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ソウルクレイドル まとめ

愛の試練



 人里離れた山奥の露天風呂。
 満天の星空の下、山の動物達に囲まれてギグ(と融合中のリベア)は湯に浸かっていた。
 人目を気にする必要もないので、豊満な胸も滑らかなくびれも、何も隠してはいない。
 空を見上げてぼんやりとしていたギグに、リベアが語りかける。

「あのさあ」
「あん?」
「ちょっと思い出したんだけど、昔レナ様によく童話を読んでもらって寝てたんだあ」
「唐突だな……で?」
「その中にね、呪いを解くような話があったんだよね」
「……いや待て言うな言わなくていいあんまりイイ予感がしねぇ」
「それがね、どちらかにかけられた」
「だーっ言うなって」
「呪いをお姫様とおう」
「言ってんだろーが」
「じ様がキ」
「聞けコラ相棒!」
「スをすると解けるってヤツ」
「………………」
「………………」
「してみよっか?」
「全力で断る! つーか相棒の体がねーだろ」
「あったらしていいの?」
「んなこた言ってねぇ! 断るっつってんだろ!」
「残念」
「…………してぇのかよ」
「好きな人とそういうことしたいと思うのは当然では?」
「……もっと慎みってもんを覚えろ」
「あはは、好きな人へのアプローチでそんなもん邪魔なだけだよ。でもギグがそういうのがイイっていうならそうなるようにがんばってみるよ。できるかどうかは分かんないけど」
「あー、相棒にゃ無理だな」
「ひっどいなーねえギグ」
「あんだよ」
「体が元に戻ったらしようね」
「だーかーらー!」
「いや?」

 体があれば、絶対にかわいらしく小首をかしげて上目遣いで尋ねてくるだろう。
 そして断れば大きな目に涙を浮かべて「どうしても?」なんて追い討ちをかけてくるのは分かりきっていて、そんなことになればたった三文字の拒否の言葉なんて言えなくなる。
 そう。
 実体がない今なら断ることなんて容易いのだ。
 だが。

「…………」
「沈黙は肯定だよ?」
「……も、好きにしてくれ……」
「うんっ! 好きにするー」

 えへへ、と笑うリベアに、ギグはがっくりと項垂れた。
 断れない自分に情けなくなってくる。
 そういう行為をしたくないとは言わないし、むしろ率先してしたいくらいなのだが、こうもリベアに先手を取られては立つ瀬がない。
 死神だ破壊神だと恐れられている者がこれで良いのか。
 いや、神として云々よりも、一人の男として良いのだろうか。
 寝ても食っても風呂につかっても取れない疲れの原因はこいつなんじゃねーか、と今更ながらにギグは思うのだった。






2008.03.23
修正

2007.03.23
初出 ブログにて



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