21×19
「ゾロ喜べ!! おれ達の島が星3つになったぞ!!!」
どーん。
「お、とうとう島クリエイターか」
説明しよう。
星3つとは、島の評判が5段階のうち3になった、という意味だ。
星3になると島の工事の資格が貰えて、自分の好きな地形に再構築できる。
「どんな島に開拓すっかな~。やっぱ海賊っぽく宝島か!? どっかに財宝隠して罠いっぱい仕掛けて宝探しするんだ」
「そんなアイテムあんのかね……。ああ、落とし穴の種っつーのはあるらしいぞ?」
「おおそれいいじゃん!」
「そういや釣り大会の景品でいかりのオブジェ貰ったな」
「あったあった! おれタル作るぞ!! サニー号も作ろう」
「まぁルフィの好きなようにしろよ」
「うん!!」
──かれこれ1ヶ月前のこと。
サニー号から落ちたルフィを追って海へ飛び込んだおれは、ルフィを抱えたまま運がいいのか悪いのか、この無人島に漂着した。
そこはリンゴの木と赤白黄色のチューリップとボーボーの雑草が山ほど生えた、海と川と自然の島だった。
ルフィはあっけらかんと「ゾロがおれ乗っけてサニー号まで泳げばいっか!」とか言ったが、おれが「迷ったらそこを動くなって言うだろ?」と嗜めるとやむなく無人島生活が始まった。
けど暮らしてみればこれが意外と快適で。
魚を釣れば食うには困らないし、なぜかチョッパーみたいな喋るたぬきがあれこれ世話してくれて、おれ達の家もそれぞれあって(まぁ膨大な借金を容赦なく背負わされたが…)。
それから言われるまま要求をクリアしていたら案内所は建つわ、商店は建つわ服屋は建つわ、なぜだか変などうぶつがたくさん越してくるわで、あっという間に賑やかな島になったのだった。
「あっひゃっひゃっ! クリエイター楽しいぞゾロー!!」
「良かったな」
ヘルメット姿のルフィがスコップを手にあちこち池だらけにしたり滝を作ったり、好き勝手に地形を変形させてセンスのかけらもないけれど、おれはルフィが満足なら問題ないし草原を駆け回るルフィを見ているのが好きだった。
こんな時間もたまには悪くねェかも……とちょっと思ってしまう。いつ死ぬかわからない海賊稼業と、まるで逆の絵空事のような日々。
「けど腕が鈍っちまうからなァ。猛獣でも越して来ねェかな……」
そんな物騒なことを考えながら、おれはゴロンと草の上に寝転んだ。心地よい木々のざわめきと海風が頬を撫で、あっという間にまぶたが重くなる。
「あ~面白かったぁ。ゾロおれ腹減ったー!! ……ん? 寝てんのか?」
呼ばれてうっすら目を開ければ目の前にルフィのつまらなそうな顔。
おれはルフィの細身を抱き寄せると添い寝をさせて、ポンポンとリズム良く背中を叩いた。
「おれ眠くねェ! 昼寝にはまだ早ェってゾロ! 釣りに行こう!!」
「ちっ……わーったよ。昼は川魚が食いてェ」
「よしきた任せろ。あ、でもおれのつりざお壊れてたんだったよ~。ゾロ作ってくれ!」
「おう。きのえだ取ってくる」
「あ、虫とりあみとスコップも」
「かたいもくざいも取ってくる」
「おれは風船待ち~♪」
ルフィがウソップみたいなパチンコをしゅびーんと構えた。撃ち落とす気満々だ。
なぜかこの島には風船がプレゼントの箱を運んで飛んできて、割ると箱が落ちて中身を貰えるシステムになっている。
一体誰が飛ばしてんだろう……。
「てっこうせき飛んで来ねェかなァ」
ルフィがしょっちゅう道具を壊すので少しは長持ちする道具を作っているのだ。
「おれは肉がいい!!」
「んなこと言ってまた池ポチャして半泣きになんなよ? 酒が出たらおれに寄越せ」
て、どっちも出たことねェんだけどな。
実はここにはおれ達の一番欲しいものがない。肉と酒だ。
ゾロはその辺の木をズバズバと切り刻みながら(オノいらず)、そのことと“アレ”だけが難点なんだよなァ、と独りごちた。
夜、広場に白いイヌがいて、なんとギターを弾きながら歌っていた。住民達も集まってくる。
「あいつ、とたけけっていうんだと。しずえが言ってた」
