Pじゃないおばあちゃんの話
「あらちーちゃん、こんにちは!学校帰りにお使いかい?」
「それもそうなんだが……。もうすぐ高校を卒業するんだ、だから」
彼の手には紙袋が一つ。
「これを受け取って欲しい!」
「まあ」
人から贈り物を貰ったのはいつ以来だろうか。
中にはクッキーと自分たちのCDとメッセージカード。
「おばちゃんには高校3年間、お世話になりっぱなしだったから、何か返したいと思って」
屈託のない笑顔。この笑顔だ、この笑顔を見たいがためにコロッケを餌付けしていたところは大いにある。
「気にしなくてよかったのに……ありがとうねえ」
「おばちゃん、卒業したら今までのようにお使いには来れないだろうが、呼んでくれればヒーローはいつでも駆けつけるので!」
独りだった彼が、楽しそうに笑っている。
きっと仲間のおかげなのだろう。
孤独な仮面ライダーが一致団結の戦隊ヒーローになるような、大きな出来事がこの3年間であったのだろう。
子供の成長は速くて、年寄りにはとても追いつけないスピードで。
最初の頃は内気そうな男の子だったのに、いつの間にか、こんなにキラキラと輝くヒーローになっていた。
それがとても嬉しくて。
それじゃ!と走り出そうとする彼を引き止める。
「ほら、お待ちよ!飯を食わねば戦はできぬ!コロッケ、持ってきなさい」
「……ありがとう!おばちゃんのコロッケ、大好きだ!」
コロッケを片手に走り去る少年の前途に、幸あれ。
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