19×17
『おい見ろよゾロ! あの木!!』
『あ?』
『緑色の実がなってるぞ。ゾロの頭みてェな』
『あぁ……ホントだな』
『でもなんでかキッカリ半分腐ってる!!』
どーん。
『……こりゃ珍しい』
ルフィが見つけたその葉っぱのほとんどついてない木には、枝にいくつもの丸い実がたわわに実っていた。しかしなぜだろう、その木はきっちり下半分の実が全て腐っているのだ。
ちょうど黒と緑のコントラストの境目の実など、キレイに上下で色が違う。どんな現象だ、と思うも、ここはグランドラインのとある島だから、ひょっとしたら不思議でもなんでもないのかもしれない。
『おれ、食ってみようかな……』
『腐ってるのにか?』
『上半分の実は腐ってねェじゃんか。緑色で美味そうだ!!』
『味がいいとは思えねェんだが……』
『うんでもいい。腹減ったし』
ルフィは言うなりびゅんっとゴムゴムの腕を伸ばした。ゴム人間には容易い収穫だ。
見事いちばん天辺の実をひとつゲットして、「ししし」と得意満面に笑った。
隣で三本刀の剣士が肩を竦めたが、そこに実があるなら食うだろう、というのがルフィの持論なので。
かくしてしゃくりと皮ごと齧った麦わら帽子の少年の感想は。
『すっぺェ~~~~っ!! ぺっぺっ』
『ホラ見ろ』
くつり相棒が笑う。
『チキショー! ゾロは食ってもねェのになんで解ったんだ!?』
『梅の実に似てたからな。梅ってのは酸っぱいモンなんじゃなかったか? 食ったことはねェが……美味そうには見えなかった』
『そんならそうと早く言え!!』
『言っただろうが!!』
ぽかりと殴られた。
『しかしあれだなァ』
ゾロが腕を組み、半分齧った実を忌々しく見つめるルフィをまじまじ眺めて言った。
『んん?』
『お前が食ってると、なんでも甘ったるく見える』
『へ? んなわけねェじゃん』
『そうか? だったら味見させろ』
『おお。いいぞ』
ん、と手に持った実をルフィはゾロに突き出した。
その手首をがしっとつかまれ、引っ張られるまま体を寄せて。
不意に重ねられた唇に何が何だかわからなくて、ルフィは目をぱちくりする。
はむはむ。
れろれろ。
ちゅうちゅうちゅう……。
はたしてルフィの唇で味見した剣豪ゾロの感想は。
『すっぺ!!』
『だ、だから言ったじゃんか……』
ぷいっと逸らせた顔を、ゾロに見られなかったろうか。
多分いやきっと今のルフィの顔は、この実とは正反対の、真っ赤な色をしている筈だから。
「あの実はすっぱいんだよ……」
ジャングルで途方にくれつつ、仲間と決別させられた〝麦わらの一味〟の船長は、一人懐かしい木の実を見つけて恨めしげに睨み付けていた。
あっちから食われにきてくれたイノシシ(誤解)は丸焼きにしておいしく頂いたから、腹はぽんぽこりんだけれどデザートは別腹だろう。
──あれはいつか、ゾロと見つけた緑の木の実。
あの日と違うのはどっこも腐っていないこと。なのに食べる気にならないこと。
そこに木の実があったなら、自分は食うんじゃなかったのか。
「みんな元気かな。ちゃんと食ってっかな~~~」
でも生きてさえいてくれりゃいい。きっとまた会える。
またみんなで笑って、冒険できる日がくるって信じてる。
あーあ、ゾロに会いてェなぁ……。
しばらくはあの緑色の実でも眺めて、気を紛らわせることにしよう。
(おしまい)
紛れなかったのでワライダケ食いました、ってことで(笑)
女ヶ島のジャングルにて。
ルフィはゾロのことも思い出したかな~と。
梅の実と思われる実(自信がないって…)を見てなんとなく書きました。