「へぇ」
しずえは案内所の女だ。たぶんイヌ。たぬきの同僚でよく昨日見たテレビの話をする。
ちなみに、
「ゾロ~、とたけけライブ見て行こうだなも~」
「たぬきちの真似すんな」
たぬきは大小3匹いてなぜか語尾が「だなも」である。
他の住民にもそれぞれ口ぐせがあることを最近おれは知った(今頃かとルフィにバカにされた)。
つーか、喋るどうぶつに驚かないのはもはやチョッパーの恩恵としか言いようがない。慣れっこだ。
そして今ではルフィが島中のどうぶつの親分的存在になって久しい。
本人は友達だと言い張るが、いつ仲間にすると言い出すやらヒヤヒヤしているおれである。
ついでにいうと住民はおれには見向きもしないのに、ルフィがいると「おーい!ルフィー!」と駆け寄ってきやがるから親密度の差は歴然。
ネコやらオオカミやらトリやらと楽しげに歓談するルフィはぶっちゃけ癒しだが、おれを巻き込んでスマホ(たぬきに貰った)で自撮りばっかして遊ぶのはやめて欲しい……。
ま、ルフィが楽しそうなら以下同文。
それからおれ達はとたけけの歌を気が済むまで聴いて、というかルフィの気が済むまで堪能し、家に帰ることにした。
「おれ『けけライダー』が気に入った」
ふにふにと砂浜を歩いて帰る。ちょっとだけ遠回り(※迷子じゃねェ)。
そこにはルフィがスマホのマイデザインとやらで描いた魚人みたいなナミと、へなちょこなガイコツの絵が敷かれている。
今夜は月が綺麗だ。
雲がなければ流星群も見られたかもしれない。
「おれは『ふなうた2001』だな」
「いい曲いっぱいあったよな~! あいつ『ビンクスの酒』知らなかったなぁ。ブルックがいたら一緒に歌ってくれたのに」
「そうだな。……あいつら元気でやってっかなァ」
「心配してるよな……」
ルフィの顔がちょっと曇ったので、おれは失敗したなとその黒髪をわしゃわしゃっと撫でた。
「大丈夫だ。ちゃんと見つけてくれるさ。あいつらが諦めるはずねェ」
「うん。おれも信じてる! けど帰ったらめちゃめちゃ怒られんだろうな~」
ぶるぶるとルフィ。それについては同感しかない。
「けどおれはこの生活もそれなりに気に入っちゃいるんだぜ? 酒はねェけど」
「しししっ、おれもだ。ゾロと一緒で良かったなぁ。一人でも何とかなるけど、やっぱ一緒がいいもんよ」
きゅっとルフィが手を繋いできて、おれも握り返す。
思えばナミやグル眉にブツブツ言われずイチャイチャ出来るのもこの生活のいいところ。
「おれの刀が便利に使われてるだけのような気もするが?」
「えー? んなことねェだろ!? おれ家具とかいっぱい作れるようになってきたんだ。毎日メッセージボトル拾ってるし、みんなの家遊びに行ったらレシピくれるし!」
「おれよりレシピ覚えてるもんなルフィは」
「だっろー? 明日はなに作ろっかな~」
「とか言ってる間に着いたぞ。今夜はどっちの家で寝る?」
もう一つの難点〝アレ〟とは……それはルフィと家が別々なこと。二人で一軒で良かったのによ……たぬきちめ。
「じゃあおれんち! おれ今日でっけーベッドゲットしたんだよ、木揺らしたら葉っぱ落ちてきてさ! なんかな、天幕ついてる赤いヤツ」
葉っぱ=アイテムなのもこの島の七不思議の一つだ……持ち運び便利でいいが。
「へぇ。ハチじゃなくて良かったな」
ルフィはよく刺される。でもすぐに住民の誰かが薬をくれる。
「おれは今日住民に魚やったらお礼にパジャマワンピ貰ったぜ。もこもこナイトキャップもあるぞ。お前着ろよ」
絶対似合う。絶対かわいい。口が裂けても言わねェけど。
「はー? パジャマー?」
「ま、脱がすから関係ねェけど」
ばーん。
「……」
「冗談だって……」
ちろっと目を逸らしたらルフィが背伸びして、うちゅっとキスしてきた。
「イイよ! ほんじゃ早く帰ろう!」
「あぁ」
「おれ明日は露天風呂作るぞ」
「大賛成だ」
何もないから何でもできる。
一緒に寝て、一緒に起きて、明日はふたりで何をしようか?
