新世界不文律

町の路地裏にある宿屋の一室。
ルフィは部屋へ入るなりベッドに押し倒され、さっそくするすると衣服を剥ぎ取られていく。
「ゾロはいっつもこれだよなー」
「なにがこれなんだよ」
悪態を吐くのは押し倒した本人、海軍大佐ロロノア・ゾロ。海賊ルフィの恋人だ。
海軍と海賊の許されない関係。
こんな関係を続けてもう結構の月日が経つ。
「ベッドの無駄遣いだ~」
「意味がわからん」
毎度、ゾロはツインの部屋を借りるのだが、主に使うのは片方だけ。そのシングルベッドも二人で横たわって添い寝~とかは全くない。
ちゃんと寝れば長身のゾロだって裕に余る長さがあるのに、それすら面倒とばかりに横向きのベッドへそのままルフィを突き飛ばし、仰向けに転がされたが最後ゾロはルフィだけすっぽんぽんにして自分は一切その真っ白い制服を脱ぐことなく、事に及ぶのだ。ずっとそのスタイルは変わらない。
唯一、肩に羽織っただけのコートはコート掛けに放り投げるが……緊急時に備えてその屈強な体を見せてくれることは滅多になかった。
「また休暇取ってくれよ~。おれの誕生日のときみたいにさ!」
あの日だけは夢のような時間だった。いま思い出しても顔がニヨニヨしてしまう。
「贅沢を言うな。勤務時間だ」
「その勤務時間にえっちするくせに偉そうに……」
さっそくキスを落としてくるゾロの首にルフィは掴まるも、その手を剥がされシーツに縫い付けられた。
執拗なキスはルフィをすぐにぼうっとしてしまって、ブチブチ言うのをやめてしまうのが常だけれど、今日はゾロに絶対言いたいことがひとつだけあったのだ。
「ん……はぁ、なぁ、ゾロぉ」
「嫌だ」
「まだなんも言ってねェ!」
素肌をするすると這う大きな掌にピクリとルフィは反応を示しつつも、
「おれの仲間になれってずーっと言ってんだろ!!」
たまーに、ゾロがくれた電伝虫でこっそり話しをするとき再三勧誘していた。だけどゾロの返事は決まって、
「だから嫌だっつってんだろうが!」
「もう……」
ルフィはゾロを自分の仲間に引き入れたいのだ、ど~~しても!
麦わらの一味は少数精鋭だが、その戦闘力は自慢できると船長のルフィは思っている。ルーキーの中でも最悪の世代と呼ばれる大海賊、若干18歳にしてルフィの首には3億もの懸賞金が掛けられていた。
にもかかわらず、そのルフィにはいまだ右腕と呼べる仲間がいない。ぽかりと空いたような喪失感は日に日に強くなる一方……。こうしてゾロに会うたび、それを埋めるのはゾロ以外にいないと思うようになっているのに。
「ゾロは立派な海賊になれると思うんだよおれ」
「悪党に立派もクソもあるか」
「海軍よか強ェ剣士いっぱいいるぞ……?」
ゾロの剣士心をくすぐってみる。
「色々しがらみがあんだよ、これでも……」
「どんな?」
「お前、聖地マリージョアの五老星って知ってるか?」
「知らん」
「もういい……」
「えー!?」
「んなこたいいから、お前は大人しく抱かれてりゃいいんだよ」
「ゾロの目的って……」
好きな人に会いたいから、とかじゃ絶対ねェだろおめェ~!?
ちゅっちゅっと濡れた音がルフィの肌の上をいくつも奏でる。
ゾロに抱かれるのはそりゃあ好きだけれど、ルフィはもっともっと「好き」を確かめる方法はあると思うわけで。
「あ、あっ、あっん!」
だけど拓かれていく若い体は男に与えられる快感に従順で、みるみる身体中をピンクに染め、一部分には変化をもたらし始めた。
「相変わらずきれいな肌してんなァ、ルフィ?」
「んあ、や……っ」
くわえられ、出さされて。
真っ赤な顔であふあふ言うカッコ悪い姿をまじまじ見られて。
理性を繋ぎ止めるすべを一所懸命ルフィは模索するけれど、この隻眼の剣士の前ではどうにもうまくいかないから腹立たしいのだった。
「ゾロ、は、おれんこと捕まえるのなんか、ほんとは簡単だな」
悔し紛れの悪態。
「抱いたら捕まえてやるよ」
「あのなァ! バカ!!」
しょくむたいまんだしょっけんらんようだー!
と、いっつもルフィはそうなじるがゾロはどこ吹く風、ルフィの中をぐちぐちトロトロに解かした後は、容赦なくその剛直を押し込んできた。
「いっ、あ、あああっ!」
せいぜい数週間か一ヶ月に一度のセックス。男のルフィが男を受け入れるのだからこの瞬間だけはどうしても痛いし辛い。
だけどゾロはルフィのイイところを熟知しているので、そんな苦痛はほんの少しだけだった。
「クッ……今日は一段と絞まってんじゃねェか」
「だっから、そういうこと、言うなっ。仲間んなれ!!」
「どさくさに紛れて勧誘すんな!」
「おれは……ハァ……ゾロを、仲間にするって決めたんだ。ぜってー諦めねェから……! あ、あんっ」
ギシ、ギシ、ギシ、と古いスプリングが嫌な音を立てる。
このままゾロを連れて帰りたい。
おれのもんにしたい。
ずーっと傍にいてほしいのに……。
「ルフィ……好きだ、ルフィ……」
「ん、おれもっ、ゾロ、んんん!」
またイきそう……。気持ちよすぎて困る。
ギンギンに張り詰めたゾロの硬くて大きいのに掻き回され抉られたら、ルフィのモノはビクビク震えて透明の滴を漏らし続けるのだ。
あ~……もう今日はダメだ……。
と、頭も視界も真っ白になりそうだった、そのときである。

