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2人の晩ご飯

2人の晩御飯/青椒肉絲@2020/01/19
俺もあいつも、休みが不規則な仕事をしている。つまり、お互いの休みが重なる確率は低い。
ここは空けようと指定していないのなら、尚更。
今日はあいつが出勤、俺は休みだ。
メニューはもう決まっている。
……あいつのいない日でなくては決行できないからな。

「ただいま帰りました〜」
「おかえり、九字院」
俺のエプロン姿を見た九字院はたいそうご機嫌だった。
「今日のご飯はなんだろな〜♪」
「小学生か」
こんなに浮き足立っている男を、地獄にたたき落とすようで申し訳ないが今日のメニューは。

「げ」
さっきまでの笑顔が悲嘆に変わる。
「青椒肉絲だ。ピーマンはレモンの2倍のビタミンCを含んでいる、健康にいい食材だぞ」
「ピーマン食べるくらいなら、その倍の量のレモン食べる方がマシですよ……」
本当に食べなきゃいけませんか……?と潤んだ目で訴えかけてくる。
自分の顔の良さをこういう時に使おうとするんじゃない。
しかし残念だな九字院、その反応は予測済みだ。
「嫌なら食べなくてもいいんだぞ。その変わり」
「……その変わり?」
「デザートは抜きだ」
そういって冷凍庫に入っているハーゲンダッツを見せつける。
「ひ、卑怯ですよせぇざきさん!」
「卑怯もらっきょうもない。青椒肉絲を食べればいいだけだ」
それとも俺の作った青椒肉絲、食えないのか?
耳元で囁く。
あっという間に九字院が真っ赤になる。
「ピーマン、残さず食べます……」
「よしよし。しっかり食べるんだぞ」

「「いただきます」」

その後、九字院は半泣きになりながら青椒肉絲を完食し、晴れ晴れとした顔でハーゲンダッツを食べていた。
ピーマンの克服にはまだ時間がかかりそうだ。
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