21×19
ナミの話は2年経って、さらに難しくていけない、とルフィは思う。
船の指針の説明はぼんやり解ったけれど、そのあと海流の話になってくるとだんだん頭に入らなくなってきた。
これじゃあおれ、船長なのにカッコ悪ィじゃん!と思って首を突っ込んでみたものの、「エンブンノード」とか言う聞いたことも見たこともない話だそうで、あっさり放棄することにした。
でもやっぱりカッコ悪いので、
「昔よく遊んだよな……『エンブンノード』で」
知ったかぶりしてその場を遠ざかる。
そしたらいつの間にか横にいたゾロが、
「おれはいつか欲しいと思ってる……『炎分ソード』」
とか言い出すので、あコイツも解ってねェ、と思って内心ルフィは手を叩いた。
パチパチパチ!!
さっすがおれの相棒、ゾロありがとう~~!!!
同じように手すりに凭れて二人で海底を眺める形になると、もうすっかりエンブンノードはどうでもよくなった。
「ゾロ、お前はどこまで飛ばされたんだ?」
「ああそれがよ……」
そういやゾロの話はまだ聞いていない。スッゲー聞きたくなってきた!!
二人して蚊帳の外に出て、わいわい話に花を咲かせる。
ルフィ的にはあっという間の2年だったけど、ゾロはどうだったんだろ……?
「えっ、ゾロ鷹の目ん家にいたんか!?」
「おう、いきなり現れやがってビックリしたぜ」
あのときのゾロは、ルフィの現状を聞かされいてもたってもいられなくなった。
しかしそんな話をすれば、例の頂上決戦の話を蒸し返すことになるので……、
「いや、あー。着ぐるみとか着せられて参った……」
ホロホロ女にだが。
「あいつにそんな趣味が!? 何で!? はたして……??」
「はたしてじゃねェよ」
相変わらずのルフィに、ゾロはクスリと笑った。
徐々に縮めていけばいい、2年の距離は。
「そんで!?」
「それよかルフィ。さっきから気になってたんだが……」
「へ?」
「怒るなよ?」
「お?」
「いいな」
「う、うん…」
小首を傾げながら見上げてきた船長に、ゾロは背後の目がこちらにないのを確認し、身を屈めるとルフィの唇にチュッとキスした。
「やっぱりか」
「??」
「キスしづらくなったぞ」
「は!?」
「お前縮んだな」
「なっ……ゾロが伸びたんだバカ!!」
「だから怒んなっつっただろ!」
「だって……! ほんじゃあ、もうちゅーしねェ……?」
「しまくるに決まってんだろうが」
ゾロがわざとらしく海を眺めながらぴとり肩を寄せたら、ルフィもこちらに寄りかかって「ししし」と笑った。
二人の間には、もう1ミリの距離もない。
そうだな……まずはこんな風に、ちょっとずつ距離を縮めるのも悪くない──。
しかしナミの解説にギブアップしたウソッチョがそそくさとこちらに加わってきて、
「不思議な海流があるってわけだな!!!」
お茶をズズ……。あーあ、やれやれ。
4人でそう声を揃えたものの、実はいちゃいちゃしていたのを気づかれない為、だったことは、ゾロとルフィのみ知る事実である。
(おわり)