その他いろいろ
悪魔に愛を
麗らかな日差しの午後。
アドヴォカートに師事して講義をしてもらおうとしたリレは、何故かそのアドヴォカートに連れられて中庭に用意したテーブルに座って紅茶を飲んでいた。
ため息が出るほど美味しい紅茶を淹れたのは、向かいにニヤニヤと笑いながら座る悪魔、アドヴォカートだ。
「貴女は既に王国魔法院に籍を置いても誰も文句の言えない魔法使いです。そんな貴女に教えられることなど、せいぜいが美味しい紅茶の淹れ方くらいなものです」
「はあ……」
「私が手ずから淹れた紅茶を飲んだ人間は貴女が初めてです、リレ・ブラウ。光栄に思いなさい」
「は、はあ。ええと、ありがとうございます」
「なにやらひっかる言い方ですが、まあ良いでしょう。今日は天気も良いですからね。ところで、リレ・ブラウ」
「なんでしょう、アドヴォカート先生」
「私と契約なんてしませんか」
「……………はい?」
「ですから、私、アドヴォカートと契約なんてどうでしょう、と誘っているんですよ」
「えーと、そう言った誘惑は間に合っていますので」
「契約の内容は、私は貴女が生ある間、貴女の僕となる」
「ですから! そんな契約は」
「条件は、貴女の愛を私にください」
「できま……………え?」
「貴女が私を愛してくれれば、それだけで私は貴女の手となり足となり、貴女に尽くすことを誓いますよ?」
呆然とする少女の白く小さい手を、悪魔の大きな手が捕まえた。
猫を思わせる釣りあがった目が細められ、大きく裂けた口がにいっと弧を描く。
そのままリレの手を口元へ運び、その手の甲にそっと唇を落とした。
「さあ、どうです? こんな貴女にばかり利のある話、そうそうありませんよ」
悪魔の囁きは、パニックを起こしかけているリレの耳には届かなかった。
顔を真っ赤にした少女を見て悪魔は至極楽しそうに笑い、それからまた滑らか肌にキスを落とした。
2008.03.23
修正
2007.04.17
初出 ブログにて
麗らかな日差しの午後。
アドヴォカートに師事して講義をしてもらおうとしたリレは、何故かそのアドヴォカートに連れられて中庭に用意したテーブルに座って紅茶を飲んでいた。
ため息が出るほど美味しい紅茶を淹れたのは、向かいにニヤニヤと笑いながら座る悪魔、アドヴォカートだ。
「貴女は既に王国魔法院に籍を置いても誰も文句の言えない魔法使いです。そんな貴女に教えられることなど、せいぜいが美味しい紅茶の淹れ方くらいなものです」
「はあ……」
「私が手ずから淹れた紅茶を飲んだ人間は貴女が初めてです、リレ・ブラウ。光栄に思いなさい」
「は、はあ。ええと、ありがとうございます」
「なにやらひっかる言い方ですが、まあ良いでしょう。今日は天気も良いですからね。ところで、リレ・ブラウ」
「なんでしょう、アドヴォカート先生」
「私と契約なんてしませんか」
「……………はい?」
「ですから、私、アドヴォカートと契約なんてどうでしょう、と誘っているんですよ」
「えーと、そう言った誘惑は間に合っていますので」
「契約の内容は、私は貴女が生ある間、貴女の僕となる」
「ですから! そんな契約は」
「条件は、貴女の愛を私にください」
「できま……………え?」
「貴女が私を愛してくれれば、それだけで私は貴女の手となり足となり、貴女に尽くすことを誓いますよ?」
呆然とする少女の白く小さい手を、悪魔の大きな手が捕まえた。
猫を思わせる釣りあがった目が細められ、大きく裂けた口がにいっと弧を描く。
そのままリレの手を口元へ運び、その手の甲にそっと唇を落とした。
「さあ、どうです? こんな貴女にばかり利のある話、そうそうありませんよ」
悪魔の囁きは、パニックを起こしかけているリレの耳には届かなかった。
顔を真っ赤にした少女を見て悪魔は至極楽しそうに笑い、それからまた滑らか肌にキスを落とした。
2008.03.23
修正
2007.04.17
初出 ブログにて