レディアントマイソロジー2 まとめ
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スウィートベイビー
しゃかしゃかしゃかしゃかしゃか……
厨房に一定のリズムで軽快に響くのは、氷水を張った器の中に浮かべた銀のボウルで生クリームを泡立てる音だ。
右手にしっかりと握った泡だて器を猛スピードで動かすのは、ピンクのウサギがプリントされた白いエプロンと白い三角巾を身に付けディセである。
かき混ぜるのを止めて、額にうっすらとかいた汗を拭う。多くの戦いの中で知らず知らずのうちに体力、筋力共に著しい成長を見せる彼女だが、ひたすらに一定の動きを繰り返すだけの作業は肉体的にも精神的にも疲れてくるのだ。
「ふぅ、こんなところかな」
「お疲れ様」
台を挟んだ向かいには、何がそんなに楽しいのかにこにこと微笑むウッドロウが座っている。
ディセの可愛らしいエプロン姿をじっくりと堪能しているのだが、爽やかな微笑みからそんな下心は読み取れない。せいぜいが妹を可愛がる兄の図である。
「味見お願いしてもいいですか?」
「構わないよ」
「じゃあこれを……」
「いや、私はこっちがいいな」
差し出された泡だて器をそっと退けると、ウッドロウは少女のふっくらとした頬に優しく触れる。目線の先には頬をこすった時に手についていたものが移ってしまったらしい真っ白い生クリームがついていた。
そこに青年は顔を寄せて、ぺろりと舐めた。
きめ細かくとろけそうに柔らかなくせに張りのある肌の感触が舌先と唇を楽しませてくれたが、鼻腔をくすぐるのは少女本来の香りではなく長い時間格闘してきた甘ったるい生クリームの匂いで、それが残念でならなかった。
量が少なすぎて生クリームの味などほとんど分からない。それよりも、汗のぴりと痺れるような酸味と苦味の方こそが彼にとっては。
「うん、甘い」
である。
舐められた少女はと言えば、犬や猫に舐められたくらいの認識なのか、あまり気にしていないようである。
関心事は、もっと別のところだった。
「えっ、えっ? そんなちょっとで味分かるんですか?」
「もちろん」
「わぁ。ウッドロウさんは舌がいいんですね!」
「そうかな? ああ、でももう少し頂いても?」
「いいですよ」
「では、失礼して」
青年は少女の手を取りクリームを掬い取らせた。
突然の青年の行動に驚いた少女は大きな目をさらに大きくし、そんな少女を安心させるかのように微笑むと、その小さな指を口に含んだ。
クリームを味わうふりをして、少女の指を丹念に舐める。戦士らしく固い皮膚だったが、年齢が若いだけあって瑞々しい柔らかさを失ってはいない。
指に付いたクリームを全て舐めきるとそこで終わりにせず、もう一口と少女の指でクリームを掬い取り、再び口に咥える。
次は舐めるだけでなく、ちゅ、と音を立てて少し強めに指全体を吸う。解放される頃には少女の濡れた指はうっすらと朱に染まっていた。
「大丈夫だよ。甘いし、柔らかい」
「そうですか? ちょっと柔らかすぎるかなって思うんですけど」
「硬すぎるよりはいいんじゃないかな」
「うーん、それもそっか」
二人の会話は成り立っているようだが、致命的に主語が間違っている。
青年はそれに気付いていて尚且つそのズレを楽しんでいるようだが、対する少女は全く気付いていない。気付かない方が幸いだろう。
もう一口、とディセの手をボウルに伸ばさせれば、さすがの少女も青年の行動を咎めざるを得なかった。
「もうダメですよ! これ以上味見してたら料理に使う分がなくなっちゃう」
「それは困ってしまうね」
「でしょう?」
「なら、大人しく諦めよう。……おや」
「え?」
「ここにもついてるよ」
