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02 修復不能な関係と成り得るのか
「まったく。いきなり流血沙汰なんて起こしてほしくないんですけどねぇ」
美女と見紛う美貌の持ち主にして猫屋敷の主である彼はわざとらしいため息をつきながらそう言った。
棘の含まれる言い方だったが、腹はまったく立たなかった。流血騒ぎを起こしたのは自分が悪かったのだし、何よりも彼の変わらない物の言い方がとても懐かしくて嬉しくて、血を垂らす鼻の穴にちり紙を詰めながら笑ってしまった。
足元には殴られた私を見てけたけたと大よそ猫らしくない声を上げて笑うネモがいる。こちらも変わりないらしい。
「彼女はどうしました?」
「肩を怒らせて転送装置の向こうに消えていきました。みんなに私が帰ってきたことを教えるんだー! って」
「おやおや。それでは今頃、ちょっとした騒ぎになっているでしょうね」
「そう……かもしれません」
「一つ教えて差し上げますが、貴女が姿を消したあの日、烈火のごとく怒っていたのはエステルだけではありませんよ」
殴られる覚悟で皆に会いに行け、と言う事らしい。
オルファウス以外の誰にも告げずに大陸を去った私を、果たして許してくれるだろうか。それを考えると、怖い。たぶん竜王と戦ったあのときよりも、ずっと。
思わず身震いして、手を強く握り締めた。
「ふふっ。そんなにビクビクすることもないでしょう」
「……なんでそう思うんですか」
「みんなが怒るのは、貴女を想っているからですよ。心配しなくても、きっと大丈夫です」
「ダメだったらどうしてくれるんですか」
「そうですねぇ……ところで」
のんびりとお茶をすすっていたオルファウスの目が呆れたように細められた。
「さっきから貴方は何をしているんですか、ネモ」
嬉しそうに声を上げて笑っていたネモは、卓の下で私が揺らすちり紙に猫の本能を刺激されて追いかけるのに夢中だった。
「ってなにすんだテメェ!」
「皆から嫌われたら戻ってきなさい。私はいつでも、貴女を迎えますよ」
「俺の話を聞け!」
2009.11.03
初出
「まったく。いきなり流血沙汰なんて起こしてほしくないんですけどねぇ」
美女と見紛う美貌の持ち主にして猫屋敷の主である彼はわざとらしいため息をつきながらそう言った。
棘の含まれる言い方だったが、腹はまったく立たなかった。流血騒ぎを起こしたのは自分が悪かったのだし、何よりも彼の変わらない物の言い方がとても懐かしくて嬉しくて、血を垂らす鼻の穴にちり紙を詰めながら笑ってしまった。
足元には殴られた私を見てけたけたと大よそ猫らしくない声を上げて笑うネモがいる。こちらも変わりないらしい。
「彼女はどうしました?」
「肩を怒らせて転送装置の向こうに消えていきました。みんなに私が帰ってきたことを教えるんだー! って」
「おやおや。それでは今頃、ちょっとした騒ぎになっているでしょうね」
「そう……かもしれません」
「一つ教えて差し上げますが、貴女が姿を消したあの日、烈火のごとく怒っていたのはエステルだけではありませんよ」
殴られる覚悟で皆に会いに行け、と言う事らしい。
オルファウス以外の誰にも告げずに大陸を去った私を、果たして許してくれるだろうか。それを考えると、怖い。たぶん竜王と戦ったあのときよりも、ずっと。
思わず身震いして、手を強く握り締めた。
「ふふっ。そんなにビクビクすることもないでしょう」
「……なんでそう思うんですか」
「みんなが怒るのは、貴女を想っているからですよ。心配しなくても、きっと大丈夫です」
「ダメだったらどうしてくれるんですか」
「そうですねぇ……ところで」
のんびりとお茶をすすっていたオルファウスの目が呆れたように細められた。
「さっきから貴方は何をしているんですか、ネモ」
嬉しそうに声を上げて笑っていたネモは、卓の下で私が揺らすちり紙に猫の本能を刺激されて追いかけるのに夢中だった。
「ってなにすんだテメェ!」
「皆から嫌われたら戻ってきなさい。私はいつでも、貴女を迎えますよ」
「俺の話を聞け!」
2009.11.03
初出