ぅへ!?」
「それと!!」
「はいっ!!」
「もうフザけてキスしてくんなよ……」
ここは小声で。耳元に。そういえば、高校入学してからだと思うのだが、二人で歩いてるとやたら女子の視線が絡んでくるような気はしていた。勘違いじゃなかったか……。
「え~~だってさー」
「だって何だよっ」
「なんか嬉しいことあると、昔っからゾロにチューってしたくなんだよな、おれ!!」
どーん。
「だ、だからそう言うことをデカイ声で……!!」

何人かが振り返り、親しい女子に呼び止められて「あんたら付き合ってんだって!?」とまた詮索され、再び「幼馴染みなんて~」の説明をする羽目になる二人なのだが、当分この話題に振り回されるだろうことをゾロは悟り、深いため息をつくのだった。
で、ルフィはというと。
「あ、でもお前ら! おれがゾロにチューしたの、ほっぺただからな!?」
余計なことを言って、ゾロに盛大にどつかれた。




(おわり)
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