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04 お祭り騒ぎ、大騒ぎ
共和制となったロストールだが、いまだ移行は完全ではない。
ディンガル帝国との交渉事は筆頭主席であるティアナとその片腕であるレムオンが、リベルダムを始めとする近隣都市とのさまざまな調整事はアトレイアが指揮を執っているのが現状である。
それでも大きな問題もあらかた片付き、後を任せられる人材が育ってきたことも相まって、数年前と比べればこうして休憩の時間をゆっくりと取れるくらいには三人の負担は軽くなった。
そんな三人の茶会の席へ、一人の女が通される。
「やあ。みんなおそろいだね」
「エステル様」
「ごきげんよう」
「何用だ。クリュセイスの使いか?」
「今日は個人的な用事。良い報せを持ってきたよ。お茶会におよばれしても?」
「もちろん、どうぞ。今椅子を運ばせますわ」
「ありがと。それにしてもんー、いい匂い! このクッキーはどっちが?」
「今回は二人で作りました」
ひょい、と一つをつまんで口の中に放り込む。
レムオンが食べることを考えたのか甘さは控え目だったが砕かれた木の実が香ばしい。さくさくとした食感もなかなかだ。
「うんうん、どんどん上手になってくねー。ボク、ここに来るの楽しみなんだよ」
「まあ、ありがとうございます。宜しければ、後でいくつかお包みしますわ」
「ほんと!? ぜひお願い!」
「それで。報せとはなんだ」
「ふぁあ、ふぁえっふぇふぃはんふぁふぉ」
「口の中身をなくしてから喋れ」
たしなめられて、紅茶で口の中身を押し流す。
行儀の悪い、とレムオンが眉を顰めたが、エステルは全く気にしない。
にんまりと悪巧みをしていますと言わんばかりの笑顔を浮かべる。
「あのね、帰ってきたんだよ」
たっぷり十秒、三人は言葉を失った。
誰が、とは聞けなかった。聞く必要がなかったのだ。この三人にとって「帰ってきた」と言われれば思いつくのはたった一人しかない。
ただそれが、あまりにも突然のことで理解しきれなかったのだ。
そして十秒という短い時間で三人は理解し、すぐさま次の行動に移った。
「レムオン様!」
「分かっている! セバスチャン!」
「はい、ここに」
「今すぐに全兵に伝令! レティシアを探し出し、身柄を拘束しろ! 全ての任務を放棄しても構わん。最優先だ!」
「冒険者ギルドにもレティシア様を捕縛し、ロストール王城まで連れてくるように通達を。懸賞金は百万ギル」
「ヴァイライラ、ヴィアリアリ。あなた方もお行きなさい!」
運ばれてきた椅子に腰を掛けてぱくぱくとクッキーを口に運ぶエステルは、人事のように呟いた。
「やー、すごいねぇ」
「ところで、彼女捕まえたらどうするつもり?」
「殴ります」
「殴ります」
「殴る」
2009.12.06
初出
共和制となったロストールだが、いまだ移行は完全ではない。
ディンガル帝国との交渉事は筆頭主席であるティアナとその片腕であるレムオンが、リベルダムを始めとする近隣都市とのさまざまな調整事はアトレイアが指揮を執っているのが現状である。
それでも大きな問題もあらかた片付き、後を任せられる人材が育ってきたことも相まって、数年前と比べればこうして休憩の時間をゆっくりと取れるくらいには三人の負担は軽くなった。
そんな三人の茶会の席へ、一人の女が通される。
「やあ。みんなおそろいだね」
「エステル様」
「ごきげんよう」
「何用だ。クリュセイスの使いか?」
「今日は個人的な用事。良い報せを持ってきたよ。お茶会におよばれしても?」
「もちろん、どうぞ。今椅子を運ばせますわ」
「ありがと。それにしてもんー、いい匂い! このクッキーはどっちが?」
「今回は二人で作りました」
ひょい、と一つをつまんで口の中に放り込む。
レムオンが食べることを考えたのか甘さは控え目だったが砕かれた木の実が香ばしい。さくさくとした食感もなかなかだ。
「うんうん、どんどん上手になってくねー。ボク、ここに来るの楽しみなんだよ」
「まあ、ありがとうございます。宜しければ、後でいくつかお包みしますわ」
「ほんと!? ぜひお願い!」
「それで。報せとはなんだ」
「ふぁあ、ふぁえっふぇふぃはんふぁふぉ」
「口の中身をなくしてから喋れ」
たしなめられて、紅茶で口の中身を押し流す。
行儀の悪い、とレムオンが眉を顰めたが、エステルは全く気にしない。
にんまりと悪巧みをしていますと言わんばかりの笑顔を浮かべる。
「あのね、帰ってきたんだよ」
たっぷり十秒、三人は言葉を失った。
誰が、とは聞けなかった。聞く必要がなかったのだ。この三人にとって「帰ってきた」と言われれば思いつくのはたった一人しかない。
ただそれが、あまりにも突然のことで理解しきれなかったのだ。
そして十秒という短い時間で三人は理解し、すぐさま次の行動に移った。
「レムオン様!」
「分かっている! セバスチャン!」
「はい、ここに」
「今すぐに全兵に伝令! レティシアを探し出し、身柄を拘束しろ! 全ての任務を放棄しても構わん。最優先だ!」
「冒険者ギルドにもレティシア様を捕縛し、ロストール王城まで連れてくるように通達を。懸賞金は百万ギル」
「ヴァイライラ、ヴィアリアリ。あなた方もお行きなさい!」
運ばれてきた椅子に腰を掛けてぱくぱくとクッキーを口に運ぶエステルは、人事のように呟いた。
「やー、すごいねぇ」
「ところで、彼女捕まえたらどうするつもり?」
「殴ります」
「殴ります」
「殴る」
2009.12.06
初出