黄金主とだれか。
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君をみている
「……おい」
「え? きゃあ!?」
レムオンに呼ばれて振り向こうとしたら体がふわりと浮き、突然の事にレティシアの思考回路は停止した。
他の連れも同様に驚きすぎて、一時的に一切の行動も発言もできなかった。
当事者であるレムオンだけが、レティシアを抱きかかえたままスタスタと歩いていく。
その後姿を呆然と見送ってから、ようやくチャカとルルアンタは我に返った。
「おっ、おい姉ちゃんに何してんだよ!」
「あー! レティシアばっかりだっこずるい~。ルルも、ルルも~」
「離せよ! 聞いてんのか!」
「ね~チャカ~。ルルもだっこして~」
「わああくっつくな!」
じゃれあっているチャカとルルアンタを一瞥して呆れたようにため息をつくレムオンは、人一人を抱きかかえているとは思えない速度で歩みを進めていく。
やっぱり綺麗な顔してるなぁ兄上、と思ったところでようやくレティシアは自分のおかれている状況を理解し、ボンッと音を立てる勢いで顔を真っ赤にした。
彼の腕から逃れようとじたばたと暴れるが、細身だというのにレムオンはびくともしない。
「やっ嫌です兄上! 降ろしてください!」
「黙れ。動くな」
氷の、と称される鋭い目で睨まれ、彼女は抵抗を止めた。
怒っている。間違いなく、怒っている。それも確実に自分が原因だ。
恐る恐る、レティシアは口を開いた。
「……何を怒っているんですか、兄上」
「足を痛めたのはいつだ」
「え?」
「あの二人は騙せたようだが、左足をかばっていたな」
「……痛めたってほどじゃありません。確認しましたけど、そんなに腫れていなかったし」
「と言うことは、少しは腫れているということだな」
「あ」
特大のため息をつかれて、己の失言に気がついた。隠してきた意味がまるでない。
「まったく……町まであと少しだからと、言わないでいたな」
「……なんでもお見通しですか」
「当たり前だ。どれだけお前を見ていると思っている」
さも当然であるかのようにとんでもない事をさらりと言われて、レティシアは再び顔が熱くなるのが分かった。
彼の場合、その意味をちゃんと理解して言っているのか分かったものではない。
言葉の孕む意味とその破壊力を知った上で言っているのなら、もう手に負えない。
せめてもの抵抗として、恨めしそうな半眼で見上げながらその点を突いてやった。
「兄上、それ口説き文句です」
「……口説いているのだから、構うまい」
「え?」
「なんでもない。ああ、天気が崩れて来そうだな。走るぞ。つかまっていろ」
「走るって、やだ、私重いんだから降ろしてください!」
「俺がダルケニスだということを忘れたのか? お前を抱えたまま走るなど、造作もない」
「そ、そういう事じゃなくて!!」
レティシアの抗議は完璧に黙殺されて、雲の出てきた空へとこだました。
2008.05.26
修正
2006.xx.xx
初出
「……おい」
「え? きゃあ!?」
レムオンに呼ばれて振り向こうとしたら体がふわりと浮き、突然の事にレティシアの思考回路は停止した。
他の連れも同様に驚きすぎて、一時的に一切の行動も発言もできなかった。
当事者であるレムオンだけが、レティシアを抱きかかえたままスタスタと歩いていく。
その後姿を呆然と見送ってから、ようやくチャカとルルアンタは我に返った。
「おっ、おい姉ちゃんに何してんだよ!」
「あー! レティシアばっかりだっこずるい~。ルルも、ルルも~」
「離せよ! 聞いてんのか!」
「ね~チャカ~。ルルもだっこして~」
「わああくっつくな!」
じゃれあっているチャカとルルアンタを一瞥して呆れたようにため息をつくレムオンは、人一人を抱きかかえているとは思えない速度で歩みを進めていく。
やっぱり綺麗な顔してるなぁ兄上、と思ったところでようやくレティシアは自分のおかれている状況を理解し、ボンッと音を立てる勢いで顔を真っ赤にした。
彼の腕から逃れようとじたばたと暴れるが、細身だというのにレムオンはびくともしない。
「やっ嫌です兄上! 降ろしてください!」
「黙れ。動くな」
氷の、と称される鋭い目で睨まれ、彼女は抵抗を止めた。
怒っている。間違いなく、怒っている。それも確実に自分が原因だ。
恐る恐る、レティシアは口を開いた。
「……何を怒っているんですか、兄上」
「足を痛めたのはいつだ」
「え?」
「あの二人は騙せたようだが、左足をかばっていたな」
「……痛めたってほどじゃありません。確認しましたけど、そんなに腫れていなかったし」
「と言うことは、少しは腫れているということだな」
「あ」
特大のため息をつかれて、己の失言に気がついた。隠してきた意味がまるでない。
「まったく……町まであと少しだからと、言わないでいたな」
「……なんでもお見通しですか」
「当たり前だ。どれだけお前を見ていると思っている」
さも当然であるかのようにとんでもない事をさらりと言われて、レティシアは再び顔が熱くなるのが分かった。
彼の場合、その意味をちゃんと理解して言っているのか分かったものではない。
言葉の孕む意味とその破壊力を知った上で言っているのなら、もう手に負えない。
せめてもの抵抗として、恨めしそうな半眼で見上げながらその点を突いてやった。
「兄上、それ口説き文句です」
「……口説いているのだから、構うまい」
「え?」
「なんでもない。ああ、天気が崩れて来そうだな。走るぞ。つかまっていろ」
「走るって、やだ、私重いんだから降ろしてください!」
「俺がダルケニスだということを忘れたのか? お前を抱えたまま走るなど、造作もない」
「そ、そういう事じゃなくて!!」
レティシアの抗議は完璧に黙殺されて、雲の出てきた空へとこだました。
2008.05.26
修正
2006.xx.xx
初出