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短編

「ああ、この子ね。よくうちの定食食べに来てたから覚えてますよ。えらいべっぴんさんでね。最初にあった時は綺麗な女の子かと思っちゃって。でも『日替わり定食一つ、お願いします』って言う時の声が男の人だからびっくりしてねえ。食べ方も綺麗で、お上品なの。
最近、あんまりうちに来てくれなくてね。前回来た時に『今度本庁の方に顔を出さなくちゃいけなくて』っていうもんだから。出世したのねってお母さんみたいにほっこりしちゃって。お勘定の時に『女将さんの定食が食べられないの、寂しいなあ』なんて言った彼はもういないのね。
……もう会えないってわかってたら、コロッケのひとつでもおまけしてあげられたのに」
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