きっと誰も知らない大冒険の一日になる。
(島の名前はラフテル島です←)
プレイしてる人じゃないとわかりにくいネタですいませんでした汗
どーん。
「お、とうとう島クリエイターか」
説明しよう。
星3つとは、島の評判が5段階のうち3になった、という意味だ。
星3になると島の工事の資格が貰えて、自分の好きな地形に再構築できる。
「どんな島に開拓すっかな~。やっぱ海賊っぽく宝島か!? どっかに財宝隠して罠いっぱい仕掛けて宝探しするんだ」
「そんなアイテムあんのかね……。ああ、落とし穴の種っつーのはあるらしいぞ?」
「おおそれいいじゃん!」
「そういや釣り大会の景品でいかりのオブジェ貰ったな」
「あったあった! おれタル作るぞ!! サニー号も作ろう」
「まぁルフィの好きなようにしろよ」
「うん!!」
──かれこれ1ヶ月前のこと。
サニー号から落ちたルフィを追って海へ飛び込んだおれは、ルフィを抱えたまま運がいいのか悪いのか、この無人島に漂着した。
そこはリンゴの木と赤白黄色のチューリップとボーボーの雑草が山ほど生えた、海と川と自然の島だった。
ルフィはあっけらかんと「ゾロがおれ乗っけてサニー号まで泳げばいっか!」とか言ったが、おれが「迷ったらそこを動くなって言うだろ?」と嗜めるとやむなく無人島生活が始まった。
けど暮らしてみればこれが意外と快適で。
魚を釣れば食うには困らないし、なぜかチョッパーみたいな喋るたぬきがあれこれ世話してくれて、おれ達の家もそれぞれあって(まぁ膨大な借金を容赦なく背負わされたが…)。
それから言われるまま要求をクリアしていたら案内所は建つわ、商店は建つわ服屋は建つわ、なぜだか変などうぶつがたくさん越してくるわで、あっという間に賑やかな島になったのだった。
「あっひゃっひゃっ! クリエイター楽しいぞゾロー!!」
「良かったな」
ヘルメット姿のルフィがスコップを手にあちこち池だらけにしたり滝を作ったり、好き勝手に地形を変形させてセンスのかけらもないけれど、おれはルフィが満足なら問題ないし草原を駆け回るルフィを見ているのが好きだった。
こんな時間もたまには悪くねェかも……とちょっと思ってしまう。いつ死ぬかわからない海賊稼業と、まるで逆の絵空事のような日々。
「けど腕が鈍っちまうからなァ。猛獣でも越して来ねェかな……」
そんな物騒なことを考えながら、おれはゴロンと草の上に寝転んだ。心地よい木々のざわめきと海風が頬を撫で、あっという間にまぶたが重くなる。
「あ~面白かったぁ。ゾロおれ腹減ったー!! ……ん? 寝てんのか?」
呼ばれてうっすら目を開ければ目の前にルフィのつまらなそうな顔。
おれはルフィの細身を抱き寄せると添い寝をさせて、ポンポンとリズム良く背中を叩いた。
「おれ眠くねェ! 昼寝にはまだ早ェってゾロ! 釣りに行こう!!」
「ちっ……わーったよ。昼は川魚が食いてェ」
「よしきた任せろ。あ、でもおれのつりざお壊れてたんだったよ~。ゾロ作ってくれ!」
「おう。きのえだ取ってくる」
「あ、虫とりあみとスコップも」
「かたいもくざいも取ってくる」
「おれは風船待ち~♪」
ルフィがウソップみたいなパチンコをしゅびーんと構えた。撃ち落とす気満々だ。
なぜかこの島には風船がプレゼントの箱を運んで飛んできて、割ると箱が落ちて中身を貰えるシステムになっている。
一体誰が飛ばしてんだろう……。
「てっこうせき飛んで来ねェかなァ」
ルフィがしょっちゅう道具を壊すので少しは長持ちする道具を作っているのだ。
「おれは肉がいい!!」
「んなこと言ってまた池ポチャして半泣きになんなよ? 酒が出たらおれに寄越せ」
て、どっちも出たことねェんだけどな。
実はここにはおれ達の一番欲しいものがない。肉と酒だ。
ゾロはその辺の木をズバズバと切り刻みながら(オノいらず)、そのことと“アレ”だけが難点なんだよなァ、と独りごちた。
夜、広場に白いイヌがいて、なんとギターを弾きながら歌っていた。住民達も集まってくる。
「あいつ、とたけけっていうんだと。しずえが言ってた」
「へぇ」