プルプルプルプル、プルプル──

「……ゾロ、電伝虫」
「う、なんだよこんなときに」
ピタリ、ゾロの腰が止まった。ルフィむっすぅ……。
以前は無線用の小型電伝虫を持ってきていたゾロだけど、勝手に喋ってうるさいからと持って来なくなった。
「けどあんまり状況変わってねェじゃん」
ゾロがスラックスのポッケから取り出した電伝虫を、ガッチャ、
「ロロノアだ」
出るんかよー!とルフィはツッコミたかったがお口はチャック。まだ入ったままだけど(!)いつどこで何をしていても(えっちしてても!?)連絡を取れるようにしておくのは海軍の掟の一つらしくて。
けど、毎度毎度ひっでェよなー!?

『ロロノア大佐! 目撃情報が入りましたよ! またあなたは勝手にどこにいるんです!?』
お、いつもの女の人の声だ。なんかゾロ苦手っぽいんだよな~この女のこと。
でも……。
「どこって……」
『町で麦わらのルフィを見かけたとの情報です! 部下なしで一人だったとか!』
「あー、ああ、そうか……了解」
『ちょっとホントに解ってますか!?』
「了解っつったろうが!」
「なんっか仲良さそうで引っ掛かるっつーか……。あ、本命だったりして?」
ぼそぼそ、ルフィがぼやいたらゾロのでっかい手に口を塞がれた。
ムガムガ! ぺっぺっ!
ゾロの手を振りほどいて疑惑の目で睨んでみる。なのにゾロのやつ、こっち見てもねェし!?
しかし海軍にバレていたとは。指針の一番揺れている島へ入港したのに。
おれ、仲間に内緒で飛び出してきちゃったんだよな……。帰ったらまたこっぴどく叱られるんだろうなァ……(ちょっと現実に戻って遠い目)。
『6番ストリートにいますから急行願います! あ、やっぱり私が迎えにいきます! 今どこですか!?』
「ここへ来るのか? やめた方がいいと思うが」
『は? フザけてます?』
「フザけてねェ! ……こういう状況だからだ」
言って、ゾロが不意にガツン、と腰を突いたのだ。もちろんルフィの中を。しかも感じるところを!
思わずルフィは「あんっ」と濡れた声を上げてしまい、咄嗟に口を手で塞いだが、もちろん遅い……。
『な、え? ちょ……勤務中に何を?』
「想像通りだが?」
『わ、わざわざ声なんか聞かせて……! セクハラですからね!? スモーカーさんに言いつけますからっ!!』
「待てそれは、」
ぶち、と通話は一方的に切られた。
はぁああ、とゾロが嘆息する。ゾロにも怒られると怖い人がいるのかもしれない。
「ゾロさいてーだ」
「お前との時間邪魔されんのがおれァ一番ムカつくんだよ、悪ィか?」
「開き直った!? でも嬉しいなァ……そう言ってくれんの」
「とりあえず今のことは忘れてろ」
「しゃあねェな~ゾロはァ。ほんっとおれ好き好きなんだもんな~~」
「わかってんじゃねェか」
ニヤリ、悪い笑みのゾロ。くっそうカッチョいい。
否定しなかったゾロにもルフィは大満足で、その後は邪魔が入ることもなく、思う存分ゾロに抱かれたのだった。


