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2人の晩ご飯

連休前の金曜日。
新年会も兼ねて、俺と九字院と半田の3人で焼肉を食べに来ている。
……いるのだが。


「かあ~~~! いいよなあ、お前らは! 帰ったら暖かいご飯が待ってて!」
半田はその日何杯目かのジョッキを机に打ちつけた。
「俺だってなあ……かわいいカミさんが俺の帰りを待ってて『お風呂にする? ご飯にする? それとも……』って言われてえんだよ!!」
幸せになりてぇよ……と半泣きの半田の皿に焼けた肉を盛る。
「ほら、肉やるから」
「ありがとう!」
怒るのか感謝するのかどっちかにしろ。


そう思いつつ九字院に目を向けると。
「九字院、お前さっきから肉しか食べてないだろ」
「げ」
げ、とはなんだ。
「ほら、ピーマンも焼けてるぞ。野菜も食え」
「いやピーマンはちょっと……」
目を逸らしながら答える。
「食えないのか?」
「嫌いってわけではないんですがね……」
「よし。嫌いじゃないなら食べられるな」
ぽんと九字院の取り皿に載せる。
「うわ、本当に載せた」
ちょっと泣きそうな顔になる九字院。
ついでに半田まで泣きそうになっている。
何故だ……。
「そうやって夫婦漫才見せつけて……独り身の俺への当てつけか……?」
「ちが、そうじゃない!」
「せぇざきさん、本当に食べなきゃダメですか……」

混沌とした夜は更けていく。
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