しずえは案内所の女だ。たぶんイヌ。たぬきの同僚でよく昨日見たテレビの話をする。
ちなみに、
「ゾロ~、とたけけライブ見て行こうだなも~」
「たぬきちの真似すんな」
たぬきは大小3匹いてなぜか語尾が「だなも」である。
他の住民にもそれぞれ口ぐせがあることを最近おれは知った(今頃かとルフィにバカにされた)。
つーか、喋るどうぶつに驚かないのはもはやチョッパーの恩恵としか言いようがない。慣れっこだ。
そして今ではルフィが島中のどうぶつの親分的存在になって久しい。
本人は友達だと言い張るが、いつ仲間にすると言い出すやらヒヤヒヤしているおれである。
ついでにいうと住民はおれには見向きもしないのに、ルフィがいると「おーい!ルフィー!」と駆け寄ってきやがるから親密度の差は歴然。
ネコやらオオカミやらトリやらと楽しげに歓談するルフィはぶっちゃけ癒しだが、おれを巻き込んでスマホ(たぬきに貰った)で自撮りばっかして遊ぶのはやめて欲しい……。
ま、ルフィが楽しそうなら以下同文。
それからおれ達はとたけけの歌を気が済むまで聴いて、というかルフィの気が済むまで堪能し、家に帰ることにした。
「おれ『けけライダー』が気に入った」
ふにふにと砂浜を歩いて帰る。ちょっとだけ遠回り(※迷子じゃねェ)。
そこにはルフィがスマホのマイデザインとやらで描いた魚人みたいなナミと、へなちょこなガイコツの絵が敷かれている。
今夜は月が綺麗だ。
雲がなければ流星群も見られたかもしれない。
「おれは『ふなうた2001』だな」
「いい曲いっぱいあったよな~! あいつ『ビンクスの酒』知らなかったなぁ。ブルックがいたら一緒に歌ってくれたのに」
「そうだな。……あいつら元気でやってっかなァ」
「心配してるよな……」
ルフィの顔がちょっと曇ったので、おれは失敗したなとその黒髪をわしゃわしゃっと撫でた。
「大丈夫だ。ちゃんと見つけてくれるさ。あいつらが諦めるはずねェ」
「うん。おれも信じてる! けど帰ったらめちゃめちゃ怒られんだろうな~」
ぶるぶるとルフィ。それについては同感しかない。
「けどおれはこの生活もそれなりに気に入っちゃいるんだぜ? 酒はねェけど」
「しししっ、おれもだ。ゾロと一緒で良かったなぁ。一人でも何とかなるけど、やっぱ一緒がいいもんよ」
きゅっとルフィが手を繋いできて、おれも握り返す。
思えばナミやグル眉にブツブツ言われずイチャイチャ出来るのもこの生活のいいところ。
「おれの刀が便利に使われてるだけのような気もするが?」
「えー? んなことねェだろ!? おれ家具とかいっぱい作れるようになってきたんだ。毎日メッセージボトル拾ってるし、みんなの家遊びに行ったらレシピくれるし!」
「おれよりレシピ覚えてるもんなルフィは」
「だっろー? 明日はなに作ろっかな~」
「とか言ってる間に着いたぞ。今夜はどっちの家で寝る?」
もう一つの難点〝アレ〟とは……それはルフィと家が別々なこと。二人で一軒で良かったのによ……たぬきちめ。
「じゃあおれんち! おれ今日でっけーベッドゲットしたんだよ、木揺らしたら葉っぱ落ちてきてさ! なんかな、天幕ついてる赤いヤツ」
葉っぱ=アイテムなのもこの島の七不思議の一つだ……持ち運び便利でいいが。
「へぇ。ハチじゃなくて良かったな」
ルフィはよく刺される。でもすぐに住民の誰かが薬をくれる。
「おれは今日住民に魚やったらお礼にパジャマワンピ貰ったぜ。もこもこナイトキャップもあるぞ。お前着ろよ」
絶対似合う。絶対かわいい。口が裂けても言わねェけど。
「はー? パジャマー?」
「ま、脱がすから関係ねェけど」
ばーん。
「……」
「冗談だって……」
ちろっと目を逸らしたらルフィが背伸びして、うちゅっとキスしてきた。
「イイよ! ほんじゃ早く帰ろう!」
「あぁ」
「おれ明日は露天風呂作るぞ」
「大賛成だ」
何もないから何でもできる。
一緒に寝て、一緒に起きて、明日はふたりで何をしようか?
きっと誰も知らない大冒険の一日になる。
(島の名前はラフテル島です←)
プレイしてる人じゃないとわかりにくいネタですいませんでした汗