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ソウルクレイドル

世界は貴方を中心に歌う



歌が聞こえる。
優しい心安らぐ歌だが、ギグはその歌を聴くのは初めてだった。
夢の世界を漂っていた意識がほんの少し覚醒する。
薄く目を開くと眠っていた他の感覚も開いた。
暖かい温もり。
柔らかな肌。
ほんのりとする甘い香り。
自分を抱きしめる細い腕。
髪を梳く手は剣の振りすぎで肉刺だらけで硬い。
それでも、ギグはその手が好きだった。
耳には優しい歌声。
声の主は分かっていた。
だからギグは、歌うその人をそっと呼んだ。
髪を梳いていた手がぴたりと止まる。


「……あいぼう?」
「え、ああごめん。起こしちゃった?」
「そのうた……」
「うん。たまには違う歌も歌ってみようかなって。嫌だった?」
「……いやじゃねえ」
「ん、なら良かった……まだ夜明けは遠いよ。もっと眠ってていいよ」
「ああ……なあ、もっとうたえよ」
「……うん。おやすみ、ギグ」


そっと、リベアはギグの髪を梳くのを再開する。
同時にゆっくりと歌を紡ぐ。
高く、低く、柔らかに。
リベアが歌うのはいつもの子守唄ではなく、命を、世界を、出会いを、全てに感謝する歌だ。
平和になったとは言え、まだ苦しみも悲しみもそこここに溢れていても、世界は幸せと喜びに満ちているのだと、信じたくなる歌だ。
暖かな感情に包まれると、そろりと瞼が重くなってくる。
人肌で暖められた布団は気持ちいい。リベアの柔らかな肌はもっと気持ちいい。良い匂いもする。
コイツがいれば、それだけでいいかもしれない。
不意にそう感じて、ギグはふと笑った。
いつからコイツがオレの世界の中心になったんだろうなあと思いながら、ギグは再び眠りに落ちた。
ギグの世界の中心はそれからしばらく歌って、ギグの額に唇を寄せてから同じように眠りについたのだった。



2008.03.23
修正

2007.03.24
初出 ブログにて



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