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その他いろいろ

She is GOD



「レアものというカテゴリーなら、私も十分にレアものだと思うのだけど」

 知るかボケ帰れ糞がつーか殺してやるから死ねよ。
 そう言ってやりたかったが、何せそいつは突然現れやがったもんだから、ぶちぎれの二つ名に恥ずべきだが怒りよりも驚きの方が勝っちまって言えなかった。
 いつもの仮面を思わせる笑みを貼り付けた顔とは違い、小首を傾げ小さな顎にすらりとした指を添えて眉尻を下げた物憂げな様子はそれはそれはしおらしく見える。
 が、こいつの慈悲も容赦もへったくれもなくうふふと笑いながら全てを破壊し尽くさんとする指揮と行軍を嫌と言うほど知っているオレ様に言わせりゃ、猫っかぶりもいいとこだ。
 イライラを募らせるオレ様の意思も感情もこれっぽっちも意に介さず、パタポンの神は言葉を続ける。

「なのにどうして私を手に入れようとしてくれないのかしら。貴方、分かる?」
「知るかボケ帰れ糞がつーか殺してやるから死ねよ」
「まあヒドイ」

 タイミングを逃していた暴言を放てば、顔色一つ変えることなくやんわりと受け流しやがった。
 カッチンドンガでさえ恐れをなして逃げ出す本気の殺気を放ったのに気にもしないっつーのはどういうこった。鈍感なのか図太いのか。
 あーもう、マジでさっさと殺しちまいたい。今すぐに飛び掛って、その貧相な胴体の上にちょこんと乗っかった小さな頭を跳ね飛ばしたい。
 が、それができねぇってのは、それこそ嫌ってほど知っている。
 実体のない体はオレ様の爪もフィーナの槍もソナッチの音波もビークスの鎌も、ありとあらゆる攻撃をすり抜けちまう。そんなヤツを、一体どうやったら殺せるってんだ。その方法があるのなら誰か教えてくれ。殺せないのならせめて封じられれば。箱に閉じ込められていた邪悪のように。
 ……あー、やめだやめだ。考えたところで目の前のパタポンの神がどうにかなるワケじゃねぇ。考えるだけ無駄だ。ここはさっさとパタポンどものアジトに戻ってもらうに限る。

「つーかよォ、なんでオレ様に聞くんだっての。ンなことヤツ自身に聞け」

 大きな二つの目玉を驚いたようにパチパチと瞬かせる。縁取る睫が長いもんだから、本当にそんな音が聞こえてきそうだ。聞こえやしなかったが。

「あら、相談はお友達にするものでしょう?」

 フリーズ。
 そして再起動。

「……なんか、今、ものすっげぇおぞましい言葉を聞いた気がすんだけどよ。何だっつった?」
「相談はお友達にするものでしょう?」
「誰と誰が」
「私と貴方が」

 嫌味か。それとも皮肉か。どっちにしろ笑えねぇどころか寒気のする発言にげっそりすれば、何を当然の事を聞いてるのよ、仕方のない子ね。とでも続きそうな呆れた微笑を向けられた。
 嫌味でも皮肉でも笑えねぇ冗談でもなく、コイツは本気でそう思っているんだってことがはっきりと分かっちまった。分かりたくなかった。
 マジでコイツどういう思考回路っつーか精神構造してんだ。
 オレ様たちダークヒーローとパタポンどもは敵対関係で、挙げ句コイツは最も忌むべきパタポンの神だ。
殺し合いがお似合いだってのに、何をどうしたらお友達なんつー頭ん中お花畑な結論に行き着くってんだよ。つーか、俺様とコイツの間にいつ友情らしきものが一瞬でも芽吹いたっつーんだよ。覚えも心当たりも全くない。
 このくらいおかしくなきゃカミサマなんてやってらんねぇってことなのか。
 こんなのに絡まれてる己の不幸を呪い、ついでに俺様以上に気に入られているヤツに少しばかり同情して、なんだってこんな物騒極まりないおかしなヤツを神ってのは放置してんのか呆れちまう。
 ……ああ、目の前で笑ってやがるコイツこそが、その神に類別される存在だったか。



2013.05.30
修正

2011.07.25
初出


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