レディアントマイソロジー2 まとめ
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親心なのか、それとも
次の依頼を受ける準備をするべく訪れた船内のショップで、爪先立ちになって精一杯腕を伸ばし、うめき声まで上げている小柄な少女をウッドロウは見つけた。
必死になっている彼女に悪いと分かっていても微笑ましく見えてしまい、ついつい口元が緩んでしまうのは止められなかった。
ドアの開く音で来訪者に気づいたディセは姿勢を戻して青年の方を振り向いた。恥ずかしそうに笑っている。
「何をしているんだい?」
「届かなくて」
少女が見上げる先を目で追えば、彼女の遥か頭上に棚があった。どうやら、そこに載っている箱に用があるらしい。
「かくなる上は、奥義で飛び上がろうかと」
「それは止めておいた方がいいだろうね。多分、船長殿と大佐殿に叱られることになると思うよ」
現在モンクである彼女の奥義は剣を振り回す訳ではないので船体へのダメージはそれほど出ないだろうが、所狭しと積み上げられた商品は間違いなく散乱する。その程度で済めば良いが、もしも荷物に埋もれてしまえばちょっとした救助活動が必要になるかもしれない。
そんな大事を起こせば、この船をこよなく愛する船長は「問題を起こさないでください」と目を吊り上げながらも年不相応な冷静さと態度で。大佐はそんな船長をにこにこと微笑みを絶やさずに宥めつつ鋭い針のようにちくちくと嫌味を交えて、小一時間は船内での奥義使用禁止について説教してくれるだろう。
いかな恐れを知らないディセンダーと言えども、あの二人からのお小言は恐ろしいらしく、縋るような目でディセは長身のウッドロウを見上げた。
「ウッドロウさん、届きませんか?」
「あそこは私でもちょっと足りないな」
「そうですか……」
ウッドロウの返事に少女は肩を落とした。
感情の変化が全て顔に出る彼女は、見ていて飽きない。だが、落ち込んでいる様子はあまり見たいものではなかった。彼女はその両目さながら、太陽の様に笑っているのが一番似合う。
「ああ、そうだ」
青年は倉庫から脚立を持ってこようかと考え、次いでもっと楽な方法を思いつき、きょとんとする少女の側にしゃがんだ。
「失礼するよ」
「わあ!」
すっと少女の膝裏に腕を入れ、細い腰にもう一方の腕を回して立ち上がると、ウッドロウの頭上から歓声が上がった。
青年が笑みをこぼして見上げれば、きらきらと輝く金色の目がこちらを見ていた。興奮のためか頬もうっすらと色づいている。
「これがウッドロウさんの見る世界?」
「そこの位置だと君の方が高いね。いつもと違うかい?」
「全然! 高い! 天井が近い! 床が遠い!」
「そんなに興奮するほどのものかい? 君なら奥義でもっと高い所までいくだろうに」
「戦闘中に景色を楽しんでる余裕なんてないですよー!」
取りたかったはずの箱さえそっちのけで、ディセはきゃあきゃあと声を上げる。腕を振り回しそうな勢いだ。あまつさえ、抱き上げてくれているウッドロウに少し歩いてくれと厚かましくお願いすると、青年は微笑んでそれに応じた。そしてまた、きゃーすごいきゃー! と少女は高い声を上げるのだった。
ひとしきりいつもと違う高さの世界を堪能して、目当ての箱を取って床に降ろされると、ディセは深々とお辞儀をした。興奮の余韻がまだ冷めないのか、はたまた己の言動が子供じみていた事に気がついて恥じているのか、その頬はまだ赤い。
「ありがとうございました」
「なに、気にすることは無い。君の役に立てたのなら、光栄だよ」
本当に心からそう思っている青年は、やはり優しく微笑んでそう言った。
つられるように少女も笑うが、どこか少しぎこちないように見えて、青年は僅かに眉根を寄せた。
「どうかしたのかい?」
「あの、ですね」
「うん?」
「ときどき、今みたいに抱っこしてもらってもいいですか?」
正確な年齢は分からないが、見た目だけなら十六、七と言ったところだろう小柄な少女にそんな事を言われるとは夢にも思ってなかった。
断るべきか否かを逡巡して、先ほど見せた少女の嬉しそうな顔と輝く目を思い出し、己の見る世界と彼女の見る世界が近かったらと考えたら、断るという選択肢は綺麗さっぱり消し飛んだ。
「私でよければ、喜んで」
次は甲板で抱き上げてあげようか。きっと空が近いと喜ぶだろう。
彼女が嫌でなければ町を歩いてもいい。きっと沢山の変化があって、彼女は溢れんばかりの好奇心に目を輝かせることだろう。
