21×19

「ゾーロー、ゾーロー」
「ぞろぞろ…ついては来てるが」
「あぁ、なんだトラ男か。……あ、いたー! ゾロ発見~~っ!!」
麦わらのルフィが、見知らぬ男と酒を酌み交わしている相棒を見つけ、一目散に駆けていくのをローは口を半開きにして見送ってしまった。
じっくり話す隙を与えてくれない、全く忙しい男なのだ。
奴には何を言い聞かせても裏切られっぱなしの全敗中、なんとか形成を立て直そうと、小柄ながら異彩を放っている彼の居所をこの人だかりから見つけるのは容易く、難なく捕まえたつもりだったのに。

「おい麦わら屋! 話を聞け!」
ちなみにぞろぞろついて来ているのはローの他に子供達やG-5の連中、それにシーザーの元部下……大した人気者である。
しかしながら、いい加減に島を離れようと提案したいローには鬱陶しいことこの上なく──。

「ぞろぞろじゃなくゾロ屋のことか……」
笑顔全開の剣士を見つけた麦わら屋の笑顔もよりいっそう輝いて見える。
全幅の信頼を寄せる存在だからだろう、同じ船長という立場上そんな仲間を持つことは解らなくもない。
と、解った気でいたローの予想は、どうやら大外れだったのだ。

「ゾロぉ~! 飲んでるか?」
「おう。海軍の酒もなかなかいけるぜ。お前は腹いっぱい食ったのか? 肉持ってねェじゃねェか、珍しい」
「おれはさっきまで鼻割り箸芸をみんなに伝授してやってたんだ!!」
「なるほど。じゃあそろそろお開きだな。のんびりもしてられねェぞ、この島からズラからねェと……」
「そっかぁ。楽しいから残念だけどしゃあねェな!」
「アイツも痺れ切らしてるころだろう?」
つい、と相棒が向けた視線を追って振り返った麦わら屋と、ローはようやく目があった。
追っても捕まえても向けられなかった視線があっさり自分に向いたことに、少しだけムッ……。
「あ~~トラ男も言ってた気がする! でもおれ今は忙しいから、トラ男はちっとあっち行ってろ。しっしっ!」
「は!? て、てめェ……! いい加減この島を離れると仲間に伝えろ!!」
「えーだって……」
「だいたいなんなんだそのくっつきぶりは!?」
そう、さっきから相棒の胡座を座椅子にしてすっかり寛いだ様子の麦わら屋に、腹の奥がざわざわするのはペースを乱すアイツのせいに違いない。
そしてなぜ相棒の言うことはすんなり聞くのか。
しかも唐突に相棒の手を引いてこそこそと……一体どこへ行くつもりだ!?

「待て麦わら屋! 勝手な行動をするな!」
つーか手を繋ぐな!!
他の連中はアレに違和感がないのか彼の仲間も二人の周りに群がる連中も、誰もツッコまないってどういう……。
「トラ男ついてくんな」
「うるさい、いいから言うことを聞け」
そして離れろ。
「だとよルフィ、どうする?」
「イヤだっ!!」
「だってよトラ男。ワリィな」
「トラ男言うなァ!!」

ケタケタとウケている麦わら屋が当たり前のように剣士に抱きつけば、コートを広げた剣士がすっぽり船長を包みこんでいる。
何だそれ、お前らはどこぞのバカップルか。
またまた呆然自失のローが目の前で繰り広げられ始めたイチャラブい光景に、とうとう一味の実態を知るのは言うまでもなく。

「やはりこんな奴を信用したおれがバカだったのか……?」

それでも同盟を反故する気には不思議とならない。
例え利用されていようと、彼と共に目的を果たしてみたい。

全ての始まりはあの言葉。

『四皇はおれが全部倒すつもりだから!!』

これはどうやら、確実に惹かれ始めてしまったらしい──。




(続きはpixivです!)
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