女主とだれか。
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闇の勢力による世界の滅亡は、数人の勇者らによって食い止められた。
長い間続いていたロストールとディンガルの戦争も今回の闇の進行を機に、まだ完全な形ではないが終止符が打たれることとなった。
疲弊しきった世界は、これから争いのない平和な世界を目指して再生を始める。
だがしかし、そこにこの大陸を救った英雄達の居場所はなかった。
人で在りながら人に在らざる強大な力を持ったが故に、新たな脅威として人の世から拒絶されたのだ。
彼らは怒るでもなく、絶望するでもなく、それを静かに受け入れた。己が人の輪の中に入れないと言うことを、争いの種になる可能性があることを、知っていたからだ。
そうして英雄の一人である獅子帝は、一人のダークエルフを供にして早々に歴史の表舞台から退場した。
ごく一部の信頼できる人間にしか打ち明けず、彼はこの大陸から消え去った。それは風が花弁をさらって行くような、とても鮮やかな去り方だった。
きっと彼はずっと前から全てが終わった後のことを考えて準備していたのだろう、と取り残された英雄の一人は夜空を見上げながら思った。
「これからどうしようねぇ」
傍から見れば独り言でしかないそれに、応えるものがあった。
もっとも、それは彼女にしか聞こえない声なのだから、やはり見る者がいれば独り言と取っただろう。
― 国の傀儡と成り果てるか。
「人形なんて真っ平。それにたぶん、ティアナが猛反対するよ、それ」
― ならば、野に下るか。
「それも平和で素敵だけどねぇ。冒険の魅力を知ってしまったら、もう一つ所に留まれないよ」
― ならば、再び世界を放浪するか。
「……結局、私にはそれしかない、か。ねえ、この大陸の外って、どうなってるのかな」
― 分からぬ。
「ウルグにも分からないことがあるの?」
― 我が識るは、世界の成り立ちと、時の彼方に埋もれしこの大地の歴史のみ。
「……行ってみようか。ネメアみたいに、別の大陸に」
― 決めるは、うぬだ。
「ウルグは? どうしたい?」
― 何故、我に意見を求める。
「同居人の意見も聞いておこうと思って」
― 我が望みは、世界の破滅。
「そういうことじゃなくて……まあ、いっか。いつかその望みを変えてみせるわ」
― 笑止。
「だって、世界は、まだ私もウルグも知らないことが沢山なのよ。酷いことも汚いことも沢山だけど、それでも世界は優しくて綺麗だわ。ねえ、壊すなんて、もったいないじゃない」
― 綺麗事を……だが。
「ウルグ?」
― 昔に、遥か昔に、同じ事を言った人間がいた。
「……星、綺麗ね」
それが女の目を通して見る空は、今にも落ちてきそうなほどに幾億もの星が瞬いていた。
2008.09.27
修正
2008.xx.xx
初出 ブログにて
闇の勢力による世界の滅亡は、数人の勇者らによって食い止められた。
長い間続いていたロストールとディンガルの戦争も今回の闇の進行を機に、まだ完全な形ではないが終止符が打たれることとなった。
疲弊しきった世界は、これから争いのない平和な世界を目指して再生を始める。
だがしかし、そこにこの大陸を救った英雄達の居場所はなかった。
人で在りながら人に在らざる強大な力を持ったが故に、新たな脅威として人の世から拒絶されたのだ。
彼らは怒るでもなく、絶望するでもなく、それを静かに受け入れた。己が人の輪の中に入れないと言うことを、争いの種になる可能性があることを、知っていたからだ。
そうして英雄の一人である獅子帝は、一人のダークエルフを供にして早々に歴史の表舞台から退場した。
ごく一部の信頼できる人間にしか打ち明けず、彼はこの大陸から消え去った。それは風が花弁をさらって行くような、とても鮮やかな去り方だった。
きっと彼はずっと前から全てが終わった後のことを考えて準備していたのだろう、と取り残された英雄の一人は夜空を見上げながら思った。
「これからどうしようねぇ」
傍から見れば独り言でしかないそれに、応えるものがあった。
もっとも、それは彼女にしか聞こえない声なのだから、やはり見る者がいれば独り言と取っただろう。
― 国の傀儡と成り果てるか。
「人形なんて真っ平。それにたぶん、ティアナが猛反対するよ、それ」
― ならば、野に下るか。
「それも平和で素敵だけどねぇ。冒険の魅力を知ってしまったら、もう一つ所に留まれないよ」
― ならば、再び世界を放浪するか。
「……結局、私にはそれしかない、か。ねえ、この大陸の外って、どうなってるのかな」
― 分からぬ。
「ウルグにも分からないことがあるの?」
― 我が識るは、世界の成り立ちと、時の彼方に埋もれしこの大地の歴史のみ。
「……行ってみようか。ネメアみたいに、別の大陸に」
― 決めるは、うぬだ。
「ウルグは? どうしたい?」
― 何故、我に意見を求める。
「同居人の意見も聞いておこうと思って」
― 我が望みは、世界の破滅。
「そういうことじゃなくて……まあ、いっか。いつかその望みを変えてみせるわ」
― 笑止。
「だって、世界は、まだ私もウルグも知らないことが沢山なのよ。酷いことも汚いことも沢山だけど、それでも世界は優しくて綺麗だわ。ねえ、壊すなんて、もったいないじゃない」
― 綺麗事を……だが。
「ウルグ?」
― 昔に、遥か昔に、同じ事を言った人間がいた。
「……星、綺麗ね」
それが女の目を通して見る空は、今にも落ちてきそうなほどに幾億もの星が瞬いていた。
2008.09.27
修正
2008.xx.xx
初出 ブログにて
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