「はぁ~~ちっかれたー」
裸の体を横たえたまま、ルフィは久々の激しいセックスにくたくたになっていた。
それがいけなかったのだとも、また仕方なかったのだとも思う。
手を掴まれ、ぐいっと引っ張り起こされて、
「お前、海賊船は?」
「ちゃーんと見つからねェ場所に隠してあるぞ? もう帰れって!?」
抱いたら早々に要済みか、こんにゃろー! とか、ルフィがガッカリしていたところへ。
──ガチャン、ガチャン!
「んっ? んん!?」
「お望み通り捕まえてやったぜ?」
「へ……? はぁ!?」
両手首にしっかり手錠が掛けられていたのである。
ゾロはちゃっかり身支度済みで、ルフィの腹をつれつれ拭いてくれている。それはいいのだが、ほっぺにチューもいいのだが、この手錠は何プレイなんだァ!?
「この手錠って、まさか……」
「もちろん海楼石だ。能力者のお前はこれでおれには手も足も出せねェ」
「はにゃあ~……」
そう言われると体中の力が抜けてきた。ゾロに凭れ込んでいく。
ゾロはばさりとルフィの頭から自分のコートを被せると、
「ご同行願います」
「おれフリチンです……」
「しゃあねェなァ、ズボンだけ履かせてやるか」
「いやいやいや」
ゾロが半ジーパンと草履だけ履かせてくれた。本気なんだろうか、とルフィがまだ半信半疑でいると、じいっと瞳を合わせてきた。
「本当に簡単に捕まえられたなァ、麦わらのルフィ?」
「え、マジで……? 本気で連れてくんか?」
「そうだが?」
「ゾロ……」
裏切られた、と思った。
捕まったことなんかどうでもよくて、ルフィはゾロに裏切られたのだと思うと胸が痛くて、息が苦しくて、目頭が急激に熱くなって……。
「ふえっ……ひっく、ゾロのアホォ」
「こら泣くな」
ゾロの両手がルフィのぼたぼた溢れる涙を拭う。
「うえぇ~~ん! だっで~~!」
捕まったらもうゾロに会えなくなるかもしれない。確か凶悪な罪人は海底の牢獄に閉じ込められると聞いたことがある。
ゾロに会えない……もう抱き合うことができなくなる……それが一番辛いから。
「とにかく泣くな。ほら、泣き止めよ」
れろん、とゾロがルフィの目元を舐めてくる。ちゅ、ちゅ、とキスも混ぜつつ、優しく何度も。
そんなので泣き止んでしまう自分は本当にこの男のことが好きなんだなァ、と実感してしまうけれど。
アホはおれだなァ……。
「ひっく……」
「よし、もう涙は出てねェな?」
コクン、頷く。
最後にゾロが念入りにルフィの左頬を擦るので不思議に思ったけれど、ルフィが首を傾げているとルフィの宝物である麦わら帽子をしっかりと手渡してくれた。
そして、ひょいとルフィを肩に担ぎ上げたのだ。
「ゾロ!? ほんっとーに連れてく気か!?」
「さっきそう言ったろ?」
「待て待て! 連れて行きたかったのはおれの方で……ちょ、このっ……ろくでなしィィ~~!!」
ルフィの訴えはただただ虚しく、古ぼけた宿屋に響いたのだった。