『あ?』
『緑色の実がなってるぞ。ゾロの頭みてェな』
『あぁ……ホントだな』
『でもなんでかキッカリ半分腐ってる!!』
どーん。
『……こりゃ珍しい』
ルフィが見つけたその葉っぱのほとんどついてない木には、枝にいくつもの丸い実がたわわに実っていた。しかしなぜだろう、その木はきっちり下半分の実が全て腐っているのだ。
ちょうど黒と緑のコントラストの境目の実など、キレイに上下で色が違う。どんな現象だ、と思うも、ここはグランドラインのとある島だから、ひょっとしたら不思議でもなんでもないのかもしれない。
『おれ、食ってみようかな……』
『腐ってるのにか?』
『上半分の実は腐ってねェじゃんか。緑色で美味そうだ!!』
『味がいいとは思えねェんだが……』
『うんでもいい。腹減ったし』
ルフィは言うなりびゅんっとゴムゴムの腕を伸ばした。ゴム人間には容易い収穫だ。
見事いちばん天辺の実をひとつゲットして、「ししし」と得意満面に笑った。
隣で三本刀の剣士が肩を竦めたが、そこに実があるなら食うだろう、というのがルフィの持論なので。
かくしてしゃくりと皮ごと齧った麦わら帽子の少年の感想は。
『すっぺェ~~~~っ!! ぺっぺっ』
『ホラ見ろ』
くつり相棒が笑う。
『チキショー! ゾロは食ってもねェのになんで解ったんだ!?』
『梅の実に似てたからな。梅ってのは酸っぱいモンなんじゃなかったか? 食ったことはねェが……美味そうには見えなかった』
『そんならそうと早く言え!!』
『言っただろうが!!』
ぽかりと殴られた。
『しかしあれだなァ』
ゾロが腕を組み、半分齧った実を忌々しく見つめるルフィをまじまじ眺めて言った。
『んん?』
『お前が食ってると、なんでも甘ったるく見える』
『へ? んなわけねェじゃん』
『そうか? だったら味見させろ』
『おお。いいぞ』
ん、と手に持った実をルフィはゾロに突き出した。
その手首をがしっとつかまれ、引っ張られるまま体を寄せて。
不意に重ねられた唇に何が何だかわからなくて、ルフィは目をぱちくりする。
はむはむ。
れろれろ。
ちゅうちゅうちゅう……。
はたしてルフィの唇で味見した剣豪ゾロの感想は。
『すっぺ!!』
『だ、だから言ったじゃんか……』
ぷいっと逸らせた顔を、ゾロに見られなかったろうか。
多分いやきっと今のルフィの顔は、この実とは正反対の、真っ赤な色をしている筈だから。
「あの実はすっぱいんだよ……」
ジャングルで途方にくれつつ、仲間と決別させられた〝麦わらの一味〟の船長は、一人懐かしい木の実を見つけて恨めしげに睨み付けていた。
あっちから食われにきてくれたイノシシ(誤解)は丸焼きにしておいしく頂いたから、腹はぽんぽこりんだけれどデザートは別腹だろう。
──あれはいつか、ゾロと見つけた緑の木の実。
あの日と違うのはどっこも腐っていないこと。なのに食べる気にならないこと。
そこに木の実があったなら、自分は食うんじゃなかったのか。
「みんな元気かな。ちゃんと食ってっかな~~~」
でも生きてさえいてくれりゃいい。きっとまた会える。
またみんなで笑って、冒険できる日がくるって信じてる。
あーあ、ゾロに会いてェなぁ……。
しばらくはあの緑色の実でも眺めて、気を紛らわせることにしよう。
(おしまい)
紛れなかったのでワライダケ食いました、ってことで(笑)
女ヶ島のジャングルにて。
ルフィはゾロのことも思い出したかな~と。
梅の実と思われる実(自信がないって…)を見てなんとなく書きました。