自創作系
夢を見た。小さな頃、弟と一緒に遊んでいたあの夢だ。……いや、厳密には違う。夢の中での弟も俺も、着た事のない服を着て、出会った事のない、知らない子供達と仲良くしている。夢ならではの改変、という事だろう。普段ならば、起きたらすぐ忘れるはずなのにやけにはっきりと記憶に残ってる。
とても楽しい、夢だった。
「兄ちゃん! 早く早くー!」
やけにはしゃいで、俺よりも先に行っている弟、アーロン。寝そべった二本のアホ毛がぴょんぴょんと激しく動いている。待てよ、と俺は言いながらアーロンの後を必死に追いかけるが、結構足が速い。あんなに速かったか? ──そうだな、アーロンは俺よりも足が速かった。運動神経は俺の方がいいのに、かけっこだけはアイツに負けていた。
ようやく追い付いたその先には、見覚えのある顔だがどこか幼い……と言っても、夢の中の俺よりは年上の奴がいる。シグナだ。
「急がなくても料理はまだ残ってるよ」
小さい体で大きな鍋を抱えている。よろけそうになると、アーロンが入って支えていた。二人は笑顔で仲良さそうに、一緒にテーブルへと大鍋を運んでいく。それに続き、テーブルへ向かうとたくさんの子供達が料理を囲み、楽しそうに会話をしながら、遊びながら食べていた。夢の中の俺はこいつらが誰なのか全員知っている。顔も、名前も。それなのに、咄嗟に名前を確認しようにも出てこなかった。まあ、会話をする訳じゃないし困らないだろう。空いている適当な席にアーロンと共に座り、一緒になって食べ始めた。
野菜たっぷりのサラダは大盛りで残っているのに、チキンやグラタン、カレーライスは半分以上無くなっている。デザートのケーキなんかもう生クリームしか残っていなかった。バランス良く食べなさい、なんて叱る大人がいないから子供達は好きなものから食べ始める。食べる順番なんて関係ないのだ。それほど食欲が無かった俺は、フルーツの盛り合わせからいくつか果物を取って皿に乗せ、ちまちまと食べ始めた。どうせならアーロンの為に何か取ってやろう、と思ったが既にアーロンはハンバーグを取って美味しそうに食べている。子供の俺からしたら当たり前の光景なのに、何故か懐かしく感じてじっとアーロンを眺めていた。すると勿論、アーロンは不思議に思って聞いてくる。
「どしたの兄ちゃん。顔なんか付いてる?」
「いや、何でもないよ。よく食うなーって」
「お腹空いてないの? 勿体無い……じゃあ俺が兄ちゃんの分も食べるね!」
「ああ、よろしく頼んだ」
あれもこれも、とどんどん皿に追加していく。そんなに食べきれないだろ、と注意しようと思ったが、幸せそうなアーロンを見て止める事が出来なかった。
とても、とても幸せだ。
「兄ちゃん?」
呼ばれてハッと気付いた。少し、別の事を考えていたようだ。頬を触ると濡れており、雨でも降ってきたのかと一瞬思ったが、そうでは無い。俺自身、俺の目から涙が溢れていた。
「どうしたの? お腹痛い…?」
自分でもどうして涙が出ているのかわからず、混乱してしまうのに心配そうなアーロンの表情を見たら、兄としてすぐに平静を取り戻さねばならない。
「大丈夫だよ、なんで涙が出たんだろうな? 俺にもわかんねぇや」
無理矢理笑顔を作り、頭を雑に撫でてやると少し迷惑そうに、でも嬉しそうに笑ってくれた。
「さ、どんどん食おうぜ」
「うん!」
満面の笑みが、俺の心を照らし、晴らしてくれる。アーロンは、そんな奴だった。
とても楽しい、夢だった。
「兄ちゃん! 早く早くー!」
やけにはしゃいで、俺よりも先に行っている弟、アーロン。寝そべった二本のアホ毛がぴょんぴょんと激しく動いている。待てよ、と俺は言いながらアーロンの後を必死に追いかけるが、結構足が速い。あんなに速かったか? ──そうだな、アーロンは俺よりも足が速かった。運動神経は俺の方がいいのに、かけっこだけはアイツに負けていた。
ようやく追い付いたその先には、見覚えのある顔だがどこか幼い……と言っても、夢の中の俺よりは年上の奴がいる。シグナだ。
「急がなくても料理はまだ残ってるよ」
小さい体で大きな鍋を抱えている。よろけそうになると、アーロンが入って支えていた。二人は笑顔で仲良さそうに、一緒にテーブルへと大鍋を運んでいく。それに続き、テーブルへ向かうとたくさんの子供達が料理を囲み、楽しそうに会話をしながら、遊びながら食べていた。夢の中の俺はこいつらが誰なのか全員知っている。顔も、名前も。それなのに、咄嗟に名前を確認しようにも出てこなかった。まあ、会話をする訳じゃないし困らないだろう。空いている適当な席にアーロンと共に座り、一緒になって食べ始めた。
野菜たっぷりのサラダは大盛りで残っているのに、チキンやグラタン、カレーライスは半分以上無くなっている。デザートのケーキなんかもう生クリームしか残っていなかった。バランス良く食べなさい、なんて叱る大人がいないから子供達は好きなものから食べ始める。食べる順番なんて関係ないのだ。それほど食欲が無かった俺は、フルーツの盛り合わせからいくつか果物を取って皿に乗せ、ちまちまと食べ始めた。どうせならアーロンの為に何か取ってやろう、と思ったが既にアーロンはハンバーグを取って美味しそうに食べている。子供の俺からしたら当たり前の光景なのに、何故か懐かしく感じてじっとアーロンを眺めていた。すると勿論、アーロンは不思議に思って聞いてくる。
「どしたの兄ちゃん。顔なんか付いてる?」
「いや、何でもないよ。よく食うなーって」
「お腹空いてないの? 勿体無い……じゃあ俺が兄ちゃんの分も食べるね!」
「ああ、よろしく頼んだ」
あれもこれも、とどんどん皿に追加していく。そんなに食べきれないだろ、と注意しようと思ったが、幸せそうなアーロンを見て止める事が出来なかった。
とても、とても幸せだ。
「兄ちゃん?」
呼ばれてハッと気付いた。少し、別の事を考えていたようだ。頬を触ると濡れており、雨でも降ってきたのかと一瞬思ったが、そうでは無い。俺自身、俺の目から涙が溢れていた。
「どうしたの? お腹痛い…?」
自分でもどうして涙が出ているのかわからず、混乱してしまうのに心配そうなアーロンの表情を見たら、兄としてすぐに平静を取り戻さねばならない。
「大丈夫だよ、なんで涙が出たんだろうな? 俺にもわかんねぇや」
無理矢理笑顔を作り、頭を雑に撫でてやると少し迷惑そうに、でも嬉しそうに笑ってくれた。
「さ、どんどん食おうぜ」
「うん!」
満面の笑みが、俺の心を照らし、晴らしてくれる。アーロンは、そんな奴だった。
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