どうしてこうなったのだろう。
仲間に連絡を取ったゾロは、なぜか同じところをぐるぐる回っているところを女海兵に取っ捕まった。
ゾロと同じ階級章を左腕につけた、真っ白い制服の黒渕メガネ女で、真面目そうな人。例の仲良く(?)言い合っていた声の持ち主だった。
「たしぎ」
「ロロノア大佐……! ま、まさかその肩に担いでるのは、」
「ここは人目につく。場所を変えるぞ」
「はい……」
人を一人、海軍幹部が担いでいるのだ、好奇の目はどうしても集まってくる。
部下を幾人か従えたたしぎに彼らも下がらせるように言い、建物裏の廃材置き場を見つけて無断侵入すると、ゾロはそこへルフィをどかっと下ろした。
倉庫の中は薄暗いが、互いの顔くらいははっきりと見える。
「容疑者、海賊″麦わらのルフィ″とおぼしき人物を連行してきた」
「その顔はやはり……! でもどこで!?」
「そこは問題じゃねェ。おれが訊問したところ、残念ながら偽物のようなんだ。とんだガセだったなァ、麦わらの海賊船がこの島に上陸したとの情報は」
「はい!?」
ルフィとたしぎがハモった。
「おい偽物は黙ってろ」
ぼか、とゾロに頭をどつかれた。どうやら余計なことは言うなって合図らしい。
「いてて……」
いかな鈍いルフィでも、ぼんや~り話が見えてきた……。
ゾロはルフィを、いやルフィの一味を、こっそり追跡してきた海軍から逃がそうとしてくれているのだ。
だから都合よくこの島でゾロに会えたわけで。
「証拠は? 彼のこの成りはなんなんです?」
ゾロのコートを頭から被った半裸のルフィをじろじろ眺め回すたしぎに、ルフィは「よう」とにっこり片手を挙げたがギロリと睨まれ、肩を竦めた。
「ベッドで散々吐かせた結果だが?」
「はっ? まさかさっきの……!」
あのときの声を思い出したのだろう、たしぎが真っ赤になった。釣られて赤くなりそうなんだけど!
「麦わらのルフィの名で法外な値を吹っ掛け、売春行為を働いてた。それに乗る振りをして確めたまでだ。世の中好き者が多いようだなァ」
自分はどうなんだよ自分はー!
「だからって本当に……! その、あのっ、こんな少年をっ」
「むしろ男だからだろう? 急所を握っておきゃあ、いざってとき逃げられねェじゃねェか」
ニヤリ、意味ありげに口角を釣り上げたゾロにたしぎが更に真っ赤になってふるふる震え出した。今度は、怒りで……。
あーあ……あれがナミだったらゾロ今ごろでっかいタンコブいくつも作ってるぞォ~。
でもああやってメガネ大佐の判断力を鈍らせているのもルフィにはなんとなく解った。
「も、もういいです! 別人だと言う証拠は!?」
「本人の自白とあとは……見ろ」
と、ゾロはルフィの顎を掴むとたしぎの方へ顔を向けさせ、
「頬の傷がねェ」
「あら、ホントですね」
「え!?」
最後のはルフィだ。ゾロのやついつの間に!?
そっか、泣き止めってうるさかったのはおれの傷隠すためか~。
「それともう一つ決定的な証拠がある。おいお前、立って適当に動いてみろ」
「や、でも」
「いいから」
片腕を取られ、無理やり立たされる。そこでやっとルフィは体が軽いことに気付いてピョンピョン跳ねてみた。
──あれェ!? この手錠、海楼石じゃなかったっけ!?
「この通り、海楼石が効いてねェ。麦わらは能力者だ。つまりこいつは能力者じゃねェから麦わらじゃねェ」
「なるほど……。偽物で間違いないようですね。そのように上には報告します」
「撤収準備をしろ。おれはこいつをしかるべきところへ送ってく」
「わかりました。でもすぐ艦に戻って下さいね!? この道をまっすぐですよ! 一人で来れますね!?」
「うっせーよ! おれは迷子のガキかっ」
「大差ないでしょう!」
「てめ……っ」
「はぁぁ、もうやだやだ! こんな人と同じ部署なんて!」
「それはこっちの台詞だ!」
フン、とたしぎはそっぽを向いて、ツカツカと立ち去ってしまった。
海軍にも気の強い女はいるようだ。どこの女も女は怖っえェ~~!!
「な、解ったろルフィ」
「ん? 何がだ?」
「おれとあいつは何でもねェ。だからもうヤキモチ妬くなよ?」
「え……? まさかそのためにわざわざこんなことして会わせたんか!?」
「他になんのメリットがあるってんだ」
「おれ達を逃がすため……」
「お前自分で船は絶対ェ見つからねェ場所にあるっつってたじゃねェか。それにお前がたしぎなんぞに捕まるわけねェ」
「ほえ……」
「手錠外すぞ。二種類持っといてよかったよ」
「あ、やっぱ偽モンだったんか。本物だと思ってたから全く抵抗しなかったよおれ」
「お前は暗示に掛かりやす過ぎる。気を付けろ」
「ほーい!」
かち、と手錠が外された。少しだけ赤く擦りきれた手首をゾロの親指の腹が優しく撫でてくれる。
それからゾロはやや身を屈めて、ちゅ……そこへ口づけた。
「!」
「おれにお前を捕まえることは一生できねェんだろうな……。こんな痩せっぽっちのクソガキ海賊に骨抜きときてる。ホント最低だよ」
な?と上目遣いを送られ、ルフィは不覚にも真っ赤になった。さっきのたしぎに負けないくらい。
言葉が見付からずに口をパクパクしているルフィを、ゾロはそっと抱き締めてきて。
「また連絡する」
「……うん」
最後に、小さくルフィにキスして名残惜しげに体を離した。
「おれが前回渡した電伝虫は野生に返しとけよ? これが代わりだ」
「あぁ、同じ番号のはなるべく使わない方がいいんだっけ。また電伝虫なくしたって言うんか? 怒られねェ?」
「問題ねェ。お前の声くらいたまには聞きてェからなァ」
「うんおれもおれも! ゾロありがとう!!」