嘘をついてすまないと心の中で謝って、青年は少女の唇の端をぺろりと舐め上げた。
2009.03.20
初出
しゃかしゃかしゃかしゃかしゃか……
厨房に一定のリズムで軽快に響くのは、氷水を張った器の中に浮かべた銀のボウルで生クリームを泡立てる音だ。
右手にしっかりと握った泡だて器を猛スピードで動かすのは、ピンクのウサギがプリントされた白いエプロンと白い三角巾を身に付けディセである。
かき混ぜるのを止めて、額にうっすらとかいた汗を拭う。多くの戦いの中で知らず知らずのうちに体力、筋力共に著しい成長を見せる彼女だが、ひたすらに一定の動きを繰り返すだけの作業は肉体的にも精神的にも疲れてくるのだ。
「ふぅ、こんなところかな」
「お疲れ様」
台を挟んだ向かいには、何がそんなに楽しいのかにこにこと微笑むウッドロウが座っている。
ディセの可愛らしいエプロン姿をじっくりと堪能しているのだが、爽やかな微笑みからそんな下心は読み取れない。せいぜいが妹を可愛がる兄の図である。
「味見お願いしてもいいですか?」
「構わないよ」
「じゃあこれを……」
「いや、私はこっちがいいな」
差し出された泡だて器をそっと退けると、ウッドロウは少女のふっくらとした頬に優しく触れる。目線の先には頬をこすった時に手についていたものが移ってしまったらしい真っ白い生クリームがついていた。
そこに青年は顔を寄せて、ぺろりと舐めた。
きめ細かくとろけそうに柔らかなくせに張りのある肌の感触が舌先と唇を楽しませてくれたが、鼻腔をくすぐるのは少女本来の香りではなく長い時間格闘してきた甘ったるい生クリームの匂いで、それが残念でならなかった。
量が少なすぎて生クリームの味などほとんど分からない。それよりも、汗のぴりと痺れるような酸味と苦味の方こそが彼にとっては。
「うん、甘い」
である。
舐められた少女はと言えば、犬や猫に舐められたくらいの認識なのか、あまり気にしていないようである。
関心事は、もっと別のところだった。
「えっ、えっ? そんなちょっとで味分かるんですか?」
「もちろん」
「わぁ。ウッドロウさんは舌がいいんですね!」
「そうかな? ああ、でももう少し頂いても?」
「いいですよ」
「では、失礼して」
青年は少女の手を取りクリームを掬い取らせた。
突然の青年の行動に驚いた少女は大きな目をさらに大きくし、そんな少女を安心させるかのように微笑むと、その小さな指を口に含んだ。
クリームを味わうふりをして、少女の指を丹念に舐める。戦士らしく固い皮膚だったが、年齢が若いだけあって瑞々しい柔らかさを失ってはいない。
指に付いたクリームを全て舐めきるとそこで終わりにせず、もう一口と少女の指でクリームを掬い取り、再び口に咥える。
次は舐めるだけでなく、ちゅ、と音を立てて少し強めに指全体を吸う。解放される頃には少女の濡れた指はうっすらと朱に染まっていた。
「大丈夫だよ。甘いし、柔らかい」
「そうですか? ちょっと柔らかすぎるかなって思うんですけど」
「硬すぎるよりはいいんじゃないかな」
「うーん、それもそっか」
二人の会話は成り立っているようだが、致命的に主語が間違っている。
青年はそれに気付いていて尚且つそのズレを楽しんでいるようだが、対する少女は全く気付いていない。気付かない方が幸いだろう。
もう一口、とディセの手をボウルに伸ばさせれば、さすがの少女も青年の行動を咎めざるを得なかった。
「もうダメですよ! これ以上味見してたら料理に使う分がなくなっちゃう」
「それは困ってしまうね」
「でしょう?」
「なら、大人しく諦めよう。……おや」
「え?」
「ここにもついてるよ」
嘘をついてすまないと心の中で謝って、青年は少女の唇の端をぺろりと舐め上げた。
2009.03.20
初出