やったやった、と嬉しそうに笑う少女を見つめて、青年は微笑んだ。
2009.02.23
初出
次の依頼を受ける準備をするべく訪れた船内のショップで、爪先立ちになって精一杯腕を伸ばし、うめき声まで上げている小柄な少女をウッドロウは見つけた。
必死になっている彼女に悪いと分かっていても微笑ましく見えてしまい、ついつい口元が緩んでしまうのは止められなかった。
ドアの開く音で来訪者に気づいたディセは姿勢を戻して青年の方を振り向いた。恥ずかしそうに笑っている。
「何をしているんだい?」
「届かなくて」
少女が見上げる先を目で追えば、彼女の遥か頭上に棚があった。どうやら、そこに載っている箱に用があるらしい。
「かくなる上は、奥義で飛び上がろうかと」
「それは止めておいた方がいいだろうね。多分、船長殿と大佐殿に叱られることになると思うよ」
現在モンクである彼女の奥義は剣を振り回す訳ではないので船体へのダメージはそれほど出ないだろうが、所狭しと積み上げられた商品は間違いなく散乱する。その程度で済めば良いが、もしも荷物に埋もれてしまえばちょっとした救助活動が必要になるかもしれない。
そんな大事を起こせば、この船をこよなく愛する船長は「問題を起こさないでください」と目を吊り上げながらも年不相応な冷静さと態度で。大佐はそんな船長をにこにこと微笑みを絶やさずに宥めつつ鋭い針のようにちくちくと嫌味を交えて、小一時間は船内での奥義使用禁止について説教してくれるだろう。
いかな恐れを知らないディセンダーと言えども、あの二人からのお小言は恐ろしいらしく、縋るような目でディセは長身のウッドロウを見上げた。
「ウッドロウさん、届きませんか?」
「あそこは私でもちょっと足りないな」
「そうですか……」
ウッドロウの返事に少女は肩を落とした。
感情の変化が全て顔に出る彼女は、見ていて飽きない。だが、落ち込んでいる様子はあまり見たいものではなかった。彼女はその両目さながら、太陽の様に笑っているのが一番似合う。
「ああ、そうだ」
青年は倉庫から脚立を持ってこようかと考え、次いでもっと楽な方法を思いつき、きょとんとする少女の側にしゃがんだ。
「失礼するよ」
「わあ!」
すっと少女の膝裏に腕を入れ、細い腰にもう一方の腕を回して立ち上がると、ウッドロウの頭上から歓声が上がった。
青年が笑みをこぼして見上げれば、きらきらと輝く金色の目がこちらを見ていた。興奮のためか頬もうっすらと色づいている。
「これがウッドロウさんの見る世界?」
「そこの位置だと君の方が高いね。いつもと違うかい?」
「全然! 高い! 天井が近い! 床が遠い!」
「そんなに興奮するほどのものかい? 君なら奥義でもっと高い所までいくだろうに」
「戦闘中に景色を楽しんでる余裕なんてないですよー!」
取りたかったはずの箱さえそっちのけで、ディセはきゃあきゃあと声を上げる。腕を振り回しそうな勢いだ。あまつさえ、抱き上げてくれているウッドロウに少し歩いてくれと厚かましくお願いすると、青年は微笑んでそれに応じた。そしてまた、きゃーすごいきゃー! と少女は高い声を上げるのだった。
ひとしきりいつもと違う高さの世界を堪能して、目当ての箱を取って床に降ろされると、ディセは深々とお辞儀をした。興奮の余韻がまだ冷めないのか、はたまた己の言動が子供じみていた事に気がついて恥じているのか、その頬はまだ赤い。
「ありがとうございました」
「なに、気にすることは無い。君の役に立てたのなら、光栄だよ」
本当に心からそう思っている青年は、やはり優しく微笑んでそう言った。
つられるように少女も笑うが、どこか少しぎこちないように見えて、青年は僅かに眉根を寄せた。
「どうかしたのかい?」
「あの、ですね」
「うん?」
「ときどき、今みたいに抱っこしてもらってもいいですか?」
正確な年齢は分からないが、見た目だけなら十六、七と言ったところだろう小柄な少女にそんな事を言われるとは夢にも思ってなかった。
断るべきか否かを逡巡して、先ほど見せた少女の嬉しそうな顔と輝く目を思い出し、己の見る世界と彼女の見る世界が近かったらと考えたら、断るという選択肢は綺麗さっぱり消し飛んだ。
「私でよければ、喜んで」
次は甲板で抱き上げてあげようか。きっと空が近いと喜ぶだろう。
彼女が嫌でなければ町を歩いてもいい。きっと沢山の変化があって、彼女は溢れんばかりの好奇心に目を輝かせることだろう。
やったやった、と嬉しそうに笑う少女を見つめて、青年は微笑んだ。
2009.02.23
初出