こうしていると、ただの恋人同士みたいなのに。やっぱり自分達は許されない恋をしているわけで。
でもルフィは海賊が大好きだし、やっぱりゾロを仲間にしたい。
「もう勧誘はなしだぜ? 麦わらのルフィ」
「イ・ヤ・だ!!」
「ちっ……」
「あ、ゾロのコート、返さねェと」
「やるよ。次はそれ着て変装して来い。あっさり目撃されやがって」
「いいんか!? やったー!!」
さっそく袖を通してブカブカだなとゾロに笑われたけれど気にしない。ゾロの匂いするし……ラッキー!!

「じゃあここで」
「うん、またな。絶対だぞ!?」
「あぁ。約束だ」

もう一度だけゾロはルフィにキスをして先に倉庫を出て行った。
時間を置いて出ろ、と言われたのでルフィはその辺の廃材に腰掛ける。
ほんの数時間の逢瀬。目を閉じ、どんなゾロも思い出して、記憶にしっかりと刻んで、次に会えるその日まで何度でも思い出せるように──。

「厄介なのに惚れちゃったなァ」

多分それはお互い様。
そして二人、いつまでも立ち止まってはいられないのだ。
「よっしゃみんなんとこ戻るぞー!」
それぞれに帰るところがある。
でもいつか、ゾロと同じ場所に帰れる日を夢見ながら──。
ルフィはポスンと麦わら帽子を被り倉庫を出ると、よーいどん! で駆け出した。



(後日談に続く)


余談ですかゾロは訳あって2回特進してます。
生い立ちなんかもそのうち書きたいです。

後日談はルフィとサンジしか出てきませんがルフィがゾロとの馴れ初めなんかを暴露します。
もう少しお付き合い下さる方は次のページへどうぞ!
5/7ページ