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01 十分すぎるほどの愛を乗せて
にこやかに笑う彼女が、そこに座っていた。
驚きすぎて頭の中が真っ白になった。
だって、彼女は十年前に何も告げずに姿を消したから。まさか今日、こんなところ で再会するなんて、誰が予想できるって言うんだ。
たくさんの月日が流れたにも関わらず、その姿は何一つ変わっていない。最後に見たあの姿のままだ。すべてはウルグをその身に宿したことが原因だった、と記憶している。
十年も経って、ボクは変わった。
身長はあまりかわっていないけど、体つきはだいぶ女性らしくなった、と思う。服装は今でも砂漠の民の服を着ているけれど、あの頃とは違う色合いの服だ。髪の毛は少しは伸びたし、顔には認めたくないけれど細かなしわが刻まれるようになった。
彼女は、ボクだと分かるだろうか。それ以前に、ボクを覚えていてくれているだろうか。
どくんと心臓が跳ねる。
ボクは、彼女を覚えている。強烈で鮮烈な彼女との思い出は、そう簡単に消えるものじゃない。
でも、彼女は?
彼女にとって、ボクは多くの仲間のうちの一人でしかなかったら、忘れられていてもおかしくない。
答えを聞くのが、怖かった。
「エステル」
考える素振りも、躊躇う様子も見せずに、彼女はボクの名前を唇に乗せた。
覚えていてくれた。目頭が熱くなる。いろんな感情がごちゃまぜになって、泣きそうだった。
そんなボクに、彼女は椅子から立ち上がって近づいてくる。
手を伸ばせば届く距離で彼女は足を止めボクの顔を見つめて、戸惑いながら笑った。
「ちょっと老けた?」
とりあえず、ボクは彼女の顔に拳を叩き込んだ。
それは何も言わずに消えた十年前の怒りと泣き出しそうになるのをごまかすためであって、年齢のことを言われたからでは決してない。
「おかえり、レティシア」
2009.11.03
修正
2009.10.03
初出 ブログにて
にこやかに笑う彼女が、そこに座っていた。
驚きすぎて頭の中が真っ白になった。
だって、彼女は十年前に何も告げずに姿を消したから。まさか今日、
たくさんの月日が流れたにも関わらず、その姿は何一つ変わっていない。最後に見たあの姿のままだ。すべてはウルグをその身に宿したことが原因だった、と記憶している。
十年も経って、ボクは変わった。
身長はあまりかわっていないけど、体つきはだいぶ女性らしくなった、と思う。服装は今でも砂漠の民の服を着ているけれど、あの頃とは違う色合いの服だ。髪の毛は少しは伸びたし、顔には認めたくないけれど細かなしわが刻まれるようになった。
彼女は、ボクだと分かるだろうか。それ以前に、ボクを覚えていてくれているだろうか。
どくんと心臓が跳ねる。
ボクは、彼女を覚えている。強烈で鮮烈な彼女との思い出は、そう簡単に消えるものじゃない。
でも、彼女は?
彼女にとって、ボクは多くの仲間のうちの一人でしかなかったら、忘れられていてもおかしくない。
答えを聞くのが、怖かった。
「エステル」
考える素振りも、躊躇う様子も見せずに、彼女はボクの名前を唇に乗せた。
覚えていてくれた。目頭が熱くなる。いろんな感情がごちゃまぜになって、泣きそうだった。
そんなボクに、彼女は椅子から立ち上がって近づいてくる。
手を伸ばせば届く距離で彼女は足を止めボクの顔を見つめて、戸惑いながら笑った。
「ちょっと老けた?」
とりあえず、ボクは彼女の顔に拳を叩き込んだ。
それは何も言わずに消えた十年前の怒りと泣き出しそうになるのをごまかすためであって、年齢のことを言われたからでは決してない。
「おかえり、レティシア」
2009.11.03
修正
2009.10.03
初出 ブログにて