黄金主とだれか。
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逢いに行くよ おまけ
真夜中の来訪者は、バルコニーからやって来た。
巨躯であることが災いして、屋敷の主にはすぐさま見つかってしまったが。
もとより男にとっては忍び込む事が目的だったわけではないので、渋い顔をする幼馴染にへらりと笑ってみせた。
それを見て、呆れたようにため息をついた。
「その無駄にでかい図体では、密偵は無理だな」
「お前さんに言われなくたって分かってるさ」
手土産に持ってきた葡萄酒をレムオンに渡し、ゼネテスは部屋の中にずかずかと上がりこむ。
深いため息をついて、レムオンもその後に続いた。
男二人にかかれば、ワインの一本などあっと言う間に空いてしまう。
仕方なくワインセラーから数本持ち出してきたが、それも取り留めなく話しているうちに三本空けてしまった。
四本目を開けた頃には、だいぶ酔いが回っていた。
「今年もレティシアは帰ってこないのか?」
「そのようだ。こちらとしては何事も起こらないでくれるのだからありがたい」
「へえ?」
「……なんだ、その気持ち悪い笑みは」
「口ではそんなこと言って、意外と寂しいんじゃないのかと思ってな」
「有り得ん」
きっぱりと言われて、そこで会話は途切れた。
素直じゃないな、とゼネテスは肩をすくめた。
これだから誰かが世話を焼いてやらなければならないのだ。
決して面白そうだから首を突っ込むわけではない。
「贈ってみたらどうだ」
「何の話だ」
「レティシアによ。チョコを贈ってみたらどうだ?」
「何故そうなる」
「振り回されてんだろ? たまにはこっちから行動すりゃ、あっちも驚くんじゃねえか?」
「それは……確かに……」
「な?」
レムオンは何か言おうとして口を開きかけ、すぐに閉じた。
己の顎に手をかけ、何事かを考える。
その様子を、ゼネテスは不思議そうに見た。
「どうした?」
「……昔を思い出すな」
「あん?」
「お前の発案する悪巧みの片棒を担がされ、オレとティアナはいい迷惑だった」
「おいおい。提案するのは確かにオレだったが、作戦を考えるのはお前の役割だっただろうが」
「そうだったか?」
「そうだ。オレだけを悪者に仕立てるな」
二人は楽しそうにくつくつと笑った。
こうして二人で笑い合うのは、もう戻れない幼い頃以来だ。
「ふむ、そうだな。こちらから仕掛けるのも、悪くない」
「乗り気じゃねえか」
「ああ。だが、あまり準備の時間がないのが悔やまれる」
「悪巧みしてる時のお前って、なんでそんなに生き生きとしてんだよ」
「気のせいだろう」
「そうか?」
「そうだ」
それから二人は、計画を練った。
笑い合う顔は、もう戻れないあの頃と同じだということに、二人は気づかない。
2008.03.23
修正
2008.02.14
初出 ブログにて
真夜中の来訪者は、バルコニーからやって来た。
巨躯であることが災いして、屋敷の主にはすぐさま見つかってしまったが。
もとより男にとっては忍び込む事が目的だったわけではないので、渋い顔をする幼馴染にへらりと笑ってみせた。
それを見て、呆れたようにため息をついた。
「その無駄にでかい図体では、密偵は無理だな」
「お前さんに言われなくたって分かってるさ」
手土産に持ってきた葡萄酒をレムオンに渡し、ゼネテスは部屋の中にずかずかと上がりこむ。
深いため息をついて、レムオンもその後に続いた。
男二人にかかれば、ワインの一本などあっと言う間に空いてしまう。
仕方なくワインセラーから数本持ち出してきたが、それも取り留めなく話しているうちに三本空けてしまった。
四本目を開けた頃には、だいぶ酔いが回っていた。
「今年もレティシアは帰ってこないのか?」
「そのようだ。こちらとしては何事も起こらないでくれるのだからありがたい」
「へえ?」
「……なんだ、その気持ち悪い笑みは」
「口ではそんなこと言って、意外と寂しいんじゃないのかと思ってな」
「有り得ん」
きっぱりと言われて、そこで会話は途切れた。
素直じゃないな、とゼネテスは肩をすくめた。
これだから誰かが世話を焼いてやらなければならないのだ。
決して面白そうだから首を突っ込むわけではない。
「贈ってみたらどうだ」
「何の話だ」
「レティシアによ。チョコを贈ってみたらどうだ?」
「何故そうなる」
「振り回されてんだろ? たまにはこっちから行動すりゃ、あっちも驚くんじゃねえか?」
「それは……確かに……」
「な?」
レムオンは何か言おうとして口を開きかけ、すぐに閉じた。
己の顎に手をかけ、何事かを考える。
その様子を、ゼネテスは不思議そうに見た。
「どうした?」
「……昔を思い出すな」
「あん?」
「お前の発案する悪巧みの片棒を担がされ、オレとティアナはいい迷惑だった」
「おいおい。提案するのは確かにオレだったが、作戦を考えるのはお前の役割だっただろうが」
「そうだったか?」
「そうだ。オレだけを悪者に仕立てるな」
二人は楽しそうにくつくつと笑った。
こうして二人で笑い合うのは、もう戻れない幼い頃以来だ。
「ふむ、そうだな。こちらから仕掛けるのも、悪くない」
「乗り気じゃねえか」
「ああ。だが、あまり準備の時間がないのが悔やまれる」
「悪巧みしてる時のお前って、なんでそんなに生き生きとしてんだよ」
「気のせいだろう」
「そうか?」
「そうだ」
それから二人は、計画を練った。
笑い合う顔は、もう戻れないあの頃と同じだということに、二人は気づかない。
2008.03.23
修正
2008.02.14
初出